261 カツ丼


 ついに、お米のデビューである。

 苦節10年、今日は待ち望んでいた白ご飯にありつける記念すべき日だ。米粉で作るお団子は食べたけど、最初に作る白ご飯メニュー、これはもちろん白ご飯がなくちゃ始まらない丼もの。

 丼にのっかったものといっしょに、ガツガツ食べたいんだよね。

(本当はコッケーの生卵をのっけたTKGの1択なんだけどね)



 今のダンジョンの中でできる最強の白ご飯料理。俺的にはカツ丼かカレー。カレーはまだ見つからない。

 となればこれはもちろんカツ丼1択だよね。

 ただ卵もないし、醤油もソースもない現状から作れるのは、塩カツ丼になるけど。それでもタマネギーはあるから絶対にうまいカツ丼ができるよ。


 肉はオーク肉。この世界では大人気の肉。赤身の輸入牛に近い味わいだけど、臭みもないし柔らかいから、俺も好きな魔獣肉なんだ。だから豚肉のカツ丼っていうより、牛カツ丼に近いかな。だから、俺的にはちょっと高級なイメージだよ。


 このオーク肉は厚めにカットしよう。分厚い上質の赤身肉のカツが炊きたての土鍋の白ご飯にのっかる牛カツ丼のイメージ。

 塩ダレには少しごま油を垂らしてあるから、匂いも食欲を唆るどんぶりになるよ。うんうん、我ながらイメージもバッチリ、上出来だよ。シンプルにして最強のカツ丼ができるに違いない!


 お米はブーリ隊の先輩たちを待っている間に、精米して水にも浸けてあるからすぐに炊き始められるしね。

 ダンジョン米は大粒でモッチリしている。ちょっぴり試食してみたけど、甘味もあって食味も最高だよ。「ダンジョンこしひかり」って名前がついたら、食味評価も特Aになるはずだよ。このダンジョン探索から帰ったら、さっそく水田を作って稲作をしなきゃな。



 よし、それじゃあイメージどおりに作るぞ!


 「いでよ竈門に1人土鍋!」


 ズーンッ ズーンッ ズーンッ ズーンッ!


 気合いも入ってるし、イメージも充分。だから土魔法でちゃんとした竈門と土鍋も発現したよ。1人2合炊き仕様の土鍋は、お焦げも美味しいはず。2合炊き仕様は多いかなって思ったけど、それでも足らなくなる恐れもあるよな。追加でもう1升炊いとこう。



 (ひそひそ。マリー、アレクは相変わらず無駄に魔力を使うの)


 (ひそひそ。いいんじゃないリズ。見てよあの嬉しそうな顔)


 ふふふ

 ふふふ





 「お待たせしました。今日はおコメを炊いた白ご飯の丼ものです。土鍋の底にあるお焦げも削ぎ落として食べてみてくださいね。カリカリした食感でお焦げも美味しいですよ。お代わりでお汁をもっとたくさんほしい人は『汁だく』って言ってくださいね。それとタマネギーも多めに入れてほしい人は『ネギだく』って言ってください。両方ほしい人は『汁だく・ネギだく』でーす」


 「「「はーいお母さん」」」


 だからお母さんじゃないって。


 「「「いただきまーす」」」


 みんな期待半分、不安半分。おそるおそるスプーンを口に入れる。






 「「「・・・う、う、ま〜い!」」」


 「こりゃ美味いな」

 「おコメ?白ご飯?それ自体はあんまり味がないんだね」

 「ああそうか、だから肉が余計に美味く感じるんだ」

 「お焦げも美味いの」

 「噛んでると甘みも出てくるわ」

 「魚にも合いそうだな」

 「腹持ちもよさそうだギャハハ」

 「俺、パンより好きかも」

 「これも戻ったら大ヒット間違いなしだね」

 「アレクが作ってくれた美味しいものの中でも1番美味しいです!」


 うんうん、口いっぱいにご飯を頬張ってみんな大喜びだ。



 「美味しいね」

 「本当、美味しいわ」


 精霊のシルフィとシンディにも小ちゃな小ちゃな土鍋を用意したんだ。基本妖精は、食べなくても大丈夫なんだけど、美味しいものは一緒に食べたいからね。妖精が見えないみんなからは、空中に浮かぶ小ちゃなスプーンや白ご飯が消えてなくなる様子が面白かったそうだよ。




 大絶賛の嵐になった白ご飯のデビュー。

 さすがに1人2合炊きの土鍋、お代わりは大食いのオニール先輩とゲージ先輩くらいかなって思ってたら‥‥


 「「「お代わりー、汁だく・ネギだくー」」」


 なんと、少食のリズ先輩以外、みんながお代わりをした。

 リズ先輩でさえ完食したんだ。


 「美味かったー」

 「もっと食いたいなぁ」

 「もうないの?」



 「「「アレクお母さん、ご馳走様!!」」」

 


 

 あーまた俺が食べるお代わりがなくなっちゃったよ。トホホ……。


 白ご飯の丼もの恐るべし!



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