第17話『呪いの勇者、約束を果たす』
崩れゆくクリスタルのダンジョンからなんとか脱出用の転送魔法陣に乗ることに成功し、俺たちは無事にエルムーアまで帰還することが出来ました。
強敵過ぎだろ魔王軍幹部はよ。イフリートなんか、目じゃ無い程の強さであった。咄嗟の閃きが無ければ、今頃死んでいただろう。
もっと、俺達も強くならないといけないなと、危機感を覚えると同時に智治らの弱さには絶句する。アイツら曲がりなりにも勇者だろ? 何で魔王軍幹部程度で歯が立たないレベルなんだよ。健闘くらいしてもいいだろうに。
イライラは募るけど、俺達は首狩りの王の首を土産にギルドへ生首を提出に向かった。街を歩く道中で不気味がる人と、英雄を称え絶賛する人が入り混じり、恥ずかしくなりそうだ。お願いだからこれ以上見ないでください。
騒ぐ元気も無い俺らは、さっさとギルドに向かう為に歩みを進めることにした。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「本当に……やってくれたのですね」
「当たり前だろ。約束したからな」
「本当に、ありがとうございました。少しは、父さんもお母さんも報われると思います」
深々と正座をして頭を下げるアクアに、下手な同情など必要か無いであろう。彼女の心が少しでも晴れるので有ればそれでいい。
謝礼を受け取り、立ち去ろうとするとアクアは俺を呼び止めて来た。まだ話しがあったのだろうか。
「謝礼の方はそれだけで良かったのですか?」
「勿論だ。他には必要無い」
「……おっぱい揉み放題……。」
「いいんですか!?」
エリクシア、マリエル、アリアドネにこっぴどく叱られてしまいました。触る訳無いだろ、冗談ですよ、ノリですよ。いつも分かってくれないんだから、全く可愛いやつらだぜ。
「仇打ちが悪だとか、恨みからは何も生まないだとか、そんな綺麗事なんてのはどうも俺には似合わなくてな。助けたいから、この街の仲間として。アクアが今後、それで幸せになってくれるならそれが報酬で事足りる。頑張れよ、ギルド嬢!」
「ーーはい!!」
気持ちの良い返事だった。彼女の笑顔が見れただけでも充分にお釣りが来るぐらいの清々しさである。この街で暗い顔なんかして欲しくないからな。
このエルムーアは、みんなが笑顔で満ち溢れて無きゃつまんないからな。そんな陽気さにあてられて、最高の仲間と出会うことが出来たんだから。
「カケルさーん! この首の口の中にピンクの豆みたいなのが入ってましたー!」
「ちょっと待てー! それをこっちに寄越せ!!」
ーーぷちッ!!
「え? カケルさん何か言いました? うわっ! 潰れちゃった、ばっちぃ〜」
本当に、この街は楽しいよ。
頭が真っ白になり、俺は力尽き泡を吹きながら地面に突っ伏してしまった。
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