第11話 ルリナはニルワームにお願いしてみる

「まずは一番簡単なスプーンから使ってみよう」

「はーい。って……ひよぉえぇぇええ!?」


 スプーンの持ち方を超至近距離で教えてくれた。

 しかもニルが私の手に触れ、スプーンの正しい持ち方をおしえてくれたのだ。


「す……すまない。やはり私が実技をしてみて覚えたほうが良いか?」

「すみませんビックリしちゃって……。でもこのほうが覚えやすいから続けて欲しいです」

「そうか。では、このままスプーンでスープをすくい口に入れる。このように……」

「ひえっ!!」


 スープが思っていたよりも温かくて変な声を出してしまった。

 今まで食べたことがあるスープって冷たいものばかりだった。

 こんなに温かくて身体がポカポカしてきそうなごちそうは初めてなのである。


「大丈夫か? 試しに自分でやってみるか」

「はい。えぇと、こうやって……」


 スプーンでスープをすくって口の中へ入れる。

 そして飲み込む。

 美味しい。


「どうですか?」

「完璧だ。やればできるではないか」

「ありがとうございます」

「続けてフォークの使い方を教えよう。もし上手くいくようならナイフもチャレンジしてみようか」


 美味しいご飯を食べながら、ニルの指導は続いた。

 持ち方をスプーンのように直接教えてもらうたびに、私の心臓の鼓動も早くなっていった気がした。

 ご飯は美味しいし、ニルから教えてもらったおかげでより美味しく食べられた気もする。


「ふむ……。まさか一度教えただけでここまでしっかりと使いこなせるようになるとは……」

「教え方が上手だからです。ありがとうございます」

「細かい部分はまた追々教えるとして、きみなら飲み込みも早いし数日もあればマスターできるだろう」


 覚えるのに必死だけど、なるべく一度で覚えられるようにしたかった。

 ところで、ニルに対してひとつだけ気になることをぶつけてみた。


「ニルと呼ばせていただいているので、どうか私のこともルリナと呼んでいただけませんか?」

「な!? 良いのか!?」

「もちろんですよー! ツバキさんも私のことは名前で呼んでくださっていますよ」


 私はなにげなく言ったことだった。

 だが、なぜかニルの顔が真っ赤に変わっていく。


「で……では、ルリナよ。よろしく頼む……」

「はーい、ニル♪」


 王子に対して友達という類で言ってしまうのは失礼かもしれない。

 だが私は、ニルとさっきまでよりも仲良くなれたような気がしていた。


 人同士で仲良くなれることが嬉し過ぎて、今日はなかなか眠れる気がしない。

 と思っていたのだが、前言撤回。

 ベッドのふかふかにはどんな心境も敵わないようで、すぐにグッスリと眠りにつけた。


 ぐぅ〜。

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