061 グランフラー


 「すいませーん。薬草採ってきましたー。お願いしまーす」


 「なんだ坊主、初めてか。わりーが今忙しくてなー。名前書いてそこらへんに置いといてくれ」



 薬草を採ってきた。

 村育ち、医者も居ない、薬屋さんも無い田舎育ちの俺は薬草の類いはその種類も採取場所も必要な部位も余裕でわかるのだ。なので近郊で採取した薬草をギルド裏の解体場に納めに行ったのだが、広い解体場には体格の良い汗だくのおっさんが1人だけだった。


 だらだらと汗が流れ落ちているおっさん‥。しかもこのおっさん本当にてんてこまいの忙しさのようだ。


 てかなんで広い解体場に1人なの?

 いくらおっさんでもなんだかかわいそうになってきた。


 「あのーよかったら俺手伝いましょうか?」


 「えっ?坊主お前解体できんのか?」


「はい俺田舎育ちなんで解体はふつうにやります。ただデカい魔獣には背が届かないのと力がないのでデカいのは解体できませんけどそれでよければ?」


 「そうか!ありがてぇーや。じゃあできるやつだけでも適当にやっつけてくれるか?」


 「はい。じゃあお聞きしながらやりますね?あっ、俺アレクです。デニーホッパー村から教会学校に通ってます。冒険者になりたてです」


 「アレクか。おぉー今話題のデニーホッパー村だな。俺は解体専門のグレンフラーだ。さっそく頼むわアレク」


 「はい、よろしくお願いします。え〜っとグレンさん。では‥‥」


 俺は中に入って中型サイズまでの魔獣の解体に取りかかった。もちろん魔石は傷つけず、肉は部位に分けてだ。

 感覚で言えば、釣ってきた魚を捌く料理好きな人って感じ。

 俺はニャンタおじさんに仕込まれたおかげもあってサクサク解体していく。我ながらけっこうプロ級に上手いと思う。


 「グレンさん鮮度のイマイチな肉はまとめてこっちでいいですよね?鮮度のいい肉はこっちにまとめてでいいですよね?それと魔石はこっちに置いときますよ」


 「ああ、もちろんだ。アレクお前解体がけっこう上手いなー!早くてキレイだわ!猟師の倅か?」


 「あはは。違うんですけどね。ただ田舎で食べものにも困ってますから魔獣も無駄なく食べなきゃってことで解体を覚えました」


 「そうか!今日はうちの若いもんが2人急遽他所のギルドに応援に行っちまってな。こんなときに限っててんてこまいよ。お前がいてくれてめちゃくちゃ助かるわ。ガハハ」


 「あはは‥‥それはよかったです」


 「お前がよかったら毎日手伝いに来てくれや。金は出せんけどな。ワハハ」


 「いやいやそれは‥」


 そんな感じで帰るに帰れない俺は半日あまりを解体場のグレンフラーさんを手伝ったのだった。


 「アレク!遊んでて遅くなったな!」


 「あはは‥‥師匠すいません」


 結果遅くなってしまい、師匠に叩かれまくったのはいうまでもない‥。




 ▼




 「オギャーオギャー」


 弟が産まれた。名をヨハンという。

 俺にはスザンヌに次いで2人めの兄弟だ。

 泣き声も元気があるなあ。


 「スザンヌ、弟ができたんだからいつまでも泣いてちゃだめだからなー」


 「わかった。スザンヌもう泣かないよ!お姉ちゃんだからね」


 おおースザンヌ。しっかりお姉ちゃんになって。お兄ちゃんはうれしいぞ!


 ヨハンはマリア母さん似の目がくりくりとしたかわいい子だ。キャッキャと笑っていることが多いが、赤ちゃんらしくときどき大声で泣いた。その泣き声がするたびに、俺はヨハンを抱っこしてあやした。


 ヨハンは抱っこで機嫌が良くなるようですぐに泣き止んでくれるのだが、俺がヨハンに構い過ぎるのが気にかかるのか、ときどきスザンヌの機嫌が悪くなる。なので俺は2人平等にあやしたりした。

 妹もかわいいけど、弟もかわいいなあ。

 

 (俺にも昔かわいい弟がいたんだけど。アイツは今ごろ‥)


 そんなこんなで学校から帰ったら出来るだけ、ヨハンを(スザンヌも)あやしている俺だ。



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