まるで飼い犬になってワンと言われそう

第3話 土下座なさい！

　めぐみの学校は私の学校の近くだった。

　同じ地域という事もあり意識するとめぐみの姿を探すのは簡単だった。

　私が使う通学路はめぐみの学校の生徒たちも大勢が利用している。

　高級そうなブレザーに身を包み上品に闊歩する姿は私の学校の生徒たちを寄せ付けなかった。

　そんな時、下校中にめぐみの姿を発見する。

　上品に見える2人の女性が何やら揉めている様だった。

「私が悪いとでもいうのかしら⁈」

　めぐみはいつもの鉄仮面でロングヘアーでピンクのリボンを付けた女性に啖呵を切っていた。

　物怖じしないめぐみの様子にその女性はたじろぎもしない。

　冷たい感じでめぐみの事を蔑んでいる。

「そうは言ってないわ…少しは協調性を持ちなさいと言ってるの」

　二人の言い争いはとてもエキサイトしていた。

　声を掛けようと思っていたがそのタイミングが掴めない。

「協調性ですって⁈私に無いとでも⁈」

「無いじゃない…貴女の勝手な行動でクラスの出し物が纏まらないのよ！」

　文化祭の出し物の話をしているのだろうか？

「いつだってそう…貴女勝手に1人で帰るし、みんな振り回されているわ！」

「そ、それは…」

　私は登場するならここだと思った。めぐみが劣勢になった今しかない。

「さあ、土下座して謝りなさい！」

　私はピンクのリボンの女性が言った言葉に固まってしまった。まるで少女漫画のセリフだ。

「ワハハハハハハハハハハ…」

　思わず笑ってしまっていた。2人は何事かと言いたげに私に目を向ける。

　笑い転げる私にリボンの女性は怪訝な顔で蔑んでいる。

　めぐみはというと私のボロボロの姿にギョッと驚いていた。

　ジャージを忘れてセーラー服姿で部活をおこなった私の格好はボロボロだった。

「ゆ、ゆうこ…？どうしたのその格好…？」

「私、陸上部でね…制服のまま無茶したらこんなことに…」

「無茶したじゃないわよ…」

「お二人の邪魔だったかしら？」

　私の言葉にリボンの女性は興が削がれたと言いたげだった。

「いいえ…私はこれで失礼するわ」

　その言葉を残し優雅にその場を後にする。めぐみは私の様子に心配ばかりしていた。

「もう、しょうがないなぁ～私のジャージに着替えなさい！」

　めぐみがいつも仮面を被っている理由がなんとなく理解できた。

　しかし、それは悪循環を繰り返しているようにしか見えなかった。

　ジャージに着替えてめぐみの元に戻ると鉄仮面は何故だか消えていた。

　その表情は少し優しげにも見えた。

「お待たせ！着替えてきたわよ」

「ありがとう…良いところに来てくれたわ」

　その言葉は助けてくれてありがとうに聞こえた。

　笑ってはいないが珍しくうっすらと微笑んでいる。

　しかし、どこか寂しそうにも感じた。

「なんか怖い人だったね…」

「学級委員長よ！滅多に話さないんだけどね！」

　めぐみの鉄仮面は復活した。

「ねえ！これから時間ある？付き合ってよ！」

「えっ？」

　私はめぐみの返答も聞かずに強引に手を取った。めぐみの手は微かに震えていた。