コマンド式いせかい(笑)
からいれたす。
コマンド式いせかい(笑)
振り向くとそこには、緑色のちょっと形容しがたい人がいた。
「あれ、あの~?」
「ぐぎゃ」
えっと、気持ち悪い人のような、そうでないような。上半身は裸。下半身はなんだかボロ布。こわっ。えっなにこれ。こわっ。
冬休みを利用しての初めての海外旅行で南半球にきたのは良いのだけれど、空港から一歩出たら大草原。WWWとかじゃなくてサ。
いや、流石に季節が反転してるだけのことはありますね。長袖着てるだけで汗が吹き出してくるけど、服を着ないとかなくないか。とはいえ、周りにも誰もいないし。
「すいません、ここってオーストラリアでしょうか?」
とりあえず、勇気をもって話しかけるも答えは同じ、
「ぐぎゃぎゃ?」
いや、ニュアンスは違うかも知れないが……あ、なんか棍棒を上段に構えてますね。ってそれは振り下ろしちゃだめなーやーつー。
ひゅってしたぞ、後ずさらなかったらヤバイやつだったぞ。
「まて、話し合えばわかるから、ちょっとまって」
「ぐぎゃ」
ジェスチャーを交えて説得を試みようとしたが、怒りの沸点が低すぎる気がする。今度は横に薙いできた。あぶ、あぶねぇ。
「話が通じねぇ~」
緑の人。推定アレ。暫定的にブロッコリーと呼ぶことにする、なぜなら嫌いだから。
「これはアレだな。異世界(笑)だな。とりあえず逃げよう」
とか独り言をぶつぶつ言っていたら、ピコンと音がして、へんな選択肢が表示された。
こうげき
どうぐ
スキル
→にげぬ
おいまて、どこからこのコマンドでた! しかもにげぬってなんだよ、そんなに強き心はもってねーよ。てか異世界さんってば(笑)つけたから怒られましたか?
ほんの出来心だったのです、僕はキミが大好きなのでちょっと天の邪鬼しました。ごめんね。
こうげき
どうぐ
→スキ
「いや、ばっかじゃねーの、逃げるどころか選択肢へったじゃねーか。しかも告白みたいになってんぞ。“ル”どこいったんだよ」
あ、ついツッコんでしまった。てか選択肢は提案されてるだけで、僕は選べないのかよ。どーなってんだよ。異世界さん。
→げきこう
どうぐル
「あー、ごめんなさい。そんなに激昂なさらずに。話し合えば分かりあえますから、ほら見て下さい。この濁りのない嘘偽りのない僕の心を」
しかたない、四の五の言ってる暇はない。異世界さんをなんとか騙しきってこの難局を乗り切らなくてはなるまい。
「あとルはそうじゃねぇんだよ!」
どうぐルってなんだよ。動詞になったのかな?
→どうぐ(ル)
嘘発見器
隷属の首輪
「なんでこんなのしかもってないんだよー」
本当にどうなってるんだよ、もっとまともな道具はないのかよ。わかったよ、もうどうにでもなれって、両方を装備だ!
でれでれでれで~れ。
「呪われてるじゃねーかよ!」
もうなんなんだよ。あーーーー。たすけてーくれー。
「ぐぎゃ?」
「嫌ぁぁぁー、そういえばまだいたー」
コマンドは? ねぇ、コマンドは? さっきから自分じゃ一切動けないんだけども、早く操ってお願いします~。選択肢だして下さい。
→ゲームオーバー。
ふと気がつくと、空港を出たところだった。寒暖の故か、泡沫の幻想。宿泊先に到着して鞄を開くと見たことのないゲームがでてきた。まだ続きがありそうで、辟易としたものの、抗うこともできず。
結局、ひどく暑いオーストラリアで、旅行の日程をゲームで費やして終わることになってしまったのだが……。ひどいクソゲーだよまったく。
帰国寸前に、なんだか悔しかったので、空港で何通かの絵葉書を友人におくることにした。文面はこうだ。
この冬の残暑は酷かった。
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