1話 婚約を阻止せよ!!

 やばい、やばい、やばい、やばい。まずい、まずい、まずい、まずい。

 こんなことを思いながら、ずーっと円卓の周りぞぐるぐるぐるぐると周り続けている私。

 「ソフィア様、どうかなさいましたか?」

 「ふぇ!?い、いや、なんでもないよ」

 なんでもないわけあるかーー!!!!

 

 だって、原作では、今日、ラファエルに一目惚れされて、婚約者に選ばれる。

 いや、でも待てよ。私は、この髪の色に、この瞳だ。不吉なものだと言われているから、まず、王と王妃が認めないだろう。しかも、私はラファエルを下敷きにしてしまったんだから、

 「え?何、何なの?こいつ」

 って思われている可能性も、あることはある。

 

 そして、色々考えた結果。

 「よし!私が選ばれるわけないもんね。あ、ミア!手伝うよ」

 「ありがとうございます」

 開き直ることにいたしました。

 

 そして、1週間後・・・・・・

  

 あーよかった。1週間も何もなかったってことは、私は、婚約者に選ばれなかったんだよね。あー、安心安心。

 バタンッ

 その時、ミアがものすごい形相で慌てて部屋に入ってきた。

 「ソフィア様!!」

 「どうしたの?ミア」

 「それが、それが、大変なんです!!今、そこに__」

 ミアが話している途中に、またバンッと、扉を乱暴に開ける音が聞こえた。

 それと同時に入ってきたのは、白髪で、吊り目の、おばあさん。

 「ソフィアお嬢様でございますね。今すぐに、本邸へいらっしゃいますように、と旦那様がおっしゃっております」

 「え・・・・・・?」

 「ちょっと待ってください!!エレノア様!!あまりにも急すぎます!!本邸へ来ていくような、上質な服もないですし」

 「それなら、本邸で身だしなみを整えてください。それなりに用意しておりますので」

 「でも・・・・・・」

 「ミア、もういいわ。分かりました。行きます」

 「ソフィア様・・・・・・」

 いつも、クールなミアが、泣きそうな顔で私を見ている。だって、本邸へ呼ばれることなんて、生まれて10年、一度もなかったもの。生まれてすぐに、こっちへ追い出されちゃったから。

 

 「ふう」

 それにしても、なぜ呼ばれたのかしらね。あの人達のことだから、私なんて絶対に屋敷に入れたくないはずよ。

 まさか・・・・・・。

 なんて思案していたら、あっという間に屋敷についてしまった。

 「・・・・・・」

 言葉が出ない、とはまさにこの事だろう。

 金ピカで、でっかい。この一言、じゃなかった、二言につきる。

 え〜。私が家追い出された時は、もっと質素だった気がするんだけど。でっかいのは変わらないけど。

 こんなものを作るお金があるのに、私には侍女を1人しかつけず、着る物も、勉強するものも、用意してくれない。ご飯3食は用意してくれるが、たまに毒が入っていることもあるし、残飯、としか言いようがない物だってある。

 あの人たちは、どれだけ私が嫌いなんでしょうね。たった1度、しかも、私が赤ちゃんの時にしか、あったことがないと言うのに。

 

 「ソフィア様、こちらへ」

 一段とでかい部屋の中にいたのは、私の記憶よりでっぷりと太った偉そうな男、多分、父、セシルだろう。それと、赤い髪で、唇にはもっと赤いリップをつけている、私の、義母、カミラ。

 そして

 「やあ。また会ったね」

 優雅にお茶を飲んでいる・・・・・・ラファエル。

 何でだ!!!

 「お父様、お母様、ご機嫌麗しゅう存じます」

 「うむ。そこへ座りなさい」

 前世の記憶から、適当にこんなものかな?と言う挨拶をしてみた。通じたようで、よかった〜。

 「こちらは、王太子ラファエル様だ」

 「まあ。まさか、あの時の?」

 はい。私、か弱く、純粋な乙女のふりをします。

 「あの時は、誠に申し訳ございませんでした。もしかして、何処か骨折をしていたとか」

 「ああ、大丈夫。その件はもういいんだ。そうじゃなくてね。今日は、君が僕の婚約者になったことを伝えにきただけだから」

 「・・・・・・はい?」

 え、何ですと?今聞いたら、婚約者にことを、とおっしゃいましたよね?

 「私が、ラファエル様の婚約者ですか?」

 「そうだよ?」

 いやいやいや。え?普通、婚約者になってくれない?とか、そう言うのなんじゃないの?

 え?もう決定事項なわけ?


 「えーと、お断りします」 

 「!!どうして?」

 「まず、私は側女の娘でして、ラファエル様にふさわしくはありません。そして、この銀色の髪と、赤い瞳は、この国では不吉なものです。そんな私が、王太子、ラファエル様の婚約者になったら、ラファエル様の何傷がつきます。何より、国王様と王妃様から許されるはずがありません」

 「ああ、そういうこと。なら大丈夫。もう、僕が説得しておいたから」

 え?

 「と言うことなので、ソフィア、お前もあんな汚い塔に閉じこもっていないで、そろそろこっちへ戻ってきなさい」

 はあ?元はと言えば、あんたたちが追い出したんでしょうが!!!

 というよりも、カミラが静かにしているのが、怖い。私には、妹、アイティラがいるはずなのに、普通なら

 「ソフィアよりも、アイティラの方が婚約者に相応しいですわ!!」

 とか言うと思ってたんだけど。

 原作では、カミラに虐待され、アイティラや侍女からはいじめられ、ソフィアは心が折れ曲がってしまったのだ。


 「ラファエル様、お時間です」

 ラファエルの従者の人が、ラファエルに伝える。その時、一瞬睨まれたのは気のせいですか?

 えー!!まだ私、言いたいこと言ってないのに!!

 「そうか、残念。じゃあ、ソフィ、また来るね」

 え!?何で私の名前知ってるの?っていうか、もう来ないでいいんですけど?

 「ラファエル様、ご足労ありがとうございました」

 父は重そうな体でバタバタとラファエルをお見送りしている。

 

 「えー」

 「はあ。なぜ、あなたが選ばれたのでしょうね。あの卑しい身分の女の娘なのに。普通なら、アイティラが選ばれていたのに。何を使ったのですか?」

 あ、今来ました。女って怖っ。

 「まあ、いいわ。あなたがこの家にいる間に、私があなたの本性を暴いて、婚約を破棄させてあげますから。そして、アイティラをラファエル様の婚約者に!」

 えー。私的には、婚約を破棄してもらった方がいいんですが。

 それにしても、物事ってうまくいかないものですね。前途多難です。この先どうしましょう!?

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