異様な会社 3
一寸法師の車が門から入ると。守衛が一旦車を止めて名前を聞いた。
ごく普通の行為だがその時点で
「紫さん、大丈夫か?」
「ええ、でも本当にみんな赤い玉がある……。」
豆太郎には何も見えない。
だが、妙な気配はずっと周りにあった。
禍々しい雰囲気だ。
二人は事務所の片隅にある小さな応接席に案内された。
とても古いものだ。
周りを見ると設備もかなり古い。
「古い会社だから当たり前だけど、
旧態依然で全然新しいものが入っていない感じだなあ。」
やがてお茶が運ばれてそれと同時に営業だろうか、
男性が現れた。
「お待たせしました、一寸法師さん。いつもお世話になっています。」
「はい、急なお願いでしたが、受けて頂いてありがとうございます。
連休前に助かりました。」
とお互いに名刺を出す。
その時だ。
紫が立ち上がった。
彼女の目は事務所の奥を見ている。
そこには常務の紫垣がいた。
彼もその気配に気が付いたのか紫を見る。
「紫……。」
彼は豆太郎と紫に近づいて来た。
営業が少しばかりうろたえて立ち上がる
「下がれ。」
紫垣が彼に言う。
とても社員に言う言葉ではない。
だが彼は何も言わず席を立ち姿を消した。
そして紫垣はどっかりとソファーに座った。
「どうしてここにいるんだ、紫。
定食屋の仕事は。」
「あの……、一寸法師さんで……。」
一寸法師で働くことになったと言うはずだった。
だが、彼女は真っ青になっていた。
彼女の眼には紫垣の口から真っ赤な粒が絶える事無く、
溢れるように出ているのが見えたからだ。
豆太郎がその様子に気が付いた。
「ああ、申し訳ありません。
彼女の体調がいまいちのようなので、これで失礼いたします。」
ふらふらになっている彼女を支えて豆太郎は立った。
それを見た紫垣の顔色が一瞬普通に戻る。
だが、部屋を出てすぐに後ろから激しく物が倒れる音がした。
一体どうなっているのか分からないが、
多分紫垣が何かをしたのだろう。
その音の後はただ静まり返っていた。
異様すぎる会社だ。
豆太郎は空恐ろしい気持ちを抱えながら車まで戻り、
その会社を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます