第23話

そう思っているとエルローズ様たちが少し姿勢を正し、軽く膝を折っての淑女の礼をとろうとしました。それを止めるようにふわっと空気が揺れます。


ふわっと温かい空気がしたと思ったらやっぱり・・・。


フレディお兄様が後ろに立ってらっしゃいました。


いつもどおり癖ですか?癖なんですか?ここ他国ですけれども?


そう思いましたがお兄様はいつもどおりわたくしの背中から私を柔らかく抱きしめてきました。


それを顔を上げて淑女の礼を解いた途端、目の前で見ていた三人のお嬢様方がもう声にならない声を上げてらっしゃいます。


そうですよね、カインお兄様だけではなくフレディお兄様まで揃ってしかもその後ろにはロウがいますしねぇ・・・。


「「「尊い・・・」」」


尊い?


また聞いたことがないような言葉が出てきました。


三人は改めて淑女の礼を取りました。それを合図に私から手を離したフレディお兄様は今度は一人ひとり手を取りキスを落とし礼を尽くしていきます。


後一年もするとお兄様はエルロッドウェイ皇国の王になられるのですものね。


周りの視線も大々的に集まるというものでしょうとも。






「レーヌ、お友達はできそうかい?」


「お兄様!皆さまがよろしかったならわたくしこちらの国でもお友達として・・・お友達になっていただけたら嬉しい・・・のです・・・けどいかかですか?良いですか?お友達・・・。」


段々と恥ずかしくなってきてその上人見知りがでてきてしまってフレディお兄様の顔を見るとなんだか年が離れているせいかいつも甘えてしまいます。


「「「か・・・かわ・・・」」」


?いつもの癖で首を傾げると、三人がまた震えてらっしゃいます。大丈夫でしょうか?


「「「なりましょう!お友達です!!!」」」


「ありがとうございます。」


嬉しくてにやけてしまいました。わたくし三人もお友達ができましたの?本当に?!


嬉しすぎてニヤニヤと笑ってしまいました。それを見ていたはずのフレディお兄様が急に私を抱きしめてきました。


「レーヌ!!それはだめだ!」


「な、なにがですの?」


カインお兄様はちゃっかりとエルローズ様たちの方に向かって笑いかけてらっしゃいます。


「レーヌはこの通りとても無防備な子なんだ。よろしくお願いできますか?」


「「「はい!!!」」」


「それから、エルローズ様。」


と、カインお兄様が話しかけてらっしゃいます。珍しいです。複数のお嬢様がいらっしゃる中一人だけに声をかけるなんて不用心なことをなさるとは?


ふっとおもっているとフレディお兄様もちょっとだけ緊張したようなピクッとした動きをされています。


「あなたにダンスを申し込んでもよろしいですか?」


これにはわたくしもフレディお兄様もびっくりしました。え?自ら?と。


それに対してのエルローズ様の答えはシンプルでした。


「私でよろしければ喜んで。ただ、父とのダンスが先になりますがよろしいですか?」


これまたびっくりです。お兄様が二番手にされました。それを聞いたカインお兄様はこれまたニッコリと笑います。


「ええ、もちろんです。何番目でも構いませんよ。」






フレディお兄様がじっとカインお兄様を見て。二人が視線を交わした後フレディお兄様が似やっと笑いました。


「ならばレーヌ、ファーストダンスは私でも良いかい?」


「わたくしも踊るんですの?」


「なんのために来たんだい?レーヌ?」くすっと笑うお兄様にわたくしも笑いながら軽く胸の中に飛び込みました。


「もちろん喜んで!お兄様!!」


「ちゃんとカインとも踊ってあげてくれ。それからロウとも。」


「もちろんです。」


「おや、私ともおどってくれると?」


そう言いながらロウが話に加わります。アンヌは少し離れたところでニコニコと笑っています。


もうお話の方は済んだのかしら?あの三人でのお話も気になるところだけれどフレディお兄様のほうが大分食えない性格をしているから・・・いや、ほめているのですけれど。


ユーリス様もカテリーナ様もエルローズ様もなぜか両手をギュッと握りしめてらっしゃいます。


「どうかなさいましたか?」


わたくしが聞いたらもうふるふると首を横に振りながら三人共がもう目が潤んでるではありませんか。


びっくりしてお兄様の腕から離れると小さくあー!!ッと言われてしまったのでとりあえず。


とりあえずもう一度お兄様にくっついてみるとうんうんと、うなずきあっています。






なんなんでしょうか?流行りなのでしょうか?


これが正解なんですの?






「ご兄妹が仲睦まじくてこの世のものとは思えないほどにとても麗しいのですけれども。」


「ご兄妹三人共がお美しくてナディアレーヌ様はお可愛らしくてどうしたら?」


「それにあの肌の美しさ・・・何を使ってらっしゃるの?美しすぎて・・・。」






コソコソと聞こえる言葉はなかなかわかりませんが悪口ではないことだけはわかります。


お兄様たちがにこにこしてらっしゃるから。


腕にくっついているわたくしがお兄様を見上げるとこれで良いのかと言った顔で見てしまったことがばれてしまい・・・。


さらっとまたつむじにキスが落とされました。


合ってるということでいいのでしょう。



その一連の流れはもう会場の視線を釘付けにしていたのだけれど。


ナディアレーヌに気付かれないように兄達がその視線から守っていたことをアンヌは遠目で眺めて知っているし、ロウはそれが当たり前の生活をしていたからわからないのだけれど。


その三人が今日の主役であることはもう解りきったことだったので見られている事も当たり前の皇族からするとなかなかにどれだけの関心を集めているのかはナディアレーヌにはあまり分かっていなかった。


だがしかし敏い人たちはわかってしまっただろう。


わざと公開した情報もある。


エルロッドウェイ皇国の皇族の仲はとても良いこと。そして時期皇国の王が妹を溺愛していること。


そして時期宰相も妹を溺愛していること。


そしてその第二王子であるカインは独身であり、その関心を一人の女性に定めたことを。


そのあたりはすべての情報を上二人の兄達があえて与えた情報であり。






それはこの人にも痛いほどに解ったことだった。


ほう、そうきたか。


軽やかな牽制。自分の妹をやすやすとは預けないぞという先制攻撃のような。


だがそれに対しての答えはこの男には必要ないことだ。






たった一人の孤高の国王陛下。








「では、わたしも申し込もう。姫よ、わたしとも踊っていただけないか?」














さっそうと現れた美貌の国王陛下がみんなの関心をさらってしまった瞬間だった。




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