第28話 道中にて(その5)
「しかし、先ほどコウさんも言ってましたが、魔物には酸素が無くても動けるものがいる。何も食べなくても生きていられる個体さえいる。というか普通動物は自分の生存が脅かされるか、捕食する以外は他者を襲ったりしませんよね。なんで魔物や魔獣は有無を言わさず人間を襲うんでしょう?」コルビーはクニオになんで勇者と戦うのかを問われてから、色々と考え込むことが多くなった。
「確かに不思議だよね。魔物や魔獣を倒すことで経験値が上がってレベルアップするし、ジョブランクも上がる。死骸が素材として使えるのは動物も似ているけども、冒険者にはそれで生計がたてられるぐらいに有用だからね。敵の様でいて人間にとっては都合がよすぎる存在だよ。資源といってもおかしくないぐらいだ」こういう話はコウやグレゴリーは全く取り合ってくれないので、クニオはコルビーとこの手の話ができるのがうれしい。
紹介してもらった研ぎ師の工房は、キートの中心部から南側にあるとのことで、クスから向かうにはおあつらえ向きの場所だった。もちろん今では半分目的地になってしまったキートの中心部に行くにしても、先に研ぎ師の所に寄ることになる。
ヒュドラを倒した道と回り道が合流する場所を過ぎてから、野宿を経てまる一日進んだぐらいでようやく開けた場所に出た。あと数キロ進めば目的地というところまで進んで、4人は道沿いに見つけた茶屋に立ち寄ることにした。日よけの布地が張られた店先で、長椅子に腰掛けて緑茶を飲みながらまんじゅうを食べていた。
「この緑茶というやつには、甘いものが必須だね。どっちもうまいはうまいけど、ふたつ揃って完成形という感じだ」コウはそれまでも、道沿いに茶屋を見つける度に寄っていこうとうるさかった。ハポンに来てからパーティーの移動速度が上がらない大きな原因はこの寄り道だった。普通酒好きと言えば甘いものが苦手だと相場は決まっているが、コウには当てはまらないらしい。
「この茶屋という場所の、半屋外に椅子を置いて休憩するという習慣は面白いですね。道行く人を眺めていると飽きることが無い」コルビーも茶屋を気にってるようだ。
「拙僧は甘いものは苦手なんですが、この緑茶というものと一緒だと全然いけますな」そういってグレゴリーはまたガハハと笑う。
そうか急ぐ必要もないのだから、茶屋の記録もガイド本に書き足そうとクニオは考えてスケッチを始めた。クニオは冒険者としては半人前だった頃から、絵を描く特技を生かして各地のガイド本やダンジョンのマップなどを描くことを副業としてきた。今は冒険者としてだけでも生計を立てて行けるぐらいにはなったが、読んで喜んでくれる人がいるので、今後もずっと続けて行こうと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます