415 披露宴前日



 「優勝の狐仮面ハンス選手は前へ」


 「はい」


 ワーワーワーワーワーワー

 わーわーわーわーわーわー

 ワーワーワーワーワーワー



 武闘祭優勝の栄誉。

 と、その悲劇‥‥、


 その悲劇はメダルの贈呈式に起こったんだ。

 ご領主様からの記念メダルの贈呈に始まり、次から次へと各領からたくさんのメダルを首に掛けられた俺。


 (あっ、もちろんヴィンサンダー領からは何もなかったよ。予想してたとおりだけど)


 首から掛けられたメダルでジャラジャラ音がするくらいだよ。



 「南国のリゾート地常夏のワイハ領から記念メダルの贈呈です。


 では最後に常夏娘のお2人から記念メダルを狐仮面の首にかけていただきまーす」


 「おめでとう狐仮面」


 チュッ


 「おめでとう狐仮面」


 チュッ


 「あうあうあうあう‥‥」



 「これにて武闘祭にかかるすべての授与式は終了となりまーす。みんなありがとうねーーー」


 壇上での晴れやかなメダル贈呈式が終わった。これにて武闘祭は大団円‥‥って思うよね、ふつうは。

 でも。ビキニ仕様の面積の少ない衣とパレオを纏った常滑娘が2人して俺にメダルをかけてくれて、その上両頬からキスをしてくれたんだ。それから景色は一変したんだ。ピンク色?真っ赤な色?っていうやつ。えへへ。てかこれは興奮するなって言うほうが間違ってると思うな。



 カタカタカタカタカタカタカタ‥


 周りには小刻みに揺れる狐の仮面が笑ってるように見えたらしい。

 でもこのカタカタはこれから起こる異変を友(モーリス)に知らせてくれてたんだ。


 「マズい!トマス、ライルすぐ手伝ってくれ!」


 「「えっ??」」


 「狐仮面の裏に早く!」


 機転を効かせて咄嗟にモーリスたちが駆け寄ってくれたらしいんだけど‥‥


 もちろんそこからの記憶は俺には一切ない……。







 常夏娘の2人が俺にキスをしてくれた直後。1人の常夏娘が言ったんだ。


 「(ねぇ狐仮面の仮面から・・・)」



 ポタッ ポタッ ポタッ 




 ポタッ ポタッ ポタッ ポタッ‥‥




 ボタボタ ボタボタ ボタボタ ボタボタッッ





 ボタボタボタボタボタボタボタボタ‥



 「(えっ?!)」



 「「きゃーーっ!」」














 俺は仮面を被ったままで噴射していたのだった。


 ズドーーーーンッッ!


 そしてそのまま意識を無くして後ろ向きに卒倒する俺を支えてくれたのがトマスとライル。

 狐仮面を剥いでくれたのがモーリスだったらしい。


 受け身もなしに壇上から倒れるのも危険だったし、狐仮面をそのまま装着していても溺死の危険があったっていう。

 

 「こいつ‥やっぱりヘン‥‥」


 「えへへ えへへ‥」


 狐仮面を剥いだそこには、誰とも判別のつかない真っ赤な液体まみれの顔で嬉しそうに意識を手離していた俺がいたらしい。


 「「「どうしたんだ?」」」


 「「「大丈夫か狐仮面?」」」


 「「まさか俺の魔法(毒)が‥‥」」


 「ナダル、トマスそれは違う!

 まったく‥‥いや、ぜんぜん1セルテも気にしなくていい。こいつのコレはいつものことなんだ」


 「「はぁ?」」


 「女子に興奮して鼻血を出す狐仮面のお家芸さ‥‥」


 「「えっ?!お家芸?なんだよそれ?」」


 「「それって‥‥」」


 「ああ、巷ではこう言うな」








 「「「変態だ‥‥」」」




 ▼




 目が覚めたのは格闘場内にある医務室のベッドだった。

 目が覚めたら知らない壁‥‥うん、とってもよく起こる俺的異世界あるあるだ……。


 「あれ?どこだここ?俺はいったい‥‥?」


 「医務室だよバーカ」


 「あっ?!セーラさん‥‥ということは‥‥そういうことなんですね」


 「チッ。懲りねぇ奴だよなーおめーはよぉ」


 「さーせん!ご迷惑をおかけしました!」


 すぐにベッドから飛び起きてセーラさんの前で土下座謝罪をしたのでした……。


 セーラさん怖い……。



 「でみんなは?」


 「とっくに帰ったわ。みんな明日の夜を楽しみにしてるって」


 「そうなんだ。モーリスは?」


 「モーリスは明日の準備で忙しいって。アレクも目が覚めたら手伝えだって」


 「そうだった!俺もすぐに厨房に手伝いにいかなきゃ!」


 「セーラも明日の立食パーティーは出られるんだよね」


 「ええ。誰かさんがまた出血多量で倒れると危ないから参加してくれってモーリスからも頼まれたからね」


 「あははは‥‥」





 ▼




 「シェフお、おめでとうございます?」


 「シェフ‥‥おめでとうございます?」


 「シェフ‥‥ヒッ!お、おめでとうございます?」


 なんでだよこの異様な反応、摩訶不思議は言葉は!

 特に若いお城内の女子!なんだよ「ヒッ」って!


 「あーあ。またアレクの変態さが知れ渡ったわねクックック」


 「もういい。お家帰りたい‥‥」




 【 ロジャー、タイランド、テンプルside 】


 「面白かったのぉ狐仮面は」


 「ああ老師の言うとおりだワハハハハ」


 「でもよ結局あの馬鹿、火も水も土も金も風も全部見せちまいやがって。しかも雷まで見せたからなぁ。これでますます警戒されまくるぞ」


 「タイラー気にするでないわ。遅かれ早かれ、いずれは中原中に知られることじゃ」


 「まあそうだな」


 「けどよ鼻血はないな鼻血は。あのガキ‥‥」


 「「ああ(そうだな)‥‥」」




 【 ヴィンサンダー領主side 】


 「なんなんだあの狐仮面というのは!あんなのが学園にはゴロゴロいるのか!」


 「さすがにゴロゴロとはおりますまい」


 「それでもだ!あれだけ大口をたたいておったホセの息子など1回戦で消えおったではないか!恥ずかしい!」


 ダンダンダンッッ!


 感情も露わに地団駄を踏んで悔しがるヴィンサンダー領2代め領主シリウス・サンダー。


 「失笑だぞあれは!しかもどの諸候からも笑われたのだぞ!ホセ!ホセはどこじゃ!ホセ!ホセ!ホセーー!」




 【 ◯◯◯◯side 】


 まさか雷魔法を発現する者が現れるとはな。こんな辺鄙な所まで来た甲斐はあったな。

 帰ったら早速兄上に報告せねば‥‥。





 【 ○▲⬜︎side 】


 「戦略を練り直せねばなるまい」


 「ああ。人外の者がもう1人。一騎当千の者がもう1人増えたと考えねばなるまい」


 「「ああ‥‥」」



 ―――――――――――――――



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