第9話 位置じゃ!

 ボクは祖父と母が好きだ。

 その二人にチンポの話を聞かれてしまった。

 ど、どう思われてしまったのだろうか?


「ステラ。あなたの前世は英雄かもしれないけど、今は私の娘よ。だから遠慮なく説教もします。女の子がチンポチンポと大声で連呼するものじゃありません。はしたいない!」


「分かった……次からは上品に〝お〟をつけるよ。おチンポって言うよ」


「そういう問題でもないの! ねえステラ。もうあなたは女の子なのよ。それは受け入れるべきよ。アレを生やしたら……男でも女でもなくなるわ。公衆浴場でどっちの湯に入るつもり!?」


「そこは抜かりないよ。脱着式にするつもりだから。必要に応じてつけたり外したりできるようにする。夏場に蒸れたら、洗って干せるんだ」


「ふざけてるの!?」


「ふ、ふざけてないよ……洗って干せるのは絶対に便利だよ!」


 ボクがそう主張すると。


「分かる!」


 祖父が大声で同意してくれた。


「ワシも男じゃ。なにもかも分かる。確かに、蒸れたときは取り外して洗いたいくらいは思う。それだけでなくチンポジが定まらないときも、外して鞄に入れておきたい!」


「分かる!」


 ボクは頷き返した。


「……チンポジってなに?」


 ところが母は分かってくれない。


「チンチンのポジションじゃよ! 位置じゃ! これがいい感じに定まらんと落ち着かないのじゃ!」


「へえ……」


 母はあまり興味がなさそうだ。

 しかしルルガは耳をピコピコさせながら「ほほう! チンポジとはそういうものでありますか!」と興味深げだ。

 同じ女性でも違うらしい。


「童貞のまま死んだ無念も分かる。転生してまで童貞を捨てようとした執念には感服する……! ワシはそれを応援したい。脱着式のチンチン……素晴らしい発想じゃ!」


「お、お爺様……」


 ボクの全てを知っても、この人は肯定してくれた。

 自分でも驚くくらい嬉しかった。

 だから心の底から敬意を込めて「お爺様」と呼ぶ。


「はあ……分かったわ。あなたたちにとって、それだけアレは大切なのね。けれど、娘がつねにアレをぶら下げてるのは嫌だわ。私の前では外してちょうだい。それが条件よ」


「分かったよ、お母様。ボクのチンポ探しを認めてくれて、本当にありがとう」


 初めて生まれた娘がアレを生やそうとしているのを認める。それはかなり勇気ある選択だと思う。

 お爺様と同じく、お母様にも敬意を抱く。


 ああ。ボクは家族に恵まれた。素敵なペットとも出会った。

 この出会いとアレさえあれば、あとはなにもいらない。

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