第三章 「黒猫館の秘密」

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 友作の話を確かめる為、慌ててみんなで階段を上り、元の部屋に戻った。

 そこには木箱やたる、戸棚が置かれており、同じ部屋だと思えたが、通路に出てみると、すぐ隣が台所だったはずなのにその台所が消えていた。それだけでなく、右にも左にもずっと通路が伸びている。


「な? これ、俺たちが入ってきたところと違うよな?」

「これがラショールか」


 その光景を前に、桐生だけが笑みを浮かべていた。


「とにかく、二手に分かれて、まずは出口を確保しよう」


 良樹はそう提案したものの、怯えている美雪と彼女に付きそう加奈をどうすべきなのか分からなくなり、思わず考え込んでしまう。


「生駒君は二人についてやっててくれ。三人をここに残して、まずは俺たちで状況を見て来よう」


 桐生が場を仕切ってくれた。


「分かりました。それじゃあ、僕は」

「私が」


 見回した目線は足立里沙あだちりさの前で止まった。


「じゃあ足立さん。お願いします」

「俺は一人で見てくる。何かあれば携帯に連絡するから」

「桐生さんは右手側の通路をお願いします」


 こうして良樹と足立里沙、桐生の三人が通路の探索を、残りの三人は部屋に留まり、報告を待つことになった。



「足立さん」

「何?」


 歩きながら、良樹はずっと考えていたことを彼女に聞いた。


「足立さんは安斉と幼馴染のようなものだったと言ったけれど、学生時代、ずっと傍で見てて、特にそういう関係だったようには見えなかったんだ。ひょっとして、足立さん、嘘をついてるんじゃないかって思ってるんだけど」

「どうして私が嘘をつく必要があるの?」


 里沙は特に良樹の発言を気にする様子もなく、通路の壁や天井を確認しながら歩いていく。


「目的は分からない。本当に幼馴染なのかも知れないけれど、今回参加したのはもっと他の理由があるように思うんだ。どうだろう?」

「もし他の目的があったとしても、黒井君には関係ないことよ」

「確かにそうなんだけど」


 何を考えているか分からない。一緒にいて会話をしている時の特有の息苦しさは、学生時代から変わらないと感じた。

 通路は真っ直ぐではなく、徐々に左手側にカーブしているようだった。それだけでなく、微妙に傾いている。そのよく分からない傾斜や真っ直ぐに造られていない通路、徐々に狭くなっている上、意図的に陰の部分と光の部分で強烈なコントラストに塗り分けられていて、それが歩いているうちに目眩に似た錯覚を起こした。


「足立さんは、これ、大丈夫?」

「私も、少し酔いそう」


 どれくらい一本道の通路を進んだだろう。

 対面からLEDの強烈なライトが近づいてくるのが分かり、こちらもライトを振って合図をするとやはり相手は桐生だった。


「一周しているのか」

「そうみたいですね」

「どこか、別の部屋か、出口のようなものは?」


 良樹は里沙と一度目を合わせてから「いえ」と返事をした。

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