第49話 青春と音楽
『歌は世に連れ、世は歌に連れ』と申します。
不思議なモノで、この言葉を聞くと自分が中高生時代だった頃の音楽を思い出してしまいます。
小学五年で目覚めたラジオリスナーの道。
当時も今と変わらず、アイドルの歌声はテレビから良く垂れ流されていました。
しかし、ラジオの世界は趣が異なり、アメリカのポップカルチャーを始め、ニューミュージックからスタジオミュージシャン、ハウスにクラブ、テクノにシンガーソングライターなど、活気に溢れるとともに、誰もが暗中模索の中、楽曲は勿論、歌い手も含めて、玉石混合、ドングリの背くらべの様相を呈していました。
一発屋という連中が登場したのも、このような時代背景があってのことだったかも知れません。
CM曲にドラマや映画のオープニング、エンディング、そして挿入歌…
当時視聴できたメディアは限定的で、そこから聞こえて来るサビに惹かれ曲名を調べ…と言っても、ほとんどの場合は人づての情報やラジオの紹介等ばかりで、個人で調べるには限界が有りました。
レコード店も有るには有りましたが、そこは地方のレコード店、アイドル関連ばかりが充実し、他はお飾り程度なわけです。
というわけで、ラジオに傾倒していく日々が続き、学校での音楽談義に至っては、テレビ視聴組との溝が深まる一方でした。
まぁ、どうでもよかったんですけどね…モテなかったり、モテなかったり…モテなかったりで。
思えばテレビドラマを『おもしろくない』と
ラジオドラマを聞きかじり、単行本を買ってはイメージを膨らませる、今の創作思考の原点がここに有りました。
もっとも、妄想癖までオプション追加されたのは言うまでもありません。
ふと、昔聴いていた楽曲のことを思い出し動画投稿サイトを覗いてみれば、今は本当に便利な世の中、欲しいものがすぐに見つかります。
もっとも、全てが見つかるわけではないのですが。
あの頃ネットが普及していたら…と、ついつい考えてしまうのは、老害の影響でしょうか?
いずれにしても、私の中には『私の青春と音楽』が存在し、これは墓場まで持って行ける唯一無二の手荷物となるでしょう。
さて、あと何曲手荷物に加えることができるのか?
壮年を経過してもなお、青春と音楽を探求する心は男の中で今日も燻っています。
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