615 ドロップ品



 ドロップ品を開ける前に。異常にハイテンションのおっさんに聞いてみたんだ。


 「なあおっさん。おっさんなら何が欲しいんだ?」


 「そんなもん決まっておろう」


 「なんだよ?」


 「マヨネーズが延々と湧き出る宝箱じゃ!」


 「‥‥バカじゃねぇの!」


 「ではアレクよ、お前なら何がほしい?」


 「俺はね、女の子と緊張せずに喋れたり、付き合ったりできる飲み薬」


 「なんじゃそりゃ!?」


 「だってその飲み薬飲んだら女の子ともふつうに話せるんだぞ。チュ、チューもできるかもしれねぇし、ひょっとしてあんなことやこんなことができるかもしんねぇじゃん!」


 「‥‥‥‥」

















 「‥‥‥‥」


 「だからなんでそんな痛い子見る顔すんだよ!」


 「まぁよいわ‥‥聞いたわしが悪かった」


 「早く開けろよ!」



 ―――――――――――――――



 ギギギギギーーーーーッッ


 ゴクンッ

 (必ず凄いものが出るぞ)


 ごくんっ

 (どうせカビの生えた干し肉くらいだろ)








































 「えっ?!」


 「あっ?!」


 「マジか?!」


 「キタキタキター!ほらよく見よアレク」


 「おっさん!この袋って‥‥まさかマジックバック?」


 「そうじゃ!これがマジックバックじゃあああぁぁぁーーー!」


 おっさんが言うマジックバックは緑色した唐草模様のがま口だった。ご丁寧にも肩紐まで付いている。


 「「ま、まさか!?」」


 「ええ!マオーもあくうぅびちゃんも冒険者だったのよ!」


 「「すんげぇーー!」」







 「ほれアレク手に持って中に何か入れてみい」


 「う、うん‥‥」


 いつも腰に下げてる特製アレク塩をマジックバックに入れてみたんだ。


 がま口を開けてアレク塩を入れ‥‥あっ!スッと入った。まるで掃除機で吸われるように。


 「おっさんどうしよう!中に入っちゃった!?」


 「そりゃそうだろう。マジックバックだからな。頭でマジックバックの中をイメージしてみい」


 「うん‥‥」


 マジックバック:特製アレク塩/99


 「うおぉぉぉっ!特製アレク塩って書いた言葉が頭に浮かんだよ!」


 「その横に数字があるじゃろ。なんと書いてある?」


 「数字?えーっと99って書いてあるよ」


 「そうか。やはり(小)だの」


 「(小)?それって容量のこと?」


 「ふむ。(中)なら999、(大)なら9999だな」


 「へぇー」


 「(小)といってもすごいもんなんだぞ。今回の20人くらい、10日程度の食糧だけなら充分中に入るわ」


 「マジ?そりゃすごいな」


 とてもそんなふうには見えないけど。


 「じゃあさ、(中)や(大)はどのくらい入るの?」


 「一般に知られておるのは、(小)は1人の冒険者が1ヶ月食うに困らぬ量が入る。

 (中)は10人の冒険者が1ヶ月、(大)は100人が1ヶ月と言われておるの」


 「(大)凄っ!」


 「じゃろ。特に(大)の上、(特大)を複数用意できれば、万の兵が動かせる。戦争もかなり有利になるわの」


 「じゃあさ、帝国は(特大)や(大)をいくつか持ってるんだ?」


 「もちろん持っておる。ただ国家機密ゆえ幾つあるとかは言えんがの」


 「あははは。そりゃそうだ」


 「それよりアレクよ、マジックバックにもっと入れてみよ」


 「うん」




 「おもしろいな。形も関係なしに入るんだ」


 マジックバックは本当にすごかったんだ。

 武器も靴も服もなんでも中に入った。

 ここには無いけど、自転車くらいのサイズのものまで入るんだって。


 マジックバックに収納できないものは現在生きてるものだけらしい。


 だから生きた魚はダメでも刺身ならOKなんだ。

 料理は熱いものは熱いままで、冷たいものは冷たいままで自由に出し入れが可能なんだって。


 中から出すときも頭で念じたら、項目順に整理されてて、ポイって出てくる。まさに夢のようなアイテムだよ。

 これがあったらダンジョンもかなり楽になるね。

 まぁとてもじゃないけど高くて買えないけど。


 「いい土産ができたのアレクよ」


 「はあ?なんだよおっさん?どういう意味だよ」


 「だからマジックバックといういい土産ができたのと言っとるんじゃ」


 「なに言ってんだよおっさん?」


 「ダンジョンで獲れたドロップ品は獲った者のもんだろう。それは帝国も王国も変わらんぞ」


 「なんだ。そんなことかよ。でもこのマジックバックは俺のじゃねぇぞ」


 「なぜじゃ。お主がちゃんと闘って獲ったものじゃろ」


 「違うんだよおっさん。

 この蒼いダンジョン?俺、これに冒険者ギルドからのクエストで入ったものだろ。

 だから俺がバンダルスコーピオンを倒そうが関係ないじゃん。

 だからこのドロップ品は帝都騎士団の物だよ」


 「アレクよ。お主変なことに筋を通そうとするの」


 「だって俺、いろいろ勝手やってるからさ。せめて筋だけは通さないとな」


 「クックック。堅い男よのぉ」


 「そっかぁ?俺くちゃくちゃにやわらかいぞ?」


 「まあよい。その件はメイズたちと会ってからじゃ。

 さて。隣の休憩室の扉は空いておろうが、しばらくここで待つとするか。ここにおればバンダルスコーピオンも復活せぬだろうからの」


 「そうだね」


 


 ▼




 それから2点鍾くらいしたときだった。


 ギギギギギーーーーーッッ


 扉が開いたんだ。


 「「「アレク君!(アレク関!、団長!)」」」


 「やっぱみんなきてくれたんだ」


 「当たり前でごわす!」


 「「「当たり前だろ!」」」


 「「「当たり前です!」」」

 

 「あははは。心配かけたね。おっさんも俺も元気だよ」


 またみんなに会えたのはめちゃくちゃ嬉しかったな。


 「メイズさん。ところでどうやってここまでこれたんですか?」


 「あのあとすぐに下に降りる道が見つかってね。だからみんなで降りてきたんだよ」


 「そっか。魔獣も多かったでしょ?」


 「それほど多くはなかったよ。キザエモン君が先頭でどんどん魔獣を倒してくれたからね」


 「さすがだなキザエモン」


 「わはははは。ごっつあんです」


 「でルシウス軍団長、階層主はどんな魔獣が出てきましたか?」


 「ガハハハハ。メイズよ、もう笑うしかないわ。全身をミスリルで覆われたバンダルスコーピオンじゃったよ」


 「はっ?」


 「「はぁ?」」


 「「「はあぁぁぁぁ?」」」


 「いや、だからバンダルスコーピオンじゃよ。しかも全身がミスリルに覆われた」


 「‥‥」


 「「‥‥」」


 「「「‥‥」」」












 「もう驚くのまでもないか。なぁジャック」


 「はい騎士団長」


 そうは言いつつ、みんななんか呆然としてたからさ。


 「まあまあ、みんなバンダルスコーピオンの身を解体したからさ。隣の休憩室でメシ食おうよ。こいつ、絶対美味いからさ」


 「やったわ!アレク君、私お腹空いたのよね」


 第2分隊のジュディさんが言ったんだ。


 「任せてください。あとシャワーも用意しますからね」


 キャーーー!

 やったーー!


 「じゃあ休憩室に入りましょう」


 「「「おぉー!」」」


 ギギギギギーーーーーッッ


 休憩室への扉を開けたんだ。

 とりあえずは安全地帯のこの休憩室でゆっくり休憩してから、明日から帰還しようかなって。

 一気に帰れば4、5日で帰れそうだもんね。


 でもね。


 「おいおいおい!ジャック?!」


 「メイズ騎士団長‥‥」


 「アレク団長!」


 「キース君‥‥」


 「「「マジ?」」」






 「ガハハハハハ。これは最高についとるの。最悪続きからついに裏返ったわい!」


 休憩室に。

 そこには帰還の魔法陣があったんだ。


 「これは一気に帰れるね」


 「まぁ出口がどこかはわからんがの。少なくとも地上であろう」


 うんうん

 コクコク

 うんうん


 みんなホッとしたんだ。だってなんだかんだと疲れたからね。


 「じゃあこのまま半日、12点鐘休憩して魔法陣に乗ろう」


 「「「はい」」」


 「じゃあアレク君、最後まで申し訳ないが食事をお願いできるかい?」


 「はい。よろこんでーー!」



 ―――――――――――――――



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