520 共済保険始動



 【 セーラからの手紙 】


 アレク元気ですか?

 領都学校の私たちも、女神様のご加護のおかげでみんな元気にやってますよ。


 アレクと交換留学生として帝都学園からやってきたマルコ・ディスパイス先輩は気さくな性格もあって私たちともすぐに打ち解けることができました。

 ただ残念ながら5年1組ですから毎日会って話すことはできませんが。


 3年1組のみんなも毎日一生懸命修練に励んでますよ。

 アレクが帰ってきたとき、びっくりさせるんだってみんなで言い合って努力しています。


 マルコ先輩はモーリスの家から通ってることもあって、マルコ先輩と1番剣の稽古をしているのがモーリスです。


 モーリスは私からみてもすごく努力してるのがわかります。以前より見違えるほど明るくなったモーリスは、ハンスと一緒に3年1組のみんなをうまくまとめてくれていますから安心してくださいね。


 もうすぐ夏休みになりますがアレクはどうするのかな。私とセロはいつもと変わらず教会のお仕事です。

 みんなは集まって修練するって言っています。


 早く来年の春になるのが待ち遠しいです。ってまだまだ先なのにね。



 追伸


 帝国でも変な2つ名が広まらないように女神様に祈っててあげますね。     

             セーラ




 なんだよ、変な2つ名って……。

















 

 「アレク‥‥あんた見抜かれてるじゃん!」


 「そ、そだね‥‥」




 ―――――――――――――――




 「団長、帝都騎士団には初めて来ましたよ」


 「そうだねトン。雰囲気はヴィヨルドの領都騎士団も変わらないよ」


 「そ、そうなんですね‥‥」


 「兄ちゃん、緊張するね‥‥」


 「ああ‥‥」


 ドンとトンの2人が緊張してるけど、事実、帝都騎士団もその施設内の雰囲気はヴィヨルドのそれと変わらないものだった。護国。武を体現した施設の代表格だ。



 共済保険の会議にはドンとトンの2人が参加するようになった。元々2人とも真面目で頭もいいから、学園側(狂犬団)としても安心して任せられるよ。


 


 「うちの学園よりデカくね?」


 「「そうっすね‥‥」」


 敷地は騎士団ともあって人馬1体の訓練場があるからか、敷地はかなり広大にとられていた。

 全体に立派な建屋、立派な施設って感じるのはなぜだろう。やっぱ騎士団は「帝都の戦花」だからかな。



 「ううっ‥‥」


 「うっ‥‥」


 ドンとトンのやつ、けっこう緊張してるな。まぁ無理もないけど。

 だって明らかに敵意を持って俺たちを見てくる帝都騎士団養成学校の同年代の子たちがいるから。


 ドンとトンの2人は俺が留学した最初のころに見られた誰彼問わずに挑発的に構えることはなくなったんだ。慎重に構えられるのはいいことだよ。


 「トン、制服にしてよかったよな」


 「はい?」


 「だって相手からもぱっと見で俺たちが帝都学園生ってわかるじゃん」


 「えーっ?!俺は団長のように戦闘狂じゃないから緊張しますよ!。今もですけど」


 「失礼だなトン!誰が変態だよ!?」


 「えっ!?俺変態だなんて言ってませんよ!」


 「あっ!?」


 「「団長‥‥」」


 ワハハハハハ

 わははははは

 あははははは



 共済保険の打合せ。持ち回りの会議。

 前回の海軍兵学校(海軍省水兵学校)に続いて、今回は騎士団員養成学校(帝都騎士団内)だ。

 今後は陸軍兵学校(陸軍省兵学校)、モンク僧養成校、冒険者養成校へと続く。



 共済保険は先ず未成年者を優先していくことが正式に決定したためなんだ。どこの組織でも未成年者の数の把握、管理は成人よりもしっかりとできてるからね。

 今後は未成年者の保険をたたき台として成人へ、さらには帝都から帝国全体へと拡げていくことに方針が定まったからなんだ。



 「そういや団長、こないだメルル先輩の裸みて鼻血だして倒れたそうじゃないですか?」


 「あっ、俺も聞いたよ兄ちゃん!」


 「えっ!?」


 「おギンが腹抱えて笑ってましたよ」


 くそーおギンめ!

 バラしやがって!


 「団長、グランドにも行ってるじゃないですか。なんで素人相手に鼻血なんか出してるんですか?」


 「素人言うな!俺はお前たち海洋諸国人みたく、お酒も飲んだこともないし、女の子とけ、け、け、経験どころか付き合ったこともないの!」


 「「なんか信じられないんよなぁ」」


 「本当に本当なの!俺はまだど、ど、ど、どーていなの!」


 「うーん?本当かなぁ〜」


 「あっ!わかった!本当は逆に遊びすぎたからですか?さすが団長だよなぁー。なぁ兄ちゃん!」


 「「だな!(ちげーよ!)」」


 ワハハハハハ

 わははははは


 あははははは‥‥




 「おいおい学園生、よく天下の騎士団内で大笑いしてるよなぁ」


 「「ずいぶん余裕じゃねぇか」」


 「「調子こいてんじゃねぇぞ学園生が!」」


 騎士団養成学校の生徒たち4、5人が俺たちを名指しで声を上げたんだ。


 「団長‥‥」


 2人は冷静に身構えた。


 「(相手するな。行くぞドン、トン)」


 「「(はい団長)」」


 「「「逃げるのか学園生!?」」」


 「「「大したことねぇなぁ」」」


 「帝都にゃぁ俺たち騎士団生がいることをおぼえとけ!」


 わはははは

 わはははは

 ワハハハハ

 ワハハハハ



 ドッとウケる騎士団養成校の生徒の声を背中に会議室へ向かう。


 「イイよお前ら。安っぽい挑発にも乗らなくなったじゃん」


 「だって団長がいますから」


 「てかトン。今の奴らみて、闘ったらお前負けるか?」


 「嫌だな団長ー。俺まだまだですがアイツらに負けるほと弱くないですよー」


 「だよなぁ。というわけで、弱い奴らの挑発には乗らない」


 「闘るときは徹底して潰す、ですね団長」


 「そういうこと!」


 「「(やっぱ戦闘狂だよ団長‥‥)」」




 ▼




 「アレク君、忙しいところ悪いんだけど、騎士団養成校の生徒と稽古をしてやってくれるかい?」


 「いいですけどペイズリーさん?」


 「未成年者で帝都学園がどこよりも強いのは昔から常識なんだけどね‥‥

 これも交流がないからなのか、時代なのか。騎士団養成校の子たちは理解が足りないんだよね」


 頭をかきかき苦笑いをしているペイズリーさんだ。


 「わかりました。俺たちも頭を使うより身体を動かしてるほうがいいですから」


 「(それ団長だけだよね兄ちゃん)」


 「(トンしーっ!)」


 「聞こえてるぞトン!オラオラオラオラ‥‥」


 「痛い痛い、団長痛いっす!」


 ワハハハハハ

 わははははは



 ―――――――――




 「じゃあ帝都学園3年で1番強いドン君が相手になるね」


 「かかってこんかい学園生!」


 ダンッッ!


 「ゴフッッ!」




 「じゃあ帝都学園3年で2番めに強い弟のトンが相手するな」


 「なめやがって学園生!」


 ダンッッ!


 「ガフッッ!」




 「「じゃあ最後に帝都学園で1番強い3年の

 団長が相手するから‥‥5、6人‥‥全員でもいいんじゃないかな」」


 「「「なめるな学園生!」」」


 ダンッッ!


 「ガフッッ!」


 「ギャフッ!」


 「グフッッ!」


 「ゲフッッ!」


 「ゴフッッ!」







 「「「ガギグゲゴーーーーッッ!」」」








 「「「‥‥」」」











 「もっとやる?」


















 「「「すいませんでした!!!」」」

 


 ―――――――――



 陸軍兵学校(陸軍省兵学校)でも同じ流れになったんだ。剣術では俺たちはほぼ無双だった。俺の魔法はもちろんね。


 ただ、体術はドンとトンは陸軍の学生さんにはほぼ勝てなかった。これは仕方ないけどね。


 俺?俺は陸軍の学生との体術は問題なかったよ。でも1番強い奴とは互角だった。久しぶりに楽しい体術ができたんだ。


 「お前強いな」


 「お前もな」


 「なぁ。たまに陸軍に来るから、もっと俺と闘ってくれよ」


 「おぉ!楽しみにしてるよアレク」


 ガッチリ握手したんだ。よかった。強い奴とこれからも闘れるよ。



 ―――――――――



 「成人のモデルケースは給料の5分を徴収するか。そこに軍やギルドの所属してる団体と、国家の3つを併せていけばどうだろう」


 「だな。これなら国庫も永く乾かないんじゃないな」


 「先行する帝都学園さんはアレク君が主催するアレク工房さんから学園分を供出するらしいな」


 「すごい子だな」


 「ああ。なかなかできることじゃないよ」




 ▼




 「団長‥‥共済保険制度は団員のみにしますからね。

 これまでは狂犬団に加入する、加入しないは自由だったけど、共済保険に入れるの狂犬団に限ることを明確にしますからね」


 「わかったよ」



 先行する学園の共済保険の2階部分は狂犬団員に限ることになったんだ。

 それは狂犬団の全体会議でも発表されたんだ。


 「学園長の許可ももらったからな。2階建は狂犬団員だけの共済だ」


 「「「了解」」」


 それは中原発の学園生限定の保険の始まりだった。

 この保険は学園生をたたき台にして成人向けにも少しずつ広がることになるんだ。




 ―――――――――――――――



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