156 武闘祭初日
「みんながんばるのよ!」
「「「はいっ!」」」
レベッカ寮長の激励を受け、俺たち男子寮生も学園の野外訓練場に向かった。
今日からいよいよ武闘祭が始まる。
訓練場はクラス分け試験でも使用した、観覧席には屋根もあるドーム球場みたいなところだ。
観覧席には学年、学級毎に生徒が集まっていた。
1組30人が10組、1学年300人。
これだけでも多いのに、これが6学年の総生徒数1800人!
こんなにもたくさんの生徒が一堂に会しているのだ。鳥になって上から見たらさぞかし壮観の一言だろうな。
「「「おーい、アレクこっちだー!」」」
「ダーリンこっちー」
声がするほうには、1年1組のいつもの仲間が集まっていた。
剣術2位のモーリス・ヴィヨルド(領主の次男)
同3位のモンク僧セロニアス
同4位の狼獣人ハンス
同5位の熊獣人トール
同6位のモーリスの執事?小姓のセバスチャン・ジャンリー
同7位の豹獣人シナモン
剣術の学年8傑の仲間(ハイルのみが10組なんだけどね)に加えて
魔法術2位の火魔法使いアリシア
同3位の風魔法使いキャロル
聖魔法士セーラ・ヴィクトリア
の仲間たちだ。
「みんながんばろうな」
「ああ(ええ)」
「この先も1組のままで過ごすんだからな」
「「「もちろんだよ」」」
やる気に満ちたみんなの顔つきも頼もしい。
「セーラもがんばれよ!」
「はい!アレクもね」
聖魔法士のセーラは聖魔法を発現できるだけに仲間を癒すサポート系魔法やアンデット系への攻撃魔法のみに優れているものだと思われがちだ。
実際、体術や剣術などの直接的な武力はほぼ皆無であることは、みんなで行った初心者ダンジョンで、チューラットに杖をえいえいと振り下ろしていたことからもよくわかる。
が、実は武闘祭のようなルールの中ではかなりいい成績になるのではなかろうか。
セーラが発現するバリアのような聖壁(ホーリガードという防御壁)。
だんだんと拡大する聖壁に対戦相手は、なす術なく後退を余儀なくされるだろう。これが武闘祭のルール『戦闘エリアからの離脱で敗退』に上手く適合するからである。
この武闘祭ルールでならセーラもかなり上までいくんだろうな。
俺もセーラと当たったときの対策を考えなきゃな。
「ダーリン、ウチは?ウチは?」
なぜか俺をダーリンと呼ぶシナモンが頭をぐりぐりとなすりつけながら俺に激励を催促する。
「おお、もちろんシナモンもがんばろうな!」
俺は妹のスザンヌたちにするようにガシガシと頭を撫でてあげた。
「がんばるにゃー!」
最初は密着されたらドキドキしたシナモンも、今ではアンナと同じでなんだか心配になる妹のスザンヌみたいなんだよな。
「ウチもダーリンのためにめっちゃ頑張るからね!」
シナモンがにぱーっと微笑んでいた。
2人のその様子を見て、なぜかハンスとトールが頭を抱えていたが。
「では1年生から訓練場に降りて、魔法衣を装着後、水晶玉の認証を受けてください」
いよいよだ。
「みんな手をここに」
俺は仲間を集めた。
円になってみんなの手を重ねる。
「10人の仲間でこのまま突っ走るぞ。いくぞー!」
「「「おおー!」」」
「じゃあ終わったら教室で」
「がんばれよー」
「またあとで」
「お前もな」
「がんばろうな」
訓練場の中に散っていく仲間たち。
訓練場で先生から渡された魔法衣(魔法着)を着て、水晶に手をかざした。
水晶玉には「123番」と表示された。
これが武闘祭中の俺の認識番号なんだろう。
変なところだけはすごく先進的なシステムなんだよな、この世界って‥。
手を水晶玉に翳すと、武闘祭開催中はなんとこれだけで、全体順位と学年順位が出るそうだ。
「120番206番はAコートへ。121番491番はBコートへ。122番‥」
うん、これは聞き逃さないようにしなきゃな。
「123番1007番はDコートへ。123番1007番はDコートへ。」
きたよきたよ、俺の番号が。
午前中の第1戦。
2年生の馬獣人の先輩とあたった。
背の高い馬獣人だ。
戦闘スタイルは武器を持たず、素手のようだ。足には木靴を履いている。
ならば。
俺も刀を置いて、素手になる。
「フッ。さすが1年首席だな。2年3組ブルーホースだ」
「1年1組アレクです。先輩、よろしくお願いします」
「ねーねーアレク、アレクー、どうする?どうする?」
風の精霊シルフィがワクワクしながら俺の周りを飛びまくっている。
もちろん、シルフィが見えるのは1800人いる中でマリー先輩だけだろう。
「最初から全力でいくよ。頼むよシルフィ!」
「わかったわアレク、最初から飛ばすのね!」
気合いを漲らせているのは俺もシルフィも一緒だ。2人で行くところまで行くだけだ!
シルフィが吠える。
「やるぞー!ギッタンギタンよー!」
(いやだから、ギッタンギタンって‥)
「では123番アレク君と1007番ブルーホース君。構えて」
武闘祭は審判を務めるのも教師だけだ。
「よーい、はじめ!」
ダン!
ビリっ!
「えっ?マジ?」
刹那の動き。組み合う前に相手の魔法衣(魔法着)を破った俺。
茫然としているブルーホース先輩だったが、すぐに納得したようだ。
「負けたよ。アレク君、この後も頑張ってくれよ」
「はい!ありがとうございました」
◯ 第1戦 2年1組 ブルーホース
体術。魔法着を破ってアレクの勝利。
まずは900人入りだ。
対戦後、魔水晶に手を翳して記録を取った。
「終わった子は教室に戻ってー」
午後に向けてゆっくりと過ごす。
「おつかれー」
「どうだった?」
「勝ったよ」
「どう?」
「勝ったわ」
仲間もみんな勝ったようだ。
第2戦からは教室待機。
呼び出しは拡声魔法が教室に流れる。
たわいもない話をしながら、それぞれの出番を待つ。
「123番123番‥」
「じゃあ行ってくるよ」
「「「アレクがんばれ!」」」
「ありがとう」
午後からの第2戦。
相手は人族の6年生、レイピアを手にする先輩だった。
「6年3組ジェームズだ。アレク君、よろしくな」
「1年1組アレクです。よろしくお願いします先輩」
「では123番アレク君と947番ジェームズ君。構えて」
「さあーじゃんじゃん行くわよー!」
シルフィが気合いを漲らせて吠えまくっている。
「はじめ!」
ダンッ!
先輩がレイピアを突いてくる。
ダンッ!
ダンダンッ!
踏み込みも強く、俺も疾く突く。
レイピアの先輩が刺突の構えから突いてくる動作に合わせて、俺も木刀を正中真っ直ぐに突いた。
ドンッ!
尻餅をつく先輩。
魔法衣が瞬時に紫色に変わった。
「あいたたッ」
苦痛に顔を歪めながら、右肩あたりを摩る先輩。
「先輩大丈夫ですか?」
「あ、ああ大丈夫。ちょっぴり痛いけどただの打撲だよ。木刀でこれだからな、真剣だったら今ごろは終わってるよ」
両手を上げてジェームズ先輩が言った。
でもこの魔法衣(魔法着)、ガード力もすごいんだな。
「先輩ありがとうございました」
◯ 第2戦 6年3組ジェームズ
剣術、魔法着を紫色にしてのアレク勝利。
450人入りだ。
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