128 ヴィンランド冒険者ギルド

128冒険者ギルド



今日は午後から冒険者ギルドへ行った。

まだヴィヨルドに来てから行ってなかったし、学園ダンジョン以外にもダンジョンに潜ってみたいからその情報収集というのも理由だ。

当たり前だが、魔獣との戦闘が避けられないダンジョンにも入場制限が存在する。少なくとも青銅級(5級)は単独ではどこのダンジョンにも入れない。

資格も申請もなく入れるのは学園生だけが入れる学園ダンジョンだけだ。

多くのダンジョンは鉄級(3級)から単独入場が可能だ。


「こんにちはーヴィンサンダー領から領都学園に来たアレクと言います。今日は挨拶に来ました。これからよろしくお願いします」


「はい、ちょっと待つニャ」


とってもかわいい獣人受付嬢がいた。

ウサギ獣人さん?猫系じゃないけど、可愛いから「にゃ」言葉も許そう。


「ん?ヴィンサンダー領のギルド?ああ、聞いてるわ、あなたがアレク君ね。私が代わるわ」


うさぎ獣人さんからバトンタッチしたのはやっぱりマリナさんと同じヒューマンのベテランお姉さんだった‥。

美人さんなんだけどね。


「ヴィンサンダー領のマリナさんから聞いてるわ。ヒロコよ。私がここでのアレク君の担当だからね」


「はい‥綺麗なヒロコお姉さん、よろしくお願いします(あーあざといわ。ぜったいバレバレだわーこの言い方)」


「まっ!アレク君は正直な子ね!今度からはヒロコお姉さんに何でも聞きなさいね」


満面の笑みで俺に答えるヒロコさん。


チョロ!


「ぷークククッ」


聞き耳を立てていたうさぎ獣人の受付嬢が笑いを噛み殺していた。


「ヒロコさん、俺あとどのくらいで鉄級(3級)になれる?」


魔水晶に触れながらこう聞く俺。


「へぇーアレク君、あなた子どもなのにかなり強いわね」


魔水晶に現れる数値を見ながらヒロコさんが感嘆の声を上げる。


「今度初級者ダンジョンでいいから行ったら。多めに魔物を狩ってきたら鉄級よ」


「へーそうなんだ」


初級者ダンジョン、又は初心者ダンジョン(初級ダンジョン)は、冒険者になりたての者が行く練習用のダンジョンだ。


「弱い魔物でもいいからたくさん狩って、魔石をもってらっしゃい。学園の1年生で鉄級は聞いたことないわ。アレク君すごいね!」


「あはは」


褒められるのは正直嬉しいぞ。


「ただ魔の森には1人で入ってはダメよ。あそこは獣人の冒険者でも単独では入らないから」


「うん」


「そうそう、マリナさんから言われてたわ。こっちのギルド長を紹介するわね。あと顧問も紹介してあげてって言われてるんだけどまた今度ね。何せいつ来るのかぜんぜんわかんない人だから」


「はーい」


そうか、もうすぐ鉄級(3級)になれるのか。

一角うさぎもチリも積もればだな。


と。

ここで副ギルド長と言われる男が話に割り込んできた。


「おい、ヒロコ君。ルールはちゃんと守らないとダメだぞ」


「はい?サーマル副ギルド長、何か?」


「聞いてたら鉄級って言うじゃないか。こんな子どもが鉄級になんぞなれるものか。ヴィンサンダー領のギルドはどんな嘘をついてるんだ」


ブツブツ言いながらサーマル副ギルド長と言われた男が俺に食ってかかる。


「キミね、親が幾らか積んだのかい?でもヴィンサンダーと違ってヴィヨルドでは嘘無しでちゃんと審査するよ。子どもといえど今度来たときは試させてもらうからね」


ブツブツと言い続けるサーマル副ギルド長。

さも親がお金を積んでランクアップをしたんだと決めつける副ギルド長。

そしてそのランクアップの真偽を試すべく、次回は鉄級冒険者と模擬戦をするという。

悪目立ちはしたくないし、俺はまだ赤銅級だと言いたかったが、このサーマル副ギルド長の言い方はどうかと思った俺は言い返した。


「俺が嘘をついてるかどうか。副ギルド長、試してもらうのは今からでもいいですよ」


「何!子どもが何を偉そうに!私に口ごたえするのか!」


急に声を荒げるサーマル副ギルド長。


「私はヴィンランドの副ギルド長だぞ!それをどこの骨とも知らない子どもが!」


(えー。これはギルドテンプレでもあんまり知らないパターンだよ)


「おい、誰かすぐに鉄級の冒険者を。ああフォックスを、フォックスがいい。奴を訓練所に連れてこい!」


うさぎ獣人の受付嬢が何処かへ小走りで向かった。


「子どもといえど嘘はいかんよ、嘘は。しかも、仮にも私はヴィンランドギルドの副ギルド長だよ(さっき自分で言ってるから知ってるよ!)キミ、ちょっと反省しようか?」


「反省?」


「今ならまだちゃんと土下座して謝ったら許してあげるよ」


「いえ、結構です」


「口の減らない子どもだな!」


1人でヒートアップしている副ギルド長だ。

俺としてはあまりいい気分ではない。

だって冒険者ギルドには単に挨拶に来ただけだから。

ところが、ひょんなことからトラブルとになった。

てか、サーマル副ギルド長の1人相撲なんだけど。


「ちょっとアレク君大丈夫だよね?本当に大丈夫だよね?」


ハラハラしながら小さな声でこう言う受付嬢のヒロコさん。


「ネチネチ言うのも問題なんだけど、あのサーマル、一応副ギルド長なんだよね。困ったわ。こんな時に限ってギルド長も居ないし‥」


「ヒロコさん大丈夫ですよ。嘘をついたかどうか、試してもらえばいいんだから俺は気にしてませんよ」



と。

まるでチンピラのように肩を怒らせてギルドに入ってきた男が、挨拶もなくいきなり凄んできた。


「てめーか、鉄級だと嘘ついたガキは。サーマル副ギルド長様に楯突くには10年早えーよ、ガキ!」


そーだそーだ!

アニキの言うとおりだ!


現れたのは、ひょろっとした背丈にいかにも疑り深そうな目つきをした狐獣人の男だった。しかも後ろには同じような狐獣人が2人付き従っている。弟?舎弟?


「来たわ、サーマルの腰巾着が」


ヒロコさんが呟いた。


ざわざわ

ざわざわ


いつしか、冒険者ギルド内で注目の的になっているし。



「てめー金でランクアップしたって?ふてーガキだな。親の顔が見てーわ。ヴィンサンダーで通っても、ヴィンランドでは子どもだろうと嘘は容赦しねーからな。でも今なら土下座して謝ったら許してやるぞ?」


どこに行ってもこんな輩は出てくる。本当に嫌になるよ。


「俺は謝らないよ。だいたい拳で語るのが冒険者ギルドでしょ」


「かー、ホントに頭にくるガキだなテメー」


ほんとだー!

このくそガキー!


こだまのように後ろの2人の狐獣人も文句を言う。


「土下座して謝ったら許してやろうと思ったが身体でわからせる必要があるみたいだな。訓練所に来い!」



「おいおい、なにかおもしろそうなことが始まるのか」


「あっ、ロジャー顧問!」


そこに現れたのは長身でゴリゴリの筋肉質の男。

顔から見る歳は初老くらい?

でも首太っ!

筋肉ダルマみたい。レベッカさんに体格は似てるんだけどまるで‥そうボス猿。ボス猿だよ!


「ロジャー顧問、どうにかしてください!」


ヒロコさんが必死に状況を手短に説明する。


「えーと坊主、名前は?」


「アレクです」


「ヴィンサンダー領から来たアレクはどうしたい?」


「俺は模擬戦でもぜんぜん構いません。だいたい嘘なんてついてませんから」


「模擬戦OKか。ガハハ。男の子はそうでなくっちゃな」


「よし、俺が見届けてやる。ヒロコもついて来い」




冒険者ギルド奥の訓練所に向かう際、ロジャー顧問が受付嬢のヒロコにこっそり告げた。


「ヒロコ、心配しなくていいぞ。あの坊主のことはサウザニアのグレンからも聞いてるからな」


こうして俺はヴィンランド冒険者ギルドの訓練所で模擬戦をすることになった。



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