No.6

「上手くいかないなんて誰にだってあるだろ。お前の場合、人よりもそういった事に責任を感じるもんな。だから、思うように出来ない自分に対して自己嫌悪するんだろ、だけどそれが何だって言うんだよ。それで自分の生き方をねじ曲げる必要があるのか、」

堰を切ったように、フジは一気に喋った。今すぐここから逃げ出したかった。フジの言った事は、今まで僕が幾度となく辿り着いた事だ。今更そんな事、言われたくもない。

「生きづらいなら、そんなん捨てたって良いだろ。変な意地に拘る必要なんて…、」

「うるさいよ。」

フジの言葉を遮り、僕は吐き捨てた。自分の事だ。そんな事、僕が一番分かっている。

「フジに、僕の事なんか、分からないよ。」

フジみたいに、何でも要領良くこなす奴なんかには、きっと分からない。フジにだけは言われたくない事だった。今更、僕はフジと会った事を後悔した。僕はフジに何を求めたのだろう。優しくされたかったのか。同情されたかったのか。フジと会えば、こうなる事なんて分かりきっていたはずなのに。

「死にたいとか、言うなよ。」

唐突にフジは言う。何の事だか、僕には分からなかった。僕は死にたいだなんて、一言も言っていない。僕はフジの心中を計れずにいた。

「俺はお前とバンドがやりたいんだ。」

僕の目を真っ向から見て、フジは言った。

「俺はお前の歌が好きなんだ。」

居たたまれなくなった僕は、帰ると一言告げ、居酒屋を出た。フジは引き止める事はしなかった。

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