041 シャーリー


 ザーーーーー


 外で剣を振っていたら雨が降ってきた。けっこう強い雨だ。

 ただ西の空は明るいのでしばらく待てば止むだろう。

 急な雨に今日の修練は終了してよいと師匠が言う。なのでシスターに本を借りて教室で読むことにした。知識も必要だからね。

 放課後の教室ではシャーリーが1人勉強をしていた。

 シャーリーは肩までに伸びた金色の髪もきれいな、落ち着いた雰囲気を持つ美少女だ。

 教会学校で唯一水魔法の使えるシャーリーは汚れたみんなの手を洗ってくれたりと先日のバザーでも活躍してくれた。


 「シャーリー、おっすー」

 「おっすーアレク君。どうしたの?」

 「ああ雨だから剣も振れないしさ。止むまで本を読もうかと思ってね」

 「そっかー」

 「シャーリー、頭が良いのにまだ勉強するのか!」

 「良くないよー。わたしこの教会学校を卒業したら領都の教会学校に行きたいんだよね。

 できたらその後の王都学園にも行きたいし。だからまだまだぜんぜん勉強し足りないよ。

 わたしより頭もいいし、なんでもできるアレク君のほうがぜんぜんすごいじゃん!」

 「そんなことないぞ。ちゃんと将来を考えてるシャーリーのほうがすげぇよ」

 「違うよー。でもアレク君将来は何するの?」

 「俺?お、俺は農民だし、まだまだ力も何もないし‥」

 「わたしもただの農民の娘だよ。開拓村デニーホッパー村の農民の娘。

 それでも努力をすれば道は開けるって、ディル神父様もシスターナターシャも言ってくれたし」

 「ああそうだよな。俺たちまだまだだよな。いっぱい努力しなきゃダメだよな」

 「そうね。お互い頑張ろうねー!」

 「ああ」


 目標にむけて努力し続けているシャーリーが輝いてみえた。俺もシャーリーを見習ってますますがんばらなきゃな。


 「それはそうとシャーリー、水魔法はどこまで使えるんだ?」

 「わたし?わたしはまだLevel2までだよ」

 「えっ!?すげぇな」

 「もうすぐLevel3にいけそうなんだ」

 「マジか!?」

 「うん」


 多くの魔法はLevel1からLevel5までに分類される。一般に生活魔法と呼ばれるものはLevel1。これでさえ発現する者は10〜20人に1人だ。

 これ以降Levelが1上がる毎に飛躍的に難易度が増す。

 Level3の魔法を常時発現できれば、その魔法のみで職を成すといわれる。

 攻撃魔法と呼ばれるものはLevel2から。


 シャーリーが発現できる水魔法の場合


 Level1:生活魔法。水を出せる、物質を凍らせる等。

 Level2:ウォーターボール、ウォーターヒールなど。

 Level3:アイスバーン、アイスロック、アイスガーデン等。

 Level4:ボイリングスプラッシュ、タイフーン他。

 Level5:ストーム他天災級魔法。


 水魔法のLevel3は地面を凍らせたり、氷柱や氷の礫での攻撃、ヒールに水を付加したもの等幅広いものがある。発現者のオリジナルとされる魔法はLevel3から。


 「わたし魔力の総量が少ないからLevel3は発現できる回数もまだまだ少ないんだよね」

 「そうなのか。でもLevel3を使えるってだけでもすごいよな」

 「えへへ」

 「シャーリー俺も水魔法を使いたい!

 発現のやり方とか教えてくれよ」

 「アレク君ジャンから聞いたよー。火も土も金もつかえるようになったんだってね!トリプルじゃん!そんなの天才級なんだよ!」

 「いや、俺ただの農民の子どもだし。しかも使えるって言っても生活魔法だけだけどな」

 「アレク君も頑張ってるんだね!」

 「ああ農民の俺は努力するしかないからな」


 ウフフフフ

 ハハハハハ


 「わたしのいつもやってる練習法でよかったら教えるね」

 「シャーリーありがとな」


 ◎シャーリー式水魔法練習法


 水を入れた桶にゆっくり手を出し入れする。指先から滴り落ちる水のイメージを焼き付ける。

 「ウォーター」と詠唱。

 指先から水が出る。

 ウォーターができたら、桶の表面に手を翳し水流を作ったり凍らせたり沸騰させたりする。


 この日の夜から俺は水魔法の修練も始めた。



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