第84話 チートで瞬時に問題解決する
結論から言う。
コボルト種が執拗にリザード種を攻撃し続ける理由。
それは奴隷として虐げられている同胞を救出する事にあった。
「ガッヴァ! キチュヴィヴィ!!
…失礼しました。
突然の事で取り乱してしまいました。」
俺が推測を語ると、ヴァーヴァン主席は一瞬だけ激昂してからすぐに理性を取り戻した。
「しかし!
伯爵チート様。
誓って申し上げますが、我々はコボルト種を奴隷になどしておりません!
そもそも彼らは我々などより遥かに剽悍な種族で、捕獲なんて出来る訳がないんです!」
言い分は理解出る。
周囲のリザード達も非難がましい目で俺を見ている。
だが、聞こえたのだ。
対岸の敵陣からコボルト達の怒りの声が
【虜囚の同胞を救出せねば!】
【トカゲ共許さんぞ! 我らの同胞を奴隷として使役するなどと!】
【この河を越えて同胞を解放する!】
『遠吠えの雰囲気から探知したことですが…』
同船の皆がうんうん頷く。
『あくまで声色からの分析なのですが…』
コボルト種は《同胞の解放》を決意しております。』
「いや、同胞と言われましても!」
主席の隣に立っていた老リザードが思わず声を上げた。
周囲に窘められ黙り込んでしまう。
『コボルトの友好種族や隣接種族は、リザードの皆さんの勢力圏におりますか?』
「いや!
友好種ぞ…
そりゃあ、犬くらいなら街に幾らでも…」
『私はまだコボルト種を見た事は無いのですが…
犬頭の種族なんですよね?』
「…え? いや。 まあ。
いえ! 伯爵チート!?
ひょっとして…」
うん。
これ、全く俺の妄想なんだけどさ。
到着して3分で出した仮説で恐縮なんだけどさ。
コボルトは《同胞である犬》を救出する為に攻めて来てるんじゃない?
「キュリュヴィ… ディ・ヴァ―――ダ…」
ヴァーヴァン主席は母語で独り言を繰り返している。
何かを思案している様子だったので、俺はおとなしくしている。
若手の武官っぽい雰囲気のリザードが俺に駆け寄って来て、ソファを勧めながら俺に事情を教えてくれる。
「御指摘の通り、我々は狩猟補助や探査を目的に犬を飼育しております。」
俺は『人間種もそうですよ』とだけ切り返しておく。
30分ほど主席と側近たちが早口のリザード語で議論しており、やがて散開した。
「伯爵チート様。
犬を…
試しに送り届けてみます。
それで…
危険は多いのですが…」
ヴァーヴァン主席は申し訳なさそうにこちらを覗き込む。
『主席閣下、御安心下さい。
私もこの船で最後まで分析を続けます。
万が一があったとしても、あくまで私から申し出た事であり
リザードの皆様には何の落ち度もありません。』
ドランが力強く頷く。
この人とクレアは別船で後方に下がる事になった。
「チート、行けるんだな?」
『自信あります。
多分、諸問題は解決するでしょう。』
「オマエが言うなら大丈夫だろうww」
「もしチート君が死んでも格好良く遺影を描いてあげるからね♪」
『鼻を小鼻に描いておいてくれ。』
一同が笑って、話は終わる。
大丈夫。
ゴミ処理場でチンピラに絡まれていた頃に比べれば楽勝の状況だ。
2時間ほど経過し、数十匹の犬が用意される。
主席曰く、飼い主に可愛がられて懐いている犬ばかりを集めたらしい。
これらを綺麗な小舟に載せ、コボルトの陣まで接近する。
船頭はリザード軍元帥の嫡男であるヴェギータが務める。
他にも決死の有志3名。
無論、俺も小舟に同乗する。
ヴェギータもカタコトのグランバルド語を話せるので、船がコボルトの軍陣に近づくまで他愛もない雑談をした。
・君達の種もセックスはするのか?
・モテないオスって惨めだよな
・嫁さんがブスで辛い
そんな下らない話をして恐怖を紛らわせた。
さあ、コボルトが見えて来たぞ。
俺の目標は、標準座標≪√47WS≫への報復。
(月の内側を異世界と偽って奴隷集めをしてやがった。)
その為の最適解として、奴らが煽っている異種族間戦争を鎮静化し、その魂胆を暴いて全種族に共有させることを選択している。
もしもコボルト・リザード問題を解決出来たのであれば…
それ以外の種族の調停はそう難しいものではないだろう。
俺なら出来る。
何故なら俺には最強チート能力の【心を読む】があり、支えてくれる仲間が居るからだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます