ネタバレ異世界 ~最強チートスキル【心を読む】で第一話からオチを知ってしまった生ポ民の俺が仕方なくストーリーを消化して全世界を救う件について~

蒼き流星ボトムズ

第1話 チートが災いして初回でオチを知っちゃった…

俺の名前は伊勢海地人(いせかいちーと)、異世界に転生することだけを考えて生きて来た男だ。


職歴・学歴、共に無い。


異世界転生の準備で忙しかったからな!


君達が勉学や勤労にうつつを抜かしている間、俺は異世界ラノベを読み漁って来た。


当然、なろうの異世界物は全チェックしている。


わかるか?


全チェックだ?




健康だけが取り柄だが、父の伊勢海新人(いせかいにーと)同様に生活保護を受給している。


いや! そこは責めるなよ!


オイオイオイ、俺が生ポでオマエに何か迷惑かけたか!?


泥棒扱いするんじゃねーよ!


大体なぁ!!


最低限文化的な生活を送るのは国民の権利だるるるるぉおおお???


生ポには生ポの苦労があんねんっ!!


勤労者の分際で人の米櫃に手ぇ突っ込むなやああああ!!!!




ハアハア!






…すまないな。


俺としたことが少々取り乱してしまった。


醜態を謝罪するよ。


生活が掛かってるんだから仕方ないよな?


君だってある日突然、給料が支払われなくなったら怒るだろ?


それと同じことだ。


俺達生ポ民にとっては生ポが給料なのだからな。


俺には権利がある


最低限文化的な生活を送る権利がな。






まあいいさ。


努力の甲斐あって、こうして異世界に来れたんだから。


いやいや驚くことではないさ。


あのトラックを見た瞬間ピンときたね。


『あ! これラノベで見た奴だ! 』


明らかに異世界トラックだった。


恐ろしく速いトラック、俺以外だったら絶対に見逃しちゃうね♪


俺は迷わずそのトラックに飛び込み、こうして無事に異世界に辿り着いた。


ふふふ、どうだ? 羨ましいだろう!


幾人かが俺の巻き添えになって死んだっぽいが、ここには居ないようだ。


奴らはきっと信心が足りなかったのだろう。




まあ、そんな事はどうでもいい。


異世界の話をしよう!


見ろよ、この天国風の世界。


澄み渡る青空、そして俺が踏みしめているのはフカフカの雲。


今俺が立っているのは天国風のチュートリアル空間だ。




この手のアニメが好きな人間ならわかると思うが。


転生と言っても、いきなり異世界本土に送り込まれる訳じゃぁない。


この文章を読んでるキミも、そこまで素人じゃないよな?




そう。


この場合、最初にスキルを与えてくれる女神様のようなキャラが現れる。


俗に言う付与イベントってやつだ。




ふふっ


俺はギリシア神殿風の建物に向かって迷わず進む。


笑いが止まらないね。


これは日本人用にチューンされた擬似天国だ。


一神教圏の人間は、こういうJRPGみたいな世界を連想しないからな。




そして神殿に続く階段を上ろうとすると…


はい、ビンゴ♪


階段の最上段に神様っぽい人影が見える。


早速近いづてみる、と…




チッ、ジジイかよ。


どうせなら女神に迎えて欲しかったぜ。






「ようこそ異邦の若者よ! 


汝には二つの選択肢がある!


一つ、ここまま天に昇り魂に永遠の静寂と安寧をもたらすこと!


そしてもう一つは茨の道! 汝がこれまで生まれ育った場所とは大きく異なる世界… 


即ち異世界に転生し、苦難の冒険に挑むこと!」






はいはいテンプレテンプレw


あるよねー、ラノベとかゲームとかの序盤で大体こういう選択肢あるよね。






『異世界に転生させてくれ。 働く意志はある(無いけどw)!』






「ほう、敢えて苦難の道を選ぶか… 天晴な若者よ。」






これもよく見た展開だな。


で、神様に気に入られてチート能力を貰える、と。






「汝の意気込みに敬意を表し、スキルガチャを回させてやろう!」






そういうと神は何もない空間から福引のガラガラを取り出した。


(正式名称は知らんが商店街のイベントでよく使われるものだ)


不意打ちでプチ奇跡を見せつけられると流石に驚いてしまう。






「さあ、一度だけ引くがよい! 出た球の色に応じたスキルが汝に付与される!」






オイオイオイ。


こういう場合、無条件でチートスキルをくれるのが相場ってもんじゃないのか?


参ったね、福引でスカが出ればゴミスキルを押し付けられるってことか?


福引なんてティッシュ用の白玉しか入ってないモンだろ?






と、ここで慌てるのは凡人w


この伊勢海地人様は別格だ。


ちゃんとこの日の為に準備はしてきた。


抜かりはない。


万全だ!






『やれやれ、福引なんて当たる自信はないんだけどねw』






俺は自信なさげな表情を装ってガラガラを回す。


それも力一杯派手に回す!




ガラガラガラガラガラガラガラっーーーーーーーーー!






「おいおい若者よ、そんなに乱暴に…」






コカーーーーーーーーーーーーーーーーッン!!!!






アルミ製の受け皿に高らかに玉の当たる音が響く。


そこに落ちたのは紛れもなく黄金の球だった。






「えっ!  ちょっ!!」






余程、想定外だったのか神が驚愕の表情でアルミ皿を覗き込む。


その瞬間、アナウンス音が流れる。






《おめでとうございます! 特賞です!


当選者の伊勢海様にはレジェントレアスキルが付与されます!》






俺の全身が光り、明らかに何らかのエネルギーが注ぎ込まれた感触を確認する。


…ニチャア。


俺の唇から思わず笑みがこぼれる。


相当なスキルが付与された、と本能が告げてくれたからだ。


長年の修行と準備が報われたのだ、こんなに嬉しいことは無い。






「お、おめでとう… 


よ、良い結果が出たようだな…」






神が慌てて平静を装いながら祝辞を述べる。


ふっ、馬鹿めw


『出た』んじゃない『出した』んだよwww


こんな事もあろうと!


俺は日頃から100均で買ったガラガラセットの当たり玉を隠し持っているのだ。


ちなみに、反対側の袖には重心が偏ったサイコロを忍ばせてある。


わかったかい、キミ達?


これが、努力っていうやつさw






「そ、それではスキルオープンするぞい。」






神は冷や汗を流しながら、掌を発光させた。






《伊勢海地人のスキル  鑑定の素質》






「ほう、鑑定を引き当てたか。 皆が欲しがる鑑定を引き当てるとは… おめでとう…」






異世界ラノベでは『鑑定』は当たりスキルである。


鑑定スキル持ちを主人公にした物語も多いが…


レジェントレアという程だろうか?


それとも需給バランス?


等と思いかけた時、突然脳内に声が響いた。


そして神の胸元に活字がポップする。






【ガラガラにはハズレしか残ってない筈だが… 抜き忘れが残ってた?】






??


な、なんだ?


アナウンス? 裏声?


え?


ハズレしか残ってない?






「最近の若者は補助系好きじゃのぉ…」






神が感慨の無い表情で呟く。


そして再度ポップする活字と声。






【それだとこっちの予定が狂うんだよねぇ…】








ひょっとして、この【】は…


神は人の良さそうな表情でセリフを続ける。






「まあ、頑張りなさい。


ワシはいつでも汝を見守っているから。」


【んなわけねーだろw 放り込んだらノルマ達成w そこから先は知ったこっちゃないわww】






これ… 多分… 俺が神の心を読んでいるのか?


相手の本音を探る能力?


確かに鑑定と言えなくもないが…






『神様。 俺はこの先どうなるのでしょう?』






俺は何食わぬ顔で検証を開始する。


さっきの【んなわけねーだろw】が神の本音だとしたら、コイツから話を聞き出せるのは今しか無い可能性が高いからだ。






「おお、スマンスマン。 久しぶりに珍しいスキルを見たもので、話の順序を忘れてしまっておった。」


【うーん。 金目のプログラムは全部換金し終わったと思ってたが…


レジェントレアを抜き忘れてたなんて… 勿体ないことしたぜー。】






「汝が今から向かうのは剣と魔法の地・グランバルド!


生まれ育った場所とは全く異なる異世界に汝は転生する!


魔王を倒しグランバルドに平和を取り戻すのじゃ!」






『わー、異世界だー。 やったー。(棒)』






相槌を打ったその瞬間。


神の胸元に膨大なログが発生する。






【なーんてねww


オマエら如きにそんな量のエネルギー使ってやる訳ねーだろww


考えたらわかるやろww?


全く違う次元の世界に一々転送しとったら採算獲れへんやんけww


実はさあw


ワシが送り込んでるのはオマエら地球人が月って呼んでる衛星の内側なんだよねえww


だってそうでしょおおww?


オマエらみたいな未開星人には分からないと思うけどさああw


人格転送にどれだけ労力掛かるか考えてみろっつーのw


惑星に紐づいた衛星なら、殆どコスト掛からないしね♪


っていうか母星の軌道に乗ってる衛星をコロニー化して活用するなんて初歩中の初歩だよねえww


まっw 低能のオマエらがこの水準の科学力に辿り着くなんて不可能だけどさwww


月とやらはワシらの実験上として活用してやるよw オマエらは岩石だらけの表面を這いずり回ってなww


しかしコイツらが現実を知ったら驚くだろうなあw 


あー、任務じゃなかったらネタバレで驚かせて、絶望してるオマエらを爆笑してやるのになあww


あー、言いたい言いたいww


オマエらが月って呼んで崇めてるあの衛星はww


ワシらが未開星人共を手当たり次第に投げ込む蠱毒工場だよーんww


オマエらと同型の猿型が有利なんだから感謝しろよーwww




ってww


これ星間連盟議会にバレたらマジやばいんだけどww


多分経済制裁じゃ収まらないだろーなーw


ワシも宇宙憲章違反の実行犯としてまず死刑になるやろうしww


まあ、どうせワシ前科あるしなw


あくせく働くくらいやったら、危ない橋渡って稼ぐ方が賢いやろw


このスキームで交配させた個体はアホみたいに売れるからやめられないよねーww


いやー、ワシらのボスは天才だわ。


ワシみたいな末端まですっごい分け前貰えるからねw


どんだけ儲かるんだよって感じwww


いやー。


それにしてもバレたらヤバいよね。


本来、ワシらには地球を連盟議会に招聘する義務があるんだけどww


まさか戦争奴隷工場にしてるなんてねwww


この真相知られたら、ぜーったい恨まれるわwww


こっえーw 怖w 怖w


ワシらの母星が標準座標≪√47WS≫にあるとかバレたら絶対報復されちゃうよねww


近すぎーーーーwwww


地球人母星ちかすぎーーーーwwww


まあ、ワシは神だし、何やっても許されるよねww


本星じゃ単なる汚れ仕事専門の下級公務員だけどww


あー、早く帰りてーww




次元跳躍プログラムと、元素複製プログラムは引き当てたから


後は狂戦士プログラムだけ回収出来たら、ワシも出世出来るんだが。


要は知的生命体に無思考で殺し合いをさせたいだけなのよねーw


早くそういうプログラム発見されないかねー?


スキル名は多分、狂戦士バーサーカーだと思うんだけどさあw


なーんか最近外ればっかりだなぁ。


コイツなんか鑑定プログラムとか訳の分からんプログラム発動させるしw


鑑定すんのはワシらだっつーのww




まあ、どうでもええわw


どのみちさあw


月に閉じ込めた奴らが計画に気づいた上で、地球にこの情報を伝えない限り


ワシらの立場は絶対に揺るがないんだからねwww




まw


未開星人共がワシら高等文明人様の計画を察知するなんてぜーーーたい無理だけどねww


全部族に結託されたら流石にこっちが詰むけどww


翻訳装置も無しで未開星人同士の協議なーんてぜーったいに無理だしwwww




んじゃあ、レジェントレア(笑)の未開星人クンw 


蠱毒の養分として、せいぜい無駄な努力がんばってねーーーwwww】












…。


ま、マジかー。


凄いネタバレ来たな…


これ打ち切り漫画の巻末に作者が手書きで書き殴るような詰込み設定じゃねーか。








「それでは伊勢海地人よ!


いざゆけ! 剣と魔法の異世界・グランバルドへ!


正義の刃で魔王を倒し、平和をもたらすのじゃ!」


【ぷぷぷのぷーーww


実はワシの仕事って蠱毒に投げ込む全種族に同じセリフを言うだけなんだけどねーーwwww


これで成果が上がるんだから楽な商売やでぇwww


どいつもこいつも真に受けすぎいいいwwww】






『あ、はい。


神様、俺頑張ります。』






「うむ!


異世界でも達者でな。


ワシはいつでも見守っておるぞよ!」


【嘘じゃボケえwww


使い捨ての消耗品なんか次の昼飯までに忘れとるわwww】






神は満面の笑みで俺を光の中に放り投げた。


俺は従順を装い、神に感謝しているかの如く愛想笑いしながら何度も会釈した。




…標準座標≪√47WS≫、ね。


オマエらが警戒するくらには地球から近いんだよな?




標準座標≪√47WS≫




テメー、マジで覚えたからな。








こうして、俺は壮絶なネタバレを食らってから異世界、と云うより月の内部に転送された。。


心を読む能力、というのは便利だが…


人生が劇的につまらなくなるな…

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