第20話 須藤金嗣
「……」
そしてある決意をし――左耳に付けていた神から貰った赤色のピアスを、外す。
本当の自分が顕になる。
日本由来の黒髪、そして黒目。名前は須藤金嗣に。
「なっ!?」
「嘘……」
「スカー、殿……?」
「黒髪……」
「これは……」
「スカー殿。君は――」
須藤の本当の姿を見た面々はそれぞれ目を見開き、口に手を当て驚愕の表情を作る。
そんなみんなを見て思う。
いやだ。これ以上嘘はつきたくなかった。それにこの人達なら本当の俺を見てくれると思った。それが無理なら――俺は。
みんなが驚いている中、須藤はその場で頭を下げる。
「――俺は皆さんに嘘をついていました。俺はスカー・エルザットでも無ければ『旅商人』でもありません。俺は――」
そこで言葉を止めると須藤は顔を上げ、みんなに見える様に『ステータス』を表示する。
「――俺は、異世界からの転移者。名前を須藤金嗣と言います。『ステータス』通りこの世界の住人ではありません」
自分を偽ることなく、真実を告げる。
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須藤金嗣 15歳 男
L v.:15→35
種族:人種
職業:特殊職業:【転売ヤー(時空間魔法)】 サブ職業:【商人】
体力:300→700
魔力:520000→590000
スタミナ:300→700
筋力:450→1050
防御力:300→700
魔防御力:300→700
素早さ:1050→2450
運:100
加護:異世界神の加護
スキル: 成長速度上昇 体術lv.5 魔力制御 魔力上昇 鑑定 時魔法lv.4【使用魔法:ロック・スロウ・アンロック】(使用魔力400 レベルに応じて変化) 空間魔法lv.4【使用魔法:インベントリ・
ユニークスキル:異世界言語能力(異世界の言語が理解できる)
エクストラスキル:メルカー(スマホで地球と同じフリマアプリができる。買えるもの売れるものは自由。自分のお金か魔力で購入、売却)
属性:時・空間
持ち物:学生証・スマホ(異世界仕様&充電は魔力 破壊不能オブジェクト)
所持金:15000ウェン
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『ステータス』もレベルが上がり大幅にアップしていた。
新しく手に入れたスキル
・アンロック:全ての物を「解放」又は「解除」する 使用魔力400
・
・
新しく手に入れたスキル等に触れることなく『公爵家』のみんなに話す。
自分はこの世界「ネフェルタ」とは違う「地球」の「日本」という世界に住んでいたこと。「学生」として過ごし。妹の「病気」を治すために頑張っていたこと。そんな時「異世界召喚」に巻き込まれ「ネフェルタ」に来た。
『王国』に召喚されたが『職業』が文献にない物だから『救世主の証』がないと言われ、騎士の手の元追い出された。ただその騎士は優しく自分を見逃してくれた。
その後魔物に襲われるがなんとか凌ぎ『神』と会いこの世界の真実を知る。そこで妹を助ける方法を聞く。『エリクサー』を見つけなさいと。その他にも『職業主義国』ではない『魔法国』に【商人】として旅をすれば『エリクサー』の手掛かりも探せる可能性があると言われた。
なので自分の『職業』『出目』がバレないように自分を偽り「スカー・エルザット」として『旅商人』をしていた。が、たまたまローズ達を助け。今『公爵家』にいると。
そんな自分に優しくしてくれ。『家族』とまで言ってくれた人達を騙し続けるのが心苦しくなり、今本当の自分を見せたと。
「――これが須藤金嗣という浅ましい人間です。もっと早く伝えてればよかったのに……自分の保守のことだけ考えて突き通そうとした末路です」
最後にその言葉を残した須藤はみんなの目を見れなかった。だから下を向いてしまう。
話を聞いていたみんなの考えは須藤が思っている様な物ではなかった。
「――馬鹿ね」
「――馬鹿だな」
「――馬鹿だよ」
言葉とは裏腹にマリー、ローズ、ナタリーの三人は涙を流し、須藤に抱きつく。
「!!」
抱きつかれた須藤は何も言えず、体を震わせてしまう。
ただ三人が自分のことを、醜悪な本性を知らないだけだと想い言葉を並べる。
「――俺は、俺は、貴方達が考えている様な素晴らしい人間じゃない。善人じゃない。俺はただ自己中心的に動いている偽善者だ。愚者だ。だからそんな俺は――」
『嫌うわけがない』
「――ッ」
先駆ける様に三人に否定されてしまう。その三人の顔は真剣だった。
「――そうね。全て初めから話してくれなかったのは悲しいわ。でもここまで自分を偽ってでも頑張って来た君を嫌う道理は何処にもないのよ。それよりもただ一言――『よく頑張ったね』と私は抱きしめて褒めてあげたいの」
マリーはそれでも優しかった。
「――母上の言う通り、私も悲しかった。だけどあなたにも色々とあったのだろう。話を聞いているだけでも胸が痛んだ。でも自分を偽ってまでも偽善者と言いながらも助けてくれたあなたを好きになったのが――私、ローズ・フラットだ。私は私の気持ちを否定したくない」
自分の信念を曲げることのないローズは須藤に絶対の信頼を置く。
「それに君は君でしょ。人に頼れなくて無器用な君。でも他の人は無償で助ける君。自分を偽りながらも頑張って、頑張って――妹さんを助ける為にその身を砕いてきた君。そんな優しい心を持つ君に惹かれた。そんな君だからこそ私達は助けたいと想った」
ナタリーは自分の想いを告げる。
そんな三人の言葉を聞いてもまだ、須藤は自分が許せなかった。そんな時、肩を軽く叩かれる。
「君は須藤金嗣、スカー・エルザット――全て引っくるめて君だ。言いたいことはほとんど女性陣が口にしてしまったからこれだけは僕の口から言いたい――君は正しい」
「――」
須藤の肩を叩いた人物――レインは始めの時と同じ様に笑みを見せる。
「沢山、沢山言いたいこともある。でもそれは全て君が頑張ってきた証だ。だから僕からは一言だけ。君は正しい。そして――君を追い出した『王国』の連中は間違っている」
ニカッと悪ガキの様な笑みを作ると伝える。そんな話を聞いていたみんなも頷いていた。
「俺は、俺は――許されていいのでしょうか」
迷子の子供の様に縋る様に、須藤は告げる。
「当たり前だ。君を許さない者などこの場にいない。僕含める全員――君の味方だ」
「――」
レインの話を聞き。みんなの目を見た須藤は言葉が上手く出せなかった。ただその顔は何処か憑き物が取れた様な顔をしていた。
そんな須藤にみんなはただ待つ。
その間、思う。
俺は独り善がりだった。
何事においても自分の考えが最善であると独りで信じ込んでいた。でもそれはどうやら違っていた。
子供だった俺は素直になれなかった。正直になれなかった。それでもこんな自分を『家族』だと言ってくれる人達に応えたかった。
だから――
「――こんな、こんな俺で良ければ。貴方達の『家族』にして、ください」
嬉しさのあまり勝手に流れてくる涙。その涙を気にすることなく、ただ前を見て願う。
『喜んで!!』
自分を受け入れる様にただ一言。自分を肯定してくれる。
家族
それはたとえ血が繋がっていなくても同じ屋根の下で暮らし。そしてお互いに信頼し「幸せ」を分ち合えれば自然となれるものだと思えた。
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