030 火

 初めて習得できた魔力の発現、突貫。これに気を良くした俺は毎日突貫の練習を続けた。

 かけ声(=詠唱)は「よーい、どん」でも「突貫」でもどちらでも変わらなかった。呟くような小さな声で言った「突貫」でも発動した。

 歌うようにリズムをつけた「♪よーい、どん♪」でも発現した。

 いずれは無詠唱で発現できるようになりたい。

 今はこの発展型として、連続で突貫ができれば移動も速くなるんじゃなかろうかと考えている。

 が、その前に転けずに走り続けることができる足腰の強さも大事だとも思う。だって突貫の前後は転けそうになるからね。何事もひたすら練習あるのみだ。




 ▼




 俺の次なる目標は生活魔法を使えるようになることだ。

 まずはマリア母さんが使える火の生活魔法を覚えたい。


 「母さん、ファイアを見せて」

 「いきなり変なことを言うのねアレクちゃんは」


 そうは言いつつマリア母さんは「ファイア」と小さく唱えつつ右手人差し指の先を胸の前あたりに掲げた。


 シュボッ!


 すると、いつも台所で灯すような火が指先から点される。まさに指先チャッ◯マンだ。


 「すげえーー!」


 マリア母さんの指先をマジマジと見つめる俺。


 「そんなに見られるとなんか照れるわね」

 「母さん、俺もファイアを使いたい。どうすればいい?」

 「う〜ん。本来は火魔法のスキルがある人にしか発現しないんだけどねー。アレクちゃんは努力家だからやり続けたらできるかもよ」

 「うんうん」

 「あんまり近寄ったら火傷するわよ」

 「はーい」

 「とにかくイメージが大事よ。竈門に火を焚べるイメージでファイアって唱えるの」


 あーやっぱり魔法の発現にイメージ作りは不可欠なんだな。よし。


 「わかったマリア母さん。やってみるね」

 (100円ライターをイメージしてっと…)


 「ファイア!」


 シュボッ!


 指先から火が出た。







 「「・・・ええ〜っ!!??」」

 「ア、アレクちゃん…」

 「できちゃった…」


 なんと一発チャッ◯マンだった。これには俺も驚いたしマリア母さんも絶句していた。


 「やったー!マリア母さんありがとう!」


 これでどこでも火がおこせる。冒険者への道にも一歩近づいたと喜んでいたのだが…。


 「アレク、母さんから聞いたぞ。ファイアが発現できたんだってな。すごいぞ!だけどな‥」

 「アレクちゃん本当にすごいわ!だけどね‥」

 「「絶対ダメよ(だ)」」


 両親からは室内での使用をきつく禁止された。やはり子供の火遊びは危険なんだろうな。




 ―――――――――――――――




 いつもご覧いただき、ありがとうございます!

 「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。

どうかおひとつ、ポチッとお願いします! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る