第26話 DAY20

 最近の夏は暑くて困る。俺と桜はリビングでぐうたらしながら、スマホゲームをしている。ちなみに、母ちゃんは朝ご飯を食べるとすぐにフランスに帰ったので、今は2人きり。4月の頃なら緊張して吐きそうになっていただろうが、免疫がついたからだろうか、今はソファで横並びになっていても何とも思わない。


「ねえ、実況者って緑シャン強いとか言ってるけど、そこまでじゃない?」

「たしかに、言うて避けれるな。攻撃も見えやすいし。」


さっきから20戦ほどやっているが、未だにそこまで強いと思わない。最大体力を減らす効果はウザいとは思うが、そこまで回復すれば問題ないので基本的にムカつくことは無い。


「今でSSの3500か。桜は?」

「同じぐらい。」

「じゃあ次は一緒にやるか。」


10からカウントして6の時に桜がマッチングを始める。そして0の時に俺がマッチングを始めるとあら不思議、同じ試合の敵チーム同士になった。


「俺向こうでやるわ。指見られたら分かるし。」

「じゃあ、私はこっちね。」


試合がスタートする。落ち合うのは桜側の2陣。極力スキルは使わずに移動して、対面する。相手は誰もいないからタイマン状態。このステージは上と下に分かれていて、上にあるのはそれぞれの2陣だから、あまり他の人が来ることは無い。通常攻撃を2発打って、桜の無駄回避を誘い出す。上手く乗ってきた桜の犬にまずは頭銃を打つ。これを無敵スキルで回避した桜は、着地に合わせて通常攻撃。俺はダウンして、猛火状態になる。しかし、特性の状態異常80%短縮があるので、ほぼダメージなく起き上がる。桜の通常攻撃に合わせてジャス回をして、通常攻撃を何発か叩き込む。最初の2撃はノーダメの状態なので、3撃目が当たったのを見て、突撃。犬は残り3分の1程の体力になる。桜が起き上がってきて、通常攻撃を打ってくるが次はジャス回できずに、無駄回避になる。為すすべのない俺は、犬の紅蓮を正面から受ける。属性相性的にこっちが有利なので、体力はあと半分くらいに。俺は立ち上がって、また無駄回避を誘い出し、回避を使ったところに通常攻撃を何発か叩き込むとKOした。


「チックショー!」


桜の雄叫びが聞こえてくる。結局、この勝負は俺たちのチームが勝ち、リーグスコアが100ほど上がった。


 晩ご飯の準備をしていると、インターホンが鳴る。おそらく杏だろう。俺が鍵を開けると、杏が飛び込むようにして入ってきた。


「ただいま!」

「「おかえり!」」


杏は不思議そうに俺のことを見ている。何かついているのかな?


「バカ兄が髪の毛切ってる!あの邪魔そうな前髪もさっぱりしてる!」

「私がやったのよ。上手くできてるかな?」

「桜さんが!?めっちゃ上手くできてます!」

「それは良かった。杏ちゃん、晩ご飯食べるよね?」

「食べます。あぁ桜さんの手料理か…旅館の料理よりおいしいかもしれないな。」


旅館で何を食べさせられたのか気になるところだが、あえて触れないことにした。


「あっそうだ。母ちゃん来たよ。」

「まじで!?久しぶりに会いたかったなぁ」

「母ちゃんも同じこと言ってた。」


昨日まで2人きりだったからか、今の環境がとてもいい環境に思えてくる。

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