第4話 ふざけた使命
私を見つめるお姉さんは何故か呆れていた。
「だってオバサンの事、ほっとけないでしょ?」
確かに可哀そうだとは思うが私にできる事など何もありそうには無い。
それにご飯を食べさせて貰っただけで、そこまでする義務はあるのだろうか?
行動も可笑しいがお姉さんの話はズレている。
「あのぉ…どうするって私には何もできませんよね?」
するとお姉さんは呆気にとられた様にポカーンと私を見ていた。
開いた口が塞がらないとはまさにこの事ではないだろうか?
私はどうしてお姉さんがそんなリアクションを取るのか不思議でならなかった。
「あんた私を呼び出したのよね?」
「⁈…」
何の話だろう?思い返してもよくわからない。
私はきょとんとしてお姉さんを見つめる以外なかった。
「会った時から私の事を誰だとしつこく聞いてたけど……………もしかして……………」
お姉さんの顔にはまるでこの世の終わりがきたかの様な不安が浮かんでいる。ごくりと唾を飲みながら大きく見開いた瞳で呆然としていた。
一瞬、時が止まったかの様に2人の動きはピタリと止まる。
「あんた私を呼び出した自覚がないの⁈」
呼び出したと言ってるが何のことだかさっぱりだった。そもそもお姉さんを呼び出して私に何のメリットがあるのだろうか?
しかし思い起こしてみるとお姉さんは何もない所から突然現れた。
閃光の中から飛び出してきたのだ。
「貴女!本当に何者なんですか⁈」
「私…?私は精霊よ…変な時に呼び出されて逃げようとしたけど…」
お姉さんが現れてからの出来事が走馬灯の様に甦る。私の顔から瞬く間に感情が消えた。
精霊ってそもそもこんなものなんだろうか?翼が生えたり、もっと神々しいものではないのだろうか?
私のお姉さんに向けられる顔は軽蔑の眼差しになっている。
「ちょっと~何て顔で見ているのよ」
「だってふざけてますよね?」
私はお姉さんが真実を言ってるとは思えなかった。
「ふざけてなんか無いわよ!それが証拠にあんたの体に契約の証がある筈よ!」
そう言ってお姉さんは己の太股を露わにした。
そこには途方に暮れた老人の顔みたいな痣が浮かんでいる。
見覚えのあるその痣は私の太股にあるのと同じものだった。
物心付いた時からあり、何時付いたのかもわからない。
こんなふざけた痣が契約の証だなんてにわかには信じられない。
「契約って何ですか?私そんなのした覚えはありませんよ」
「あんたが母親のお腹に宿った時に契約してるわよ」
私は言葉が詰まり声を出すことができなかった。
私が知らない両親の話まで持ち出された。
だいたい私に両親なんて存在するのだろうか?
「どういうことですか?」
「あんたのご両親があんたを守るために私と契約を結ばせたのよ」
お姉さんは説明が面倒なのか苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
「私を見た時、あんた誰?とか言ってませんでした?」
「あんたのオーラが昔と違ってどんより曇ってたからわからなかったのよ…まるで別人ね!どうしてこんなになったの⁈お腹の中では輝いてたのにぃ~」
お姉さんの話では私の事をどこまで知っているのか見当が付かない。両親の事も何か知っているようだが精霊ってどこまで人に干渉しているのだろう。
「お姉さんはどこまで私の事を知っているの?」
「契約の時と呼び出された時しか知らない…契約の時はお腹の中だからオーラしか知らない」
「どんな契約をしたんですか?」
「ピンチの時にあんたを助けるのが私の使命よ…あんたが助けて欲しいと願った時に私は現れるの!」
私…願った覚えないんですけどぉ…
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