第47話『呪いの勇者は、神域を防衛したい』
「鍛冶屋のおっさんでもいいですか?」
「どんな方なのでしょうか? 私、気になります!」
頼むから気にならないでくれ。苦し紛れで言っただけなんだ。出会わせでもしてしまったら、女神が怒り狂って、この世界を滅ぼしてしまいそうだからな。
候補などいる筈も無く、考え混んで時間だけが経ってしまう頃、俺の屋敷に面倒な来客が姿を現した。一からまた説明し直さないといけないし、正直、このタイミングでは来て欲しくなかったけど、勝手に応接間に入ってくるのだから、止めようがなかった。
「カケルさん、また聖堂教会に動きが……? 誰ですかこの女! 愛人を連れ込んでるんですか!?」
「そんな訳あるかー! アクアの頭は、お花畑で出来てるのかー! コイツは、正真正銘の女神様だ!」
「アクアさん、違います。カケルさんの方が、さっきまでお花畑になっていました! 顔もニチャニチャして気持ち悪かったです!」
「マリエルは、黙ってろ! 話しがややこしくなるだろうが!」
「ーー、女神様……。ですって!? まさかとは思いますが盾の女神アテネじゃないでしょうね?」
あー、終わったわー。みたいな顔やめてくれないでしょうか。そうなんです。いつものやつなんですよ、分かってくれ。
アクアまでやって来て、もう屋敷と俺の頭はぐちゃぐちゃなんだ。誰か助けて欲しいぐらいだが、泣き声を言っていられないのも事実でして、事の経緯をまた一から説明し直していた。
「事情は分かりました。私の話しをしてもいいですか? 大事な話しがあるんです」
「聞きたくないんだけど、帰って来んない? もう僕を巻き込まないでくれ!」
「巻き込まれた後に言ったって、もう遅いですから。覚悟してくださいね。単刀直入に話すと、聖堂教会が盾の女神の暗殺を企てています」
「ーー暗殺だと!?」
聞くんじゃなかった。もう無視出来ないじゃん。アクアが、わざと俺に仕向けているとしか思えん! だけど、暗殺の対象になる理由がイマイチ分からない。
聖堂教会側は、何を考えているんだろうな。教会側に殺すメリットでもあるのか不思議でならないが、アクアが深刻そうに俺やアテネに語り始める。
「殺すって言うのは少し言い過ぎでしたが、聖堂教会の目的は、天界にある盾の女神の聖域の破壊です。聖域そのものが無くなってしまうと、その瞬間に神様は死んでしまいますからね」
「なんだと!? 他にも神を殺す方法があったって言うのか!」
「違うんですよ。普通は、破壊なんか出来ません。神が聖域に居るだけで、最強の要塞になりますから。誰も手出しなんか出来ないんですよ。ですが、今回は特殊です。教会側は、女神の死期が近いことを知っていて、邪魔になったのでしょうね。聖域を破壊して、新たに自分達がすり替わり、神になるつもりです」
「まぁ、話してくれてありがとう。そんな、くだらねぇ計画なんざ、俺がブチ壊してやるよ」
この後に及んで、また聖堂教会が絡んでくるなんてな。ベズルの一件以来、音沙汰無かったようでしっかりと悪巧みしてやがったんだな。
また、事を構えることになりそうだな。さっき、女神様と約束したばかりだってのによ。やる事が増えてしまって気が滅入るよ。
それでも、依頼は依頼だ。俺は、盾の女神アテネに恋をさせる為、聖堂教会から聖域を護り、無事に天寿を全うさせてやる。それが、俺たちに出来る、唯一の事だろうからな。
彼女の気持ちを踏み躙った聖堂教会を、俺は絶対に許さない。
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