518 扶けるということ



 「今俺が考えてるのはまずは傷病を中心に2階建でこの共済保険をやろうかなって思ってるですよ」


 「「「2階建?」」」


 「はい。

 例えばですね、金を毎月1人100G。

 負担にならない金額を強制的に集めます。学園生3,000人分を集めれば30万G。これを原資にします。

 もちろん毎月原資は増える予定です。

 何かあった学園生には最大その1割の30,000Gを支給する。こうすれば仮になんかあった学園生が最大10人いてもなんとか運営は可能でしょ。

 もちろんなにもない月や軽い傷害者で済む月が増えれば増えるほどその原資は潤沢になるし。

 何もなく卒業を迎えられたら、その学園生にはこれまで納めた分を返還してもいいかな。

 かかる経費は原資の1,000分の1もあれば足りるでしょ」


 「それはそのまま帝都民、帝国民に考えても同じことじゃなアレク坊?」


 「(元皇帝の)爺ちゃんのいうとおりだよ」


 「「「なるほどな」」」


 「ただ学園にしても帝都民にしても正確な数字は絶対にいる。というか、数字がなければできないと思う」


 「数字か?」


 「うん。たぶんペイズリーさんやイーゼルさんがこれまでに何度も言ってたやつ」


 うんうんとオヤジの副官2人が大きくうなづいた。


 「今後大きく飛躍するには、正確な数字、実数は絶対に必要になるよ。

 学園生なら何月に何人怪我をした。何年生が怪我をする率が高いのか。どの地区が高いのか等々。6年後を含めてね。実数は年と共に正確になるし。

 同じことは帝都、帝国でもできる。戸籍を作ればいいんだから。それでもやり辛かったら、海軍とか帝都騎士団に対象を絞ってもいいかもね。

 そしてそれは中原1実力主義の行き届いてる帝国なら間違いなくできる。

 俺のいる王国ではヴィヨルド以外‥‥悲しいけど貴族たちがいるから、大反対されてできない……」







 

 「話がとんだね」


 「ったく……。頭のいたい話をもってきやがって」


 現ロイズ帝が頭をかきながら言った。


 「こいつでなきゃ聞くこともなかっただろうな」


 前ロイズ帝のオヤジも言った。


 「聞くべきときが来たんじゃろうな」


 前々ロイズ帝も言った。


 大きく頷くコウメの爺ちゃん以下帝国の為政者(元)たちがいた。


 「元にもどるね。

 共済保険、1階の部分の3,000Gでは学園でいったらパンが10日くらい買えるくらいでしかないよね」


 「「「そりゃそうだ」」」


 「でもほんのわずかでも何も無いよりはいいよ」


 「まあ一刻は生きながらえるわな」


 現ロイズ帝が応えた。


 「そうだね」


 「学園生3,000人全員を救いたい。1階部分の原資が増えれば増えるほど可能性は高くなる。

 だけど、それは俺みたいなガキの戯言でしかないのはわかってるよ」


 「そのとおりじゃよ」


 コウメの爺ちゃんのジンさんが応えた。


 「アレク坊のいうとおりじゃ」


 前々ロイズ帝の爺ちゃんも。


 「「「そうじゃな」」」


 文官含む会議室内の全員が応える。


 「うん。でね、2階建の2階。これは意識の高い学園生にだけに用意する部分なんだ。

 いざというときのために。

 人はふだんからそのときのために生きてるでしょ。それはここにいるみんなは当然のことって思うよね」


 「当然だろ」


 真っ先にオヤジが応えた。


 「でもさ、世の中には何かあった結果、心が塞いで何もできなくなる人もいるんだよ(昔の俺だよ)。

 中には何もできず何も考えられずに、ただただ生きてるだけの人もいるかもしれない」


 オヤジがハッとした顔をしていた。


 「逆に人生をなにかしら考えてる人だったらどう?

 そこの部分、2階建の2階には負担も大きいけどその代わり見返りも大きいものを作れないかなって考えたんだよ」


 「「「ってことは‥‥」」」


 「うん。2階部分は希望する学園生だけを対象にする。1人毎月100G徴収するんだよ。

 この100Gに狂犬団がやってる購買やパン工房からの収益からも100Gを追加。

 さらに俺個人で主催してるアレク工房からも100Gを追加すると1人あたり300Gになるよね。

 単純に1階の3倍になるよ」


 「それは‥‥かなり増えるの」


 ジンさんが頭の中で計算をしながら応えた。


 「うん」


 「この2階もやっぱり原資から1割を対象者に給付すれば単純に1階の3倍の9,000Gが支給できるよね。だったらその人の生活は当面はなんとかなるはず。

 やっぱり何もなく健康に6年後に卒業できたら‥‥1年1,200G、6年後は7,200G返ってくる。いい卒業祝金にならねぇかな?



 今のところ俺が考えてるのはこんなとこなんだけど。やっぱガキの甘い考えかな?」


 「「「‥‥」」」





















 ガタッ!


 ガタッ!


 ガタッ!


 ガタガタガタガタッ!


 「「「アレク坊(アレク/アレク君)!」」」


 よかった。みんな概ね賛同してくれたよ。



 「俺はさ、この共済保険って形を帝都帝国で確立したらさ、その運営スタイルがそのまま大きな商売になると思うんだよね。

 アレク工房のこれまでのすべての商材を圧倒的に上回るくらいに。

 それこそ中原中にある冒険者ギルドや商業ギルドみたいに保険に特化した店を構えてね。


 金も1人1Gでも中原中から集めれば半端ない金額じゃん。その原資からの運営資金は1,000分の1どころか10,000分の1だってとんでもない金額になるよ。利益でいったら‥‥想像がつかないよ。

 

 人が幸せになれる手助けができてなお且つ中原1の組織、団体になれる。

 それって帝国が出来なきゃ‥‥他国ならまだ10年どころか1,00年かかる話になるよ。 

 俺でさえ考えてるんだから他の国でも誰かはきっと考えてると思うんだよな」











 「まずは民の正確な数字の把握じゃの。どうじゃアーサー帝?」


 「そうだな老師。こんな坊主にハッパかけられたまんまじゃ、初代、2代めゴリラのおやっさんたちに立つ瀬ねぇからよ」


 「「よう言ったアーサー!」」


 おぉ〜ゴリラ3兄弟揃いぶみだよ!


 「テメー!懲りねぇガキだなぁ」


 「痛い痛い痛いオヤジやめてよ!」



 「まずは帝都民の実数の把握から始めるか。

 それと‥‥ペイズリーさんは帝都騎士団員をまとめてくれませんか。テーラーさんは帝都所属の冒険者ギルド内をまとめてください。イーゼルさんは海軍内を。そしてアレクがやる学園内はノーツ学園長が。

 先行する学園をたたき台に、帝都騎士団、海軍、冒険者ギルドを。数年後には帝国内を正確な数字でまとめ上げ‥‥共済保険で平和的に中原制覇をしましょうか?」


 「「「おおーーー!」」」




 これが後々に帝国発の保険というカテゴリーで中原すべてを制覇することになっていくんだ。冒険者ギルド、商業ギルドの上部団体としてもね。



 

 【 6年10組side 】


 「も、もう‥‥やめて‥‥」


 「‥‥‥‥」


 「あれぇ。男のほうは死んだみたいだぞ」


 「猿人や蛇人の締めつけはハンパねぇからなギャハハハハ」


 「オンナ、まだまだ先は長いぜ。ひょっとしたら何日続くかわかんねぇけどなワハハハハハ」


 「まっ、最後はゴブリンにくれてやるんだけどな」


 ギャハハハハハ

 ゴフゴフゴフッ

 シャーシャー‥


 「おいおい猿、蛇。お前ら後の人のこと考えろよ。お前ら◯欲が強すぎるんだよワハハハハハ」



 ―――――――――――――――



 「ねぇあの3人今日も休みなの?」


 「1週間くらい休むのなんかしょっちゅうじゃん。ほっときなさいよ」


 「そりゃそっか」


 「そんなことより今日も走らなきゃパン買えないわよ」


 「私今日も2個ゲットするんだ」


 「私もよ!」



 ―――――――――――――――



 いつもご覧いただき、ありがとうございます!

「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。

 どうかおひとつ、ポチッとお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る