617 ダンジョン晩餐会



 「(なあルシウスのおっさん。マジックバックは料理入れてもいいんだろ?)」


 「(当たり前じゃアレク。熱いものは熱く、冷たいものは冷たく保存できるぞい)」


 「(じゃあさっそく使わせてくれよ)」


 「(もちろんじゃ)」


 調理の様子やマジックバックに収納するところはみんなから見えないようにしたよ。最後だからキザエモンや狂犬団の仲間にものんびりしてもらったんだ。俺1人で作りたいからって。


 てか、完成品をマジックバックに入れるところをみんなに見られたくなかっただけなんだけどね。



 バンダルスコーピオンの身は解体してるときからわかってたんだ。コイツはエビと同じ身質だって。

 (大きさは車サイズだったけど)



 ロブスターの弾力に伊勢海老の甘みを持った、最上級の甲殻類みたいな味がするバンダルスコーピオン。


 まずはバンダルスコーピオンを一口大にカット。特製アレク塩で下味を付けてから片栗粉を塗してシンプルにグリルする。


 片栗粉を塗すと身が一層プリプリした食感になるんだよね。


 味付けはマヨネーズ。だからできあがった料理は超高級なエビマヨだよ。



 夏休み。爺ちゃんや婆ちゃんが獲ってきてくれた伊勢エビ。

 俺の1番好きだった伊勢エビ料理は1択なんだ。


 単に蒸したり焼いたりした伊勢エビにそのままマヨネーズをたっぷりつけてかぶりつくことなんだ。

 いろんな調理法がある伊勢エビも、実はこれが1番うまいと思ってるよ。


 今回はこのエビマヨにはもう1つ、カレー粉を塗したカレーマヨネーズ味も加えた。 

 マヨネーズの味変になって美味しいよね。



 さっそく試食したよ。試食したらね。


 (ウマッ!これはたしかにめちゃくちゃ旨い、味の濃いエビの身だな)


 深い味わいとプリプリした弾力は車海老やブラックタイガーの比じゃなかったよ。


 本当は白ごはんで食べたいんだけどね。ないものは仕方ないな。


 だから柔らかな食パンを用意した。薄めの8枚切、サンドイッチ用にカットしたよ。好みで自分でサンドしてもらおうかな。


 バンダルスコーピオンを使ったマヨネーズが合う麺料理といえばやっぱ焼きそばなんだよね。


 たっぷりのバンダルスコーピオンを小さめにカット。タマネギーやキャベッツー、人参と一緒に焼きそばを炒める。味付けはもちろん醤油。醤油が鍋肌で焦げる香ばしさも美味しさを倍増してくれる。


 焼きそばはこれで充分美味しいんだけど、もちろんマヨネーズをかけてもらってもいい。俺はマヨラーじゃないけど、ルシウスのおっさんは喜ぶんじゃないかな。


 マヨネーズは5本あるうちの1本をルシウスのおっさん専用にしてあげたよ。


 (うまっ!なんじゃこれ!まるで海鮮焼きそばの味になってるよ!)


 もう1品。次が大本命のお好み焼きなんだ。焼きそばと双璧の横綱級粉もんはやっぱお好み焼きだよね!


 たっぷりの千切りキャベッツーが甘みを生むお好み焼きもバンダルスコーピオンがたっぷり入ってるから高級お好み焼きだよ。


 醤油にメイプルシロップを加えて甘めにして、片栗粉でとろみをつければお好み焼きの甘ダレの完成。


 あとは焼き上げたお好み焼きにたっぷりこの黒い甘ダレを盤面に塗る。

 仕上げは黒い盤面に細くかけた波波の白いマヨネーズ。最後、波波に垂直に縦線を引けば見た目も美味しいお好み焼きの完成。


 もちろん粉もんのたこ焼きも忘れてないよ。

 たこ焼きならぬバンダルスコーピオン焼きだけど。




 「お待たせしました。最後の食事が完成しました!」


 キャー!

 おぉ〜!

 きゃー!


 救助された騎士団員さんたちも、みんなの熱気に当てられたみたい。


 「最後だから俺も皆さんと一緒に食べながらにしますね。お料理は同じものを大皿で6皿出します。

 だから目の前のフォークでお皿に取り分けて食べてください」


 長卓の下座で。

 そうみんなに宣言したんだけど。



























 「アレク君お料理はどこ?」


 「「「メシがないぞ?」」」


 「「「??」」」



 「ガハハハハハ、わかるかメイズ?」


 「はあ?ルシウスさん何がですか?」


 「実はな、アレクがバンダルスコーピオンを倒したときにな、宝箱が出現したんじゃよ」


 「「えっ!?まさか!?」」


 ガタンッ!

 ガタンッ!


 メイズ団長とジャック副官の2人が思わず立ち上がったよ。


 「「マジックバック!?」」


 「そうじゃよ。ドロップ品にマジックバックが出たわい」


 「「「えーーーっ!?」」」


 「もうアレク君、君に驚かされるのは何度目だい!?」


 「「ホントー!」」


 メイズ団長に続いて第2分隊のお姉さんたちが目を丸くしてるけど、そっかな?まあどうでもいいよ。みんながうまいとか楽だって喜んでくれればさ。


 「ガハハハハハ。うまくいったのアレクよ」


 「うん、おっさん」


 「ルシウスさん。心臓に悪いですよ」


 「すまんすまん。あまりにおもしろかったから皆が落ち着いてから話そうとな」


 「ルシウスさん、大概にしてください。マジックバックはなんと言っても国宝級のドロップ品なんですからね」


 「いやメイズよ。アレクは言っておるぞ。このマジックバックは騎士団のものだとな」


 「えっ?!」


 「自分は騎士団の依頼で受けたポーター、しかも王国からの留学生だからこのマジックバックの所有権は騎士団にあるとな。そうじゃなアレクよ。ワハハハハ」


 「もちろんだよ」


 「「「‥‥」」」


 メイズさんとジャックさんが頭を抱えてたけど、いいじゃんね。マジックバックが手に入ったんだから。


 「さあさあ皆さん食べてくださいよ」


 そう言いながらマジックバックに意識を向けたんだ。


 (中に入ってるアツアツの食べものは?)


 ◎ バンダルスコーピオンのエビマヨ 6皿


 ◎ カレー風味のエビマヨ 6皿


 ◎ 焼きそば 6皿


 ◎ お好み焼き 6皿


 ◎ たこ焼き 6皿



 (エビマヨ6皿出して)


 ガマ口に手を入れたらエビマヨ6皿が順に出てきた。1皿出す毎に5皿、4皿と数が減っていくんだ。頭の中のデジタル表示!


 しかもどう考えてもサイズが合わないのに、外に出た途端に元のサイズに戻ってる。これぞ異世界ロマンだよ!


 「ダンジョン最後のメシはバンダルスコーピオンとマヨネーズを使ったものです。

 マヨネーズとメイプルシロップは俺のアレク商会が騎士団さんにいつもお世話になってありがとうございます」


 「(あっ!この子アレク工房の子よ!)」


 「(ツクネのアレク商会ね!)」


 いつのまにかアレク工房の名前とアレク商会、2つの名前も浸透してるんだよね。これには俺もびっくりだよ。


 「ではどんどん出していきますね。取り皿とフォークがありますから大皿6皿を銘々で分けてください」


 「「「はぁーい」」」


 第2分隊を始めとした救助隊の騎士団の女性団員さんたちが声を揃えたんだ。


 「(ねぇ、あなたたち救助隊ってこんなお料理を食べながらやって来たの?)」


 「「「そうよ」」」


 「(なにか間違ってない?私たち死ぬところだったのよ?)」


 「(なにが?でもよかったわよ。それもアレクが助けてくれたんだから)」


 「(‥‥そういやそうね)」


 「(でもやっぱり、なんかおかしくない?)」


 「(だってアレク君だもの)」


 「「「ねぇ〜♪」」」


 

 こうして最後の晩餐会が始まったんだ。


 


 ―――――――――――――――



 いつもご覧いただき、ありがとうございます!年度初めとあって不定期更新ごめんなさいm(_ _)m


 「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。

 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る