当たり

「映画、面白かったね」

「そうやね、楽しかった」


 パパと映画館の表の通りを渡る。

 歩行者信号は、青い色。


「パパ? お店入ってイイかな?」

「駄菓子か? ええよ」


 通りを挟んだ小道の角の雑居ビル。

 一階に小さな駄菓子屋さんが有った。


「でもな? お母ちゃんにはナイショやで?」

「内緒ね。わかった」


 お母さんは私が買い食いをすると、あまりイイ顔をしない。


 パパは違う。

 むしろ喜んでいるぐらい。


 パパは満点だ。


「わたし、これ買う」

「ガムか? 歯磨き、するんやで」

「パパ、選んで」

「ボクが選んでええの?」


 パパが当たり付きのガムを、一つ指差した。


「これが、ええで」


 私はもちろん、それを買う。


「当たりだ!」

「当たりやね」


 パパはここでも満点だ。


「ほんま、神さんに好かれてるわ。重たいなぁ」


 そう言ってニカッと笑った。

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