11章 約束された終末
11-1、全員、全力で攻撃だ!!
天が割れ、亀裂の先には異空間ともいうべき紫色の不気味な空間が覗く。
そんな亀裂から、太さが直径20mはあろうかという巨大な触手が、何本も"こちら側"へと侵入してくる。
亀裂から垂れ下がるように伸びた触手が地面にぶつかり、地が小さく振動する。
空間の亀裂、そしてそこから出現する触手は、神殿内に展開されていた別空間、水晶の柱がある洞窟にも及んでいた。
洞窟の天井を破り、触手が洞窟内へと侵入すると、グネグネと内部を蹂躙するように暴れまわる。
触手の一撫でで、あれほど猛威を振るった鉄巨人はあっさりと粉砕された。
「殿下! 後退です」
「皆! 逃げるぞ!!」
グラリスに促され、フィデス王太子が撤退の号令をかける。
フィデスはイグノーラを抱えて駆けだし、マテリ達もその後に続く。彼らは周囲に展開されていた黒い亜空間への隙間を抜け、神殿の外へ……。
最後尾を走っていたヴァレトは、暴れる触手の衝撃で、軽く吹き飛ばされながら神殿の外へと転がり出た。
彼は衝撃で飛ばされながらも、触手が水晶の柱を破壊する様を見た。
ヴァレトは体を起こし、そして彼のすぐ横でマテリが無言で見上げる空、ヴァレトもつられて空を見上げ、マテリ同様に言葉を失った。
見渡す限りの曇天には雷鳴が轟き、そんな空を縦横無尽に亀裂が走り、地平線の彼方まで伸びるソレは、末端を見ることができない。
亀裂のあちこちから、何十、何百という、半透明の触手がすだれのようにぶら下がり、大地を穿ち潜り込んでいた。
ひび割れ、今にも砕けそうな世界に絶句している彼らに追い打ちをかけるように、酷く耳障りな轟音が鳴り響いた。
それは、金属を無理やり押し曲げ、ねじ切るような甲高い破壊音。あまりの騒音に、全員が顔を顰めて耳を押さえた。
「あ、あぁ……」
音の出所を探し、頭上を見上げたカルリディは、言葉にならない絶望の呻きを漏らした。
彼らの真上にある裂け目、そこから巨大な目がギョロリと覗いていた。いや、目なのかどうか、ただ、恐らくは目に類する感覚器であろう。凡そ、この世界に存在いする生き物の"目"と言えるような形状ではなかった。
その"何者か"は、裂け目から"こちら側"へと入り込むことに決めたようだ。裂け目の周りに、半透明の触手が何本も現れ、裂け目に手をかける。そして裂け目を強引に押し広げると、先ほど同様の耳障りな騒音が空から降り注いだ。
と同時に、あちこちから垂れ下がっていた触手たちが、まるで巻き取られる釣り糸のように、裂け目の中へと吸い込まれて消えていく。
「あれは全部、こいつの触手だったのか……?」
誰かが、見上げながら呟いた。
"何者か"は、どんどん裂け目を広げる。ゲル状の巨体を強引に押し込み、まるで水入り風船を狭い隙間から押し出すように、こちらの世界へと入り込んでくる。
その体は水に濡れたようにテラテラとしており、光の加減で極彩色に輝いている。
バキィィィィンというガラスが砕けるような音が響き、空間の裂け目が大きく広がる。そして、"何者か"の巨体は、完全に"こちら側"へと顕現した。
一言で表すならば、巨大なクラゲである。
ただ、傘のサイズが数百mから、1km近くあり、その傘からは数えきれないほどの触手が垂れ下がっていた。
「あっはっはっはっはっはっ、相変わらず"
いつの間にか、黒いシルクハットの男、コルラプスェが空に浮かび上がり、空間の裂け目より出現した怪物、"
「人生のぉ~、世界の最後を飾るにふさわしい、優美な姿だろう? 僕も久しぶりに見たよ! うーん、約537年と34日、3時間15分ぶりかな!!」
コルラプスェは、ハイテンションで空を飛び回りながら大声で叫びまわり、
「では、みんなご苦労さん! おかげ様で、僕はほら、この通り、体を取り戻せた! みんなの協力に、僕はとても感謝しているよ!! どうもありがとう!!」
コルラプスェは、腕を腹に当て、綺麗なお辞儀で頭を下げた。が、空に飛んだままであるため、非常に慇懃無礼である。
「というわけで、僕はこれでお暇さ! みんなは、最後の時を楽しんで!!」
コルラプスェは、深緑色の外套を翻し、軽く手を挙げて挨拶を告げたのち、この世界から旅立ち──
「コルラプスェェェェェェェェェェェ!!!」
白い猫耳マントの少女デルスィが、コルラプスェへと襲い掛かった。
「あらあら、ファンが帰してくれないらしい。困ったファンだなぁ……。仕方がない、少しだけ踊ろうか! ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
コルラプスェとデルスィは、回転しながら上昇し、"
「
「
コルラプスェとデルスィの周囲に、それぞれ水晶のような物体が5つ、展開された。
それは
現出した5つの
コルラプスェとデルスィは、同時に
彼らの対峙に呼応するかのように、"
光線は山を消し飛ばし、地を焼き、海を割り、彼方に巨大な次元の裂け目を出現させた。
「世界が……、持たない……」
そのあまりに圧倒的な攻撃力を目の当たりにし、マテリが絶望の表情で呟いた。
全員が同様に、"
「らしくないぞ! しっかりとせんか!!」
フィデス王太子は、気を失っているイグノーラを岩に持たれかけさせながら、全員に活を入れた。
「これ以上、奴らの好きにはさせん! まずはあの化け物を倒す! そして、イグノーラを害したあの二人を倒す!」
目の前が絶望的な状況であるにも関わらず、フィデスは事も無げに宣言する。その言葉に、カルリディが反応する。
「やれやれ、簡単にいいますね」
「簡単でいいんだよ! "戦って勝つ"、それだけだぜ!!」
更に、ルスフも力強く賛同した。
「はぁ~、単純思考が良い場合もあるのでしょうかね」
「そう、ですね」
ヴァレトの呆れが混じった言葉に、マテリは少しだけクスリと笑いながら同調した。
「おいちゃんはそろそろ腰がきついんだがなぁ」
グラリスも、腰を叩きながら立ち上がる。
「目標、巨大クラゲ! 全員、全力で攻撃だ!!」
全員が立ち上がり、空に浮かぶ巨大なクラゲへ視線を向ける。
「
白馬が立ち上がり嘶き、騎士はランスを掲げる。
「
時の魔術師はその杖を見せつけるようにクルリと回転させる。
「
炎を纏うゴーレムが、全身から激しい炎を噴き上げる。
「
仄暗い光を瞳に宿し、死神が、その鎌を見せつける。
「
白翼をはためかせ、天使は白銀の刃を天にかざす。
「
廃熱のように吐息を吹き出し、陶器のような体に闘気を漲らせる。
「
銀の籠手を身に着け、胸の前で両の拳を打ち合わせる。
「あ、小生は待機でいいよね? 鎧だし、ね? ……や、やだよ! なんかヒーロー戦隊の全員集合みたいで恥ずかしいって! 小生むりむぅぅりぃぃぃぃ」
「「「……」」」
「や、やめて! そんな目で見ないで!! 小生、そういうので悦ぶ趣味無いの! わかった! わかったから! やるから!!」
「
あらゆる害を無効化する、黒鉄の鎧が現出する。
「ほら! やっぱり恥ずかしい!!」
+++++++++++++++++
<次回予告>
「皆! 行くぞ! 一斉に攻撃だ!!」
『ガガガ、』
「「「!?」」」
『コレデ、ショウブ』
「クラゲが喋ったぁぁぁぁぁ!!」
クラゲは、その巨大な触手で地面に#を書いた。
「……、え? まさか○×!?」
次回:1戦するのに3時間。超絶巨大○×!!
(これは嘘予告です)
「でかすぎて、軽い土木工事レベルじゃねぇか!!」
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