異世界建築士の弟子

ハポンの酒場にて

第19話 ハポンの酒場にて(その1)

 その夜もクニオが所属する冒険者パーティー「キュリオシティーズ」の四人は当然のように町の酒場にいた。


「クニオ、ここの日本酒もたまらなくおいしいな。クニオが言った通り、場所によって味が全然違う。ここのやつはすっきりとして透明感がある」コウはすでにいい感じで酔っぱらっている。彼女の職業はレアジョブといわれる風水師だ。見た目は少女の様だが年齢不詳のエルフで、その膨大な経験値からチートとも言える実力を秘めている。無類の酒好きでもある。


「材料だけでなく、蒸留酒よりも醸造酒の方がその土地の水で大きく味が左右されるからね。また醸造場所にはそれぞれ固有の酵母がいて、発酵に影響するとも言われてるよ」クニオが説明する。


「なんだかよく分からないけども、これは当分楽しめそうだな。ゆっくり行こう」そう言ってコウは目の前の器に入った日本酒を飲み干す。


「やはりコル殿のいう通り徒歩移動にして正解でしたな」この声も体も大きな男の名はグレゴリー。いつものようにガハハと笑っている。職業は彼もまたレアジョブの破戒僧だ。僧という割には回復魔法はあまり得意ではない。死者の蘇生もできない。戦い方も武器を使わない肉弾戦を得意としている。見た目的には戦士か格闘家と言った方がしっくりくる。


 コルと呼ばれているのはコウよりさらに歳下に見える男の子だ。本名はコルビー。彼はコウと違っておとなしくアルコール分のない米の発酵飲料を飲んでいた。酒の話を中心とした会話には加わらずに、店のメニューを食い入るように見つめている。


 いつものように楽し気に過ごしている4人を、先ほどから少し離れたテーブルに座っている男がちらちらと見ている。


「この店は子供のたまり場かよ。酒場に子供連れてくるんじゃねーよ」男はわざとこちらに聞こえるように大きな声で叫んでいる。それを聞いてグレゴリーが立ち上がろうとすると、コウがそれを制止した。


「私とコルは子供に見えるからまぁ仕方ないよ。あんなの放っておいたらいい。言いたいことは分からなくもないし…」グレゴリーは少し不満気な顔であったが、コウの言葉に従って座り直した。そうして一拍置いて

「まぁ弱い犬ほどよく吠えるといいますからな」そう言ってガハハと笑った。

「あーあ、こっちから行かなくても、向こうから来ちゃうなこれは…」コウは軽くため息をついた。

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