第158話 今後は九重さんの家で定期的にホームパーティーをやることになりそうだ

 さて、買い物後の”アフタヌーンティー・ティーハウス”での休憩も終わった。


 具体的に言えばケーキスタンドに乗っていた食べ物と、ポットの中に入っていた紅茶は一人当たりたっぷり2杯分あったのが、それらすべてがなくなったのだ。


「うん、今日は買い物だけのつもりだけだったけど、休憩しつつのティーパーティの練習としてはなかなか良かったんじゃないかな?」


 俺がそう言うと新發田しばたさんがコクコク頷きながら言った。


「本当、小説の中のお姫様やご令嬢みたいな気分でした。

 こんな気分なんてそうそう味わえないですよね」


 そして白檮山かしやまさんもウンウン頷きながら言った。


「だよねぇ。

 現実にこんなことをやれる日が来るとは思わなかったけど、楽しいよね」


 そして西梅枝さいかちさんも言う。


「私は西洋風のお茶会の雰囲気とかはあまり詳しくないのですけど、このお店は接客も丁寧ですしお腹もいっぱいになりましたし、雰囲気もいいですよね」


 その言葉に対して新發田しばたさんが食い気味に言った。


「あ、じゃ、じゃあ、今度、私のおすすめの本を貸しますのでぜひ一度読んでみてくれませんか?」


 そして西梅枝さいかちさんも言う。


「あ、はい。

 それはぜひにでもお願いします」


 そして笑顔で九重ここのえさんが言った。


「たしかに楽しかったですネー。

 それにデザートがまた食べにきたいなぁと言う優しい甘さの美味しいケーキデシタ!

 私はまだこのあたりのお店にくわしくないデスカラ、いいお店を紹介してくれてありがとですねー」


「いあやまあ、おすすめの店とかがわからないってのは大変だろうし、俺で良ければこれからも教えるよ」


 俺がそう言うとやはり笑顔で九重ここのえさんが言った。


「それはたすかりマース」


 そして西梅枝さいかちさんも言う


「本当、ここはお買い物で疲れた心身を癒してくれるいい場所ですよね」


 ちなみにかなり食べ応えがある量ではあったはずだが、皆美味しそうに食べていた。


  このお店の女性率は90%近く店内は広くゆったり出来るが男が一人でいるには少し居心地が悪いかもな。


 まあそれなりに年配の女性が多いのは救いといえば救いだが。


「でも、残念ですね。

 お茶会の雰囲気をもう少し楽しみたかったですが」


 新發田しばたさんが本当残念そうにそう言う。


「では、この後に私の家で、ハイティーを楽しみませんか?」


 そう笑顔で言う九重ここのえさんへ俺は首を傾げながら聞いた。


「ん、今から九重さんの家で英国式のアフタヌーンティーをやり直そうってこと?

 流石にそれは厳しくないか?」


 俺がそう言うと 九重ここのえさんは笑いながら言った。


「ああ、ハイティーはそういう意味もありますが、私が言っているのはアメリカ式ハイティーデス。

 ハイティーは別名でミートティーですが、労働が終わった後に肉料理を中心とする夕食と紅茶を楽しむことデスネ」


「ああ、そっちのほうね。

 サパーみたいな軽い夕食のほうのハイティーか」


「そうですね。

 もともとハイティーは絶対禁酒運動が盛んな時代の労働者階級発祥のものデス。

 この時間帯に使用するテーブルが、アフタヌーンティーのローテーブルに対しダイニングテーブルなので背が高いからとハイティーと呼ばれたと言われてマスネー。

  ちなみにアフタヌーンティーとは、1845年頃、イギリス女王陛下の元女官デアル7代目ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが始めたと言われていまして、当時の貴族の生活は、夜の社交的なディナーが観劇や音楽会のあとで21時と遅くなりがちなため、空腹しのぎのため夕方15時頃から紅茶とバターつきのパンを自室で食していたのが友人や客人たちと応接室でお茶とお菓子を楽しむようになり、これが”女性の社交の場”としてのアフタヌーンティーといて定着していったのデスヨ 」


 九重ここのえさんがそう言うと新發田しばたさんが驚いたように言った。


「アフタヌーンティーは19世紀中頃から始まったんですね。

 もっと古い歴史があるのだと思っていました」


「日本のファンタジーは色々ごちゃまぜみたいですからネ。

 日本で言うなら平安時代と江戸時代をごちゃ混ぜにして、平安時代から茶道があると思うようなものデスヨ」


 九重ここのえさんの言葉に白檮山かしやまさんが言う。


「うんうん、歴女の端くれとしては言いたいことはよく分かるわ」


「まあ仕方ないんじゃないかな。

 日本史や世界史に詳しい人間ならともかく、そうでもないと古代と中世と近世の区別もつかないことも多いと思うし」


 俺がそう言うと西梅枝さいかちさんがいう。


「あ、あははは。

 私も実はよくわからないです」


「まあ実際に先史・古代・中世・近世・近代・現代の時代区分自体が国や地域で違う曖昧なものだしな。

 とはいえ、歴史の流れを各時代の特徴によって区分することで、歴史を体系的に理解する上での利便性をもたせるものとしてそれなりに有効だとは思うけど」


 実際に日本で言う中世ファンタジー風に含まれる要素は実は近代に生まれたようなものも多かったりする。


「まあ、まあ難しい話は置いておき、ミートティー、どうですカ?」


 あ、九重ここのえさんが逃げた。


「私はぜひ参加させてもらいたいわ。

 ミートティーなんて高校生じゃそうそう参加できないもの」


 白檮山かしやまさんがそう言うと新發田しばたさんも言った。


「私も是非参加させもらいたいです」


 そして西梅枝さいかちさんも手を上げた。


「じゃあ、私も参加していいでしょうか?」


「もちろんデスヨ!」


「あー、それじゃあ俺も参加していいかな?」


 最後に俺がそう言うと九重ここのえさんが二パッと笑っていう。


「それは当然ですヨー」


 というわけで俺達らららぽーとを後にし、京成線の船橋競馬庄駅から途中の京成津田沼で京成千葉線に乗り換えて検見川駅で降り、九重ここのえさんの家ヘ向かうことになった。


 ちなみに九重ここのえさんは帰り際にスマホで誰か宛にメールなりメッセージを送っていたようだが多分家の人だろう。


 ちなみに到着したそこは比較的閑静な高級住宅街の一戸建て住宅だった。


 千葉県でも市川市の市川真間、船橋市の海神、千葉市の幕張や検見川あたりは古くからの高級住宅地だったりする。


九重ここのえさん、いい場所に住んでるんだなぁ」


 俺がそう言うと九重ここのえさんも言う。


「と言ってもニューヨークもあっち(アメリカ)では最も不動産価格が高い地域ですから、こっちのほうが土地は安いかもですよ」


「ああ、確かにそうなのかもしれないな」


 幕張駅周辺や海浜幕張周辺は副都心機能を持つ商業地地域だが、検見川駅や新検見川駅・幕張本郷駅周辺は生活拠点としてのじゅうたくちが立ち並んでいて場所によっては田畑が広がる場所もある。


 そういう意味では弥生ちゃんの住んでる周辺が雰囲気的に近い感じだな。


 まあ、あっちはもっとのどかな田舎の雰囲気で高級住宅街じゃないけど。


 しかも家の大きさも弥生ちゃんの家に負けず劣らず大きく、4階建てで庭を広く使えるようにしてるようだ。


 4階建てで階段を上り下りするのは大変なので多分中にはホームエレベーターがあるんだろう。


「すごい、ですね」


「本当に」


 西梅枝さいかちさんと新發田しばたさんがそう言うと九重ここのえさんが言う。


「あーデモ、あっち(アメリカ)のときに住んでいた家に比べると、庭も家もだいぶ狭いんデスヨネ」


 俺はその言葉に苦笑しつつ言う。


「まあ、映画とかを見てもアメリカのアメリカの家ってバカでかいからな。

 あっちだと80坪で約265㎡ぐらいはごくごく普通で100坪約330㎡とかも割合普通らしいからなぁ。

 まあ日本と違ってアメリカは土地が広いからできるんだろうけど」


 俺の言葉に九重ここのえさんが笑いながら言った。


「あ、でも通勤や通学に不便なので普段は使ってないですが、ONE HUNDRED HILLSにある別荘は庭も広いでデスヨ」


「そこ、千葉県でも最高級の住宅地というか別荘地なんだけど……」


 ワンハンドレッドヒルズは別名チバリーヒルズと呼ばれるバブル時代の負の遺産とも言われる場所だ。


 具体的にそれがあるのは千葉市の緑区あすみが丘で、土地が500~1,000坪、建物延床面積 130~150坪のプール付き土地付き一戸建て住宅とかがある場所だ。


 近くの駅が外房線の土気駅で、しかも駅からも遠いので普段から住みにはあんまり向いてはないだろうな。


 なにげに九重ここのえさんの家って金持ちっぽいな。


 都心に比べれば安いだろうとはいえ検見川の家は家を含めて、チバリーヒルズは土地代だけで8000万円くらいはするはずだし。


「まあそれはともかく、ミートティーを早速楽しむデスヨ」


 というわけで家の敷地の中に入ると、子どもがドッジボールができる程度には広い庭にウッドデッキやタイルデッキも設置されていたりする。


「こりゃびっくりだな」


 俺がそう言うと西梅枝さいかちさんも頷いて言う。


「本当にびっくりする以外ないですよね」


 そして九重ここのえさんに似た金髪の女性がにこやかに迎えてくれた。


「あらあら、みなさんイラッシャイ。

 娘が友達を連れて来るのは初めてナノデ、ゆっくり楽しんでいってね」


 九重ここのえさんのお母さんかな?


 それにしては随分若く見えるけど、アメリカでも初婚や初出産の平均年齢は日本とそこまで変わらなかった気がするんだけど。


 俺がそう考えていると九重ここのえさんがいう。


「パパとママは学生の時に結婚してるんデ、若いんですよー」


「な、なるほど」


 そして、ウッドデッキ縫い設置されているダイニングテーブルに案内され、テーブルの上にミートティーが用意されてく。


 ケーキスタンドがあるのは一緒だが更にはローストビーフやフライドチキンに小エビのフライ、ハッシュドポテト、ワッフル、コールスローにデザートはアップルパイにチェリーパイなんかもある。


「なるほど、アフタヌーンに比べるとだいぶ砕けた感じだな。

 むしろ飲み物はビールとかのほうが似合いそうだ」


 俺がそう言うと九重ここのえさんが笑っていった。


「パパとママなら、たしかに飲み物はビールですね」


「もうそれミートティーじゃなくた単なるアメリカンダイナーじゃん?」


「こまかいことはきにしちゃいけないデスヨ」


 まあ、それはそれとしてミートティはミートティで女の子たちの話は盛り上がった。


「うーん、これはこれでありですね」


「変に格式張っていないのがいいですよね」


 と西梅枝さいかちさんと新發田しばたさんは和やかに話をしている。


「たしかに、割とガッツリとした夕食に紅茶を合わせるのもありね」


 白檮山かしやまさんもたのしそうだ。


「ふふっ、こういうのも悪くはないデショウ?」


 そういう九重ここのえ三位俺は大きく頷いた。


「ああ、ミートティの習慣自体俺は知らなかったから新鮮だし楽しいよ」


「それは何よりデスネ。

 今後は機会があればホームパーティを楽しめるように、していきマスヨ」


「アメリカだとホームパーティって、特別なことじゃないらしいしそれもいいな」


 アメリカでのホームパーティーと言うのは日本で言うところの宴会などに近いのかもしれないな。

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