第29話「ウェナという人物」
…今はヴァルキュリアにいる恵たち。まだ日が沈む時間ではない
既にミル村から戻った恵たちはリリアナが言ったことを思い出していた。冒険者ギルド…と言ったか
「ねえリリアナ。冒険者ギルド…ってどこにあるの?地区が色々とあるけど」
リリアナに言うと彼女は指をさして方向に向いた
「北地区の真ん中にあるよ。大丈夫、迷わないところにあるから」
へえ。真ん中にあるなんてとてもシンプルな店?なんだろうな。恵たちはリリアナの案内で行くことになる
ヴァルキュリア国北地区。ここは主に店が多く朝昼晩、賑わっている場所だ。他の地区も店がある
しかしここのほうが一番賑わっているのだろう。貿易品もこの北地区で手続きを済ませて店に並ぶ。そんな北地区だ
しばらくリリアナの案内で北地区を歩く。するとそれっぽい店があった
シンプルな店の看板だ。『トールギルド』と書かれてあった。店の大きさもあるがこんな場所にあるとは…
城とは関係あるのだろうか?血漿族を倒せる冒険者なんているだろうか?それともお客様としているだけだろうか?
「さ、おいで。中に入るよ」
そう言うとリリアナを先頭に冒険者ギルドに入っていく
しゃららら…
ドアの鐘が鳴った。そこにいたのはギルド。というよりも酒場みたいな間取りだった。むしろそっちのほうがわかりやすい
木材の建物で木材の椅子、テーブル、柱。大きい酒場のようなものだった。リリアナが開けると酒場にいる人が一斉に向く
「な、なんだか怖いよ」
リミットは少々怖気づく。一斉に見られるんだからそれは怖いだろう
そんな彼女を無視してリリアナはずんずんと前にすすむ。バーになっているテーブルから一人の男性を求めた
「やあトオル。久しぶりだね」
「そういうあんたはリリアナ。帰ってきたんだ」
トオルと呼ばれる人と喋っている。おっと。自己紹介したほうがいいかもな
「彼はトオル。私の友達だよ。ここでマスターをしてるんだ」
トオル…もしかしてトールのギルドというのはトオルと交じっているのだろうか
「やあ皆さん。リリアナ、今日は一体なんだい?」
「まずはこの恵という人を見てほしいんだ。恵、神の紋章を見せてあげて」
「ええ」
恵はマスターであるトオルに神の紋章を見せた。トオルは驚いた表情を見せる
「な、なるほど…神の紋章。これは間違いなく運命の浄化者…もしかして彼女たちもその一員なんだな?」
「そうだよ。誰か希望者はいない?神の紋章に集う人は?」
「う、うーん…ちょっとリストを見てみる」
そう言うと彼は本からリストを見てみる
すると酒場の席から数人ぐらい男性が恵に近寄ってきた
「おうお嬢さん。そんなもので戦ってるんかい?」
「へえ。いいおなごだなあ。一緒にいたいよ」
しかし、恵を庇う人がいた。ロザリー、杏、リミット、カロフト、そしてサンダースと恵の前で庇う
「な、なんだよ何もするわけねえじゃん」
男性は言うが杏が言う
「なんてみずぼらしいの。恵に指一本触れされないからね」
「恵お姉ちゃんに何かしたらただじゃ済まさないから」
「な、なんだと!」
男性が逆上した。しかし奥から声が飛ぶ
「待ちな!」
…!?そこにいたのは高貴。と言っていい女性がいた。その姿はどこか振付師のような姿だった
頭にきれいな布を纏っており、体もアラビアな姿だ。何も武器を持っていない。彼女はいったい?
「貴様ら。神の紋章を甘く見るな。彼女は間違いなく選ばれし者。貴様らのような筒抜けは一切戦力外だ」
「し、しかし姉御。この女の子はきっと役に立つかもしれない」
「黙れ!貴様らは下がれ。この女は私のような女しか接触できないであろう。失せろ」
「…」
近寄ってきた男性は黙って下がった。そして恵の前にその女性がいた。なんて高貴な姿だろう
「済まないな。貴様、良い女だ。私の名前はウェナ=ミント。ウェナと呼べ。ちょうど遠くからここへ来てのんびりしていた」
「ウェナって言うのね。力強そうな気がするわ…」
そう言った瞬間、ウェナの腕からビンタが飛んできた!…しかし恵は瞬時に止めた
「ビンタしようとしたの?スローすぎてあくびが出るわ」
「…なるほど。試してみたが、やはり貴様は違う。今までの女性とは違うのだろう。やはり運命の浄化者とは本物だな」
「さっきから貴様貴様言ってなんなの!?」
杏が苛立つように言う。恵は杏に向けて言う
「大丈夫よ杏。多分この人の性格だと思うわ」
そう言うとウェナは拳をがちっとさせて言った
「私は舞踏術で拳で血漿族、その他胡散臭い人間どもを闘ってきた。当然、血漿族の悪さもわかっている」
なんと。この姿で拳で戦う人物だったとは。さっきまで喋ってなかったトオルは言う
「ああウェナさん!この人はなかなか強いよ。血漿族を何度も倒しているんだ。だから戦力にはなるよ」
トオルはうんうんとうなずいて言う。そんな人だったとは…
ウェナはそう言われると恵に対して笑顔になった。彼女、笑顔になるととても美しい存在であった
「そういうことだ。恵。これから私を呼ぶときはここへ来い。助っ人として助けてやろう。貴様は良い女だ」
「わかったわ。ウェナ、きっと貴女を信用するからね。よろしくね」
ここで成約、なのか戦力としての存在は決めた。リリアナは喜んで言う
「だから言ったでしょ?ここへ来れば誰かいるって」
「ええ。リリアナありがとう」
そろそろ帰ろう。そう思った。今回紹介?してくれたトオルとウェナに挨拶をする
「じゃあねトオルさん。そしてウェナ」
「ばいばいお姉ちゃん」
7人は外に出た。今日は十分な戦力になる人材を得て良かっただろう
外に出たあと、ウェナはあの恵という存在にとても信頼できそうな予感がしていた。かなり強い。それはわかっていた
「…ふん。頼もしい人たちだ。これなら着いて行っても心配なさそうだな。私の死に場所…見つけられそうだ」
~
城の部隊部屋。ここでセント隊長に兵士が来た
「セント隊長」
「どうした?」
部下が写真を出した。それを見てセントはこれは…と思った
「もしかして血漿族の地帯か」
「はい。どうやら下水道で地帯が発生してるようです」
下水道…ヴァルキュリアの下水道はかなり広かったりする。だがあまり人が来ない。当然である
下水道なんて言ったら汚い場所で用事でもない限り来ない場所だろう
「わかった。恵に伝えよう。この写真は恵に渡しておく」
「ははっ」
そう言うと部下は離れた
「下水道…恵たちに任せておくのがいいだろう」
セントは映された写真を見つつ、恵たちを待っていた
ウェナという新しい人材
きっと活躍してくれるだろう
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