勇者パーティーから追放された魔法戦士ディックは何も知らない~追放した勇者パーティが裏で守り続けてくれていたことを僕は知らない~
第21話:お仕置きタイム~ロクサーヌ編~⑦ 【ロクサーヌの過去:Iカップ vs AAカップ】
第21話:お仕置きタイム~ロクサーヌ編~⑦ 【ロクサーヌの過去:Iカップ vs AAカップ】
先頭に立っている大男がようやく呼び出しがかかった事に喜んでいるのか嬉しそうに副商会長に話しかけた。
「副商会長サンよぉ、ようやくかよ。監視カメラで様子を見ていたが、早く呼び出してくれるのを今か今かと待ってたぜ。むしろ呼び出してくれなかったらこっちからご挨拶させてもらおうかと思ってたんだからよ」
普通は『生きて帰すわけにはいかない』と言われた直後にAランク冒険者を十人も目の前に呼び出される事になれば顔面蒼白で全身ガタガタ震えるような事になっても何ら不思議ではない。
だけど、目の前にいる対象は普通ではない。彼女等は冷めた目で追加された連中を物ともせず視界に入れた直後にすぐに副商会長に視線を戻した。
「罪が増えましたわね、副商会長殿。今あなたは確かにこう言いました『貴様らをここから生きて帰すわけにはいかなくなった。死ぬか奴隷になるかくらいは選ばせてやる』とね。モチロンその発言もしっかり録画してますから、直近のイベントして家族会議だけではなく裁判所への出頭も増えましたわね」
「ふ、ふんっ! だったらなんだというのだ? そもそも貴様らはもうここから出れないというのに余裕なんて見せている場合か? 歴史上最速でランクを上げているとは言え、まだCランクだろうが! お前たちの後ろにいる連中は全員Aランクなのだぞ!」
汗をだらだら流しながら強がった発言をしている副商会長とは打って変わってマリーはそんな発言を鼻で笑って余裕の表情しかない。
「冒険者ランクとはあくまでギルドが指定した一定数の依頼をクリアしているかで決まるものであり、当人の強さを図るものではありませんよ」
「くうぅぅ、ああ言えばこう言う! お前ら、この餓鬼どもを黙らせろ! 高い金払ってるんだぞ、仕事はキッチリしてもらうからな」
マリーと同様にAランク冒険者も余裕の表情だ。彼らも様々な依頼を熟して幾度も死線を超えたであろう自負があるからたかだが冒険者になって半年程度の若者に負けるなんて思いもしないでしょう。
そう…… 普通の冒険者なら…… けど、彼女等を今までと同じ冒険者の枠組みに入れるべきじゃない。
ウチだってそれなりに死線は何度も潜って来た。だから、今入口にいる連中を見ても一人一人であれば命を狩るのはそこまで難しくない。
でもアリスを見て理解したの…… 世の中上には上がいると…… 幾ら手を伸ばしても届かない領域があるのだと。自分は所詮凡人でしかないという事を嫌でも思い知らされた。
己の力の無さを痛感してため息をついても周りは慌ただしく動いている。
「オイオイオイ、いいのかよぉ、副商会長サンよぉ! コイツ等は前から気に入らなかったんだ。最速がなんだか知らねえが、どうせギルマスを身体で篭絡してランクでも買ってんだろ?」
「「「ギャハハハハハ! どうせなら俺らにも味見くれぇさせてくれよ!」」」
Aランク冒険者のクズ共はリシェルとセリーヌの身体を舐め回すように見ながら舌なめずりしている。
聞いてるだけで胸糞悪くなってくる。コイツ等は女性を何だと思ってるんだ。
いい加減にムカついて来たから、あいつ等をぶん殴ってやろうかと思ったらマリーに制止されてしまった。
「ここは私達にまかせなさい。いいわね?」
マリーってパッと見た感じ、滅茶苦茶童顔で少女にしか見えないのに何故かこの時のマリーの微笑みは凄い大人の女性に見えて女のウチですら一瞬ドキッとしてしまうほどの色気を感じてしまって「は、はい」としか言えなかった。
体はそうでもないのになんで……。
「リシェル、どうやら豚さん達は調教されることをお望みらしいわ」
「フフッ、いいのでしょうか? 調教なんて久しぶりですからやり過ぎないか不安です。これもまた神が遣わした試練なのですね」
リシェルは意味不明な事を呟きながら…… なんか自らの胸の谷間に手を突っ込んでる。何をしてるんだ君は?
と思ったら抜いた手に持っていたのは鞭だった。
そんなリシェルは申し訳なさそうな、もじもじした態度でディックの方をチラチラ見ている。
「あの…… ディック…… これから少々はしたない所をお見せしてしまうかもしれませんが、私の事を嫌いにならないでくださいね?」
「え? よくわからないけど、僕がリシェルの事を嫌いになるなんて有り得ないよ」
リシェルの表情はパァ~ッと晴れやかに輝いていた。嬉しさの勢いもあってかディックを引き寄せて自分の胸に埋めていた。
羨ましいけど、知り合ったばかりのウチではまだそんなことする度胸が無い。
「やっぱりディックは私の一番の理解者です。いえ、むしろ私の事を理解できるのはディックのみと言っても過言ではありません。これはもう運命ではありませんか? そう、つまり…… つま? そう、妻です。ウフフ、私達は運命の夫婦ということですね」
しかしディックは息苦しいのか手足をジタバタさせている。しかし、リシェルはそんなディックの様子に気付かずにギューッとディックを満面の笑みで抱きしめ続けている。
その状況を見かねたアリスが無理矢理リシェルからディックを奪い取っていた。
そしてアリスは自分の胸…… 胸? にディックの顔を埋めようとしたが、埋まってないなあ。
どっちかと言うと『胸筋』だし……。ディックはアリスが思いっきり引いた勢いもあって意識が半分飛びかけてるように見えた。
「いい加減にしないか、リシェル。何が妻だ、いつまでもそんな奇乳と世迷言でディックを惑わすのは辞めて欲しいものだね」
『奇乳』…… その言葉を聞いた瞬間、リシェルの動きはピタッと止まり、表情は陰りだしていた。どうやらリシェルに対する禁句だったらしい。
顔は頑張って笑顔でいようとしているけど、雰囲気は全く笑えない……。怒りを必死に抑えようとするリシェルが己を制止してなんとか口を開く。
「今なんと仰いまして? 私は由緒正しき愛が溢れるIカップですよ。奇乳ではなく爆乳と言うのです! アリスさんの様なAAAカップの胸…… 失礼、胸筋ではディックが痛い思いをするだけです。私に文句を言う前にどっちから見ても背中にしか見えない貧相な洗濯板をどうにかしてから言っていただけますか? あら、洗濯板にも失礼な事を言ってしまいましたわね」
対するアリスはリシェルと違って怒りを抑える事もなく顔面に青筋を立てて必死に抗議する。
「はあああああ??? 僕はAAカップなんだが!? 大体君だって汗を掻いてばっかりでムレムレでべちゃべちゃじゃないか。そういえば昨日はワキにパッドを貼り忘れて随分と修道服が無残な状態になっていたみたいじゃないか? まさかとは思うが、それをディックに洗ってもらったんじゃないだろうね? とんだ変態さんだね、クスクスクス」
リシェルは笑顔を崩さない状態だが青筋が至る所に出現している! 陰りはすっかり無くしており、代わりにリシェルの背後に死神が立っている様に見える。
しかし、リシェルは何かを思い出したのかフフンと勝ち誇った表情をしている。
「あ~ら、そうでしたわね。失礼しました。そういえばどこかの誰かさんは本来AAAカップのはずなのにサイズ測定の際に必死に乳首を勃起させてギリギリAAカップにした涙ぐましい努力をされた方がいらっしゃいましたよね? 店員さんも必死過ぎるその姿を見て貰い泣きしてAAカップ判定してくださったのですよね。 そんな店員さんの同情を引いた哀れな人はどこのどなただったかしら~~~??? プークスクス」
リシェルはチラチラとアリスを見ながら頬を膨らませて口を抑えて笑いを堪えているようだ。
最早第三者化しかけているセリーヌはアリスの苦労話を思い出したのか顔を背けてはいるが、手を口に当てて必死に堪えてるのはわかる。だって身体がめっちゃプルプル震えてるもん。
どうやらリシェルに軍配が上がった模様。おっぱい勝負でリシェルと戦おうとする勢いは買うけど、相手が悪かったね。ウチでも無理だもん。
「うーん、痛たたたた…… あれ? なんで僕アリスの胸で気を失ったんだっけ?」
ディックはアリスに思いっきり引っ張られてから今まで意識が飛んでいたらしい。
「あぁ、ディック…… 済まない。おっぱいお化けの魔の手からディックを救っただけさ」
と言われてもディックはいまいち状況が掴めていないようである。
まあ、知らない方がいいよ。女の争いに男が首を突っ込むと碌な事が無いから……。
「ぷっ、そういえばそんな事もあったわね。それはともかくディックはこっちに来なさい」
ディックはマリーの目の前まで行くと、ヘッドホンを着用させられて用意されたディスプレイに表示された何かを見せられている。
「おい、マリー! 君まで笑うのは勘弁してくれないか。僕と大して変わらないだろう?」
「あら、私はBカップよ。大きくはないけど、乳首をわざわざ弄ってカップ調整をする必要はないわね」
「んぎぎぎぎぎぎ……」
アリス…… これ以上は傷口を広げるだけだと何故気付かない。
マリーはそんなアリスに構わずに続ける。
「リシェル、今ならディックへの音を遮断しているからさっさとそっちは済ませて頂戴。ディックに今から起きる光景なんて見せたくないし、聴かれたくもないでしょう?」
「マリー、わざわざありがとうございます。それでは、お待たせいたしました。豚共の調教を始めますわね」
リシェルは鞭をしならせて豚共…… もといAランク冒険者たちを見て恍惚とした表情を浮かべている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます