8歳 半年 異能管理局とヒロイン候補・闇喰を添えて

 2018年 9月〇日 


 今日は中々に大変な1日であった。


 何が大変だったかというと、妹が友達一人と一緒に宿題をするとかなんとかで家に連れて来たのだが、その娘が何とビックリなことに異能を授かったのだ。

 当たり前だけど、我が家で。


 まあ、確率論的に言えばあり得ないものではない、あり得なくはないのだが、それでもだ。

 100人に一人の割合で授かる異能を偶々、友達の家に遊びに行った時に授かる。


 うん、こう文字として起こしてみると、その珍しさというか異常さというのがよく分かるな。

 まあ、いいや。過ぎたもんは仕方がない。現実問題で起こったという事実は変えられない。

 という訳で妹の友達が異能を授かったわけなのだが、この授かった異能が問題だったのだ。


 その異能は【闇喰】

 名前の通り、闇を喰らう異能である。

 ただ、この闇の定義というか、喰らうというのが中々にエグかった。

 その子曰く「自分が闇と思ったモノはほぼ全て喰らうことが出来るし、喰らった闇は操れるらしい」

 ただしデメリットとして時々暴走したり、一定量の闇を喰うと許容限界となり闇を吐き出すらしい。


 何ともまあ強い異能である。

 おそらく、戦闘系という観点で見れば、最強クラスだろうし、鍛えていけば、それこそ銃弾を闇と認知して喰らったり、ナイフ等の凶器を闇として喰らって自由自在に操ったりといった中々にえげつないことも可能であると思う。


 そう考えると6歳児に持たせていい異能ではないし、使い方を誤れば周囲に甚大に被害を及ぼしたり、最悪自分も死んでしまう可能性すらある恐ろしい異能だ。


 そして案の定というべきか、なんというか、妹の友達は異能を暴走させた。


 異能を授かった瞬間に与えられた啓示の内容を上手く理解出来なかったらしい。

 その上でいきなり視界に闇として認識して飲み込めるモノ、否、喰らうことが出来るモノが表示されてしまったらしい。

 それであまりよく分からずに、それらを具体的には闇としてあった宿題を喰ってしまったらしい。

 こう日記として書いて見れば、宿題を闇とするって何とも可愛いらしいなというか小学生らしいなって思うが、今回に限っては全然そうじゃなかった。


 その喰い方が問題だったのだ。


 その時の様子は見ていないが、闇を喰う様子は見れた。

 その様子は口から触手のようなものが生えて来て、モノを掴むと、圧縮して紫と黒が混ざった禍々しいナニカに変換してそのまま、そのナニカと触手ごと口の中に戻っていくという感じだった。


 まあ、見てて気持ちのいいものではない。


 それどころか、人によってはトラウマ確定レベルの問題映像だ。


 そんで、それを見た我が妹は慌てて隣の部屋にいる僕の元に来たわけだ。

 何で僕の元に来たかと言うと、なんとまあ、間の悪いというべきか運のよいことに、お母さんは友達と妹に出すジュースが切れてしまったとスーパーに買いに行っていたからだ。

 という訳で唯一家にいた僕を頼ったと。


 あの時はビックリしたよ。


 妹が部屋に来て

「お兄ちゃん、大変、クイナちゃんの口から化け物が出て来た」

 って。

 泣きながら来たんだから。


 そんで慌てて隣にある妹の部屋にいったら、宿題を喰い終わって、今度は闇の対象として勉強机を喰らおうとしていた、妹の友達もといクイナちゃんがいた。


 で、僕は慌ててそれを止めに入るわけだ。


 止めに入ったら、その止めに入った僕のことを闇として認知したのか、いきなり僕を喰らおうとしてきた。

 

 何を言ってるか分からないかもしれないが、そのまんまだ。

 自分が異能に目覚めて、混乱が極まってる中。いきなり来たというか現れた友達の兄は、知らない年上の男の子に見えて酷く怖かったのだろう。


 そんで、そのまま僕は喰われて死んだ。


 まあ、そんで死んだら。終わりじゃんって話です。

 という訳で終わり。


 以上。

 デッドエンドです。


 なんて冗談は置いておいて、普通に影分身です。

 喰われたのは影分身です。

 本体である僕は普通に異空間の中で読書をしていました。


 まあ、でもビックリしたよ。

 いきなり影分身経由でとんでもない情報が還元されたんだからね。


 そんで、慌てて異空間から出て、再度、クイナちゃんを止めに入った訳だ。

 ただ当たり前の話ではあるが、本体である僕が駆け付けた時は、自分の異能で人を殺めてしまったという恐怖でクイナちゃんは完璧暴走状態、口の中からそれはもう大量の触手が蠢いていて、目も真っ赤に染まっていて、体から闇?のような靄が漏れ出てて中々にグロかった&化け物みたいな感じだった。まあ僕は感性が狂ってるのか、カッコイイと思ったけど。

 因みに妹はこの時点で兄が友達に文字通り喰い殺される様子と友達が完璧な化け物になった恐怖で失禁してた。まあ、無理もない。


 そんな控えめに言って地獄絵図の状態だったのだが、ここで、なんとまあ奇跡が起こる。

 いや。奇跡というか、マジで意味の分からない現象が起こった。


 僕を見るや否や、クイナちゃんの口から生えた触手が急に大人しくなり、僕の方を向いて綺麗にお辞儀をするかのように触手を曲げたのだ。


 その時、素で「え?」って言ったわ。


 だって、そうだろ。

 暴走状態の異能の触手が僕にお辞儀をするんだぞ。

 意味が分からないだろ。


 で、意味が分からないまま、取り敢えずこの状況をなんとかしなければと思った僕はその触手に「暴走状態を解除した上で宿主の体に戻って、大人しくしてて」と命令をした。


 そしたら触手はそれを素直に聞き入れて彼女もといクイナちゃんの体の中に戻ってた。

 戻ると同時にクイナちゃんは正気を取り戻した。


 これで一件落着とはならない。


 こっからが大変だった。


 まずクイナちゃんは僕を見るや否や、抱き着いて来た。

 異能を暴走させてしまったことの恐怖とそんな恐怖から救い出した僕に酷く依存するかのような感じで抱き着いてきた。

 一瞬どうしようかと悩んだけど、最近読んだ本(ライトノベル)で似たようなシーンがあったのを思い出して、その時は確かそのまま抱きしめ返して頭を撫でてたので、その通りにクイナちゃんを抱きしめ返してあげて頭を撫でてあげた。

 ついでに「大丈夫だよ」「大丈夫だよ」「落ち着いて」って感じで優しく声もかけてあげた。

 どうやらこの行動は正解だったようで、抱き着いて来た時は恐怖で体が小刻みに震えていたけど、暫くしたらそれが収まり、安心しきった表情をしてくれた。


 そっからようやく本題としてクイナちゃんの授かった異能のこと、その際得た啓示の内容について、僕がいなかった間に起こった内容について、諸々全部教えてもらった。

 ある程度聞き終えた上で僕はとある一つの判断を決めた。


 それは、今回の事件の内容を隠蔽することだ。

 隠蔽といってもそんなたいそうなものではない。


 ただ、今回の件はあくまでクイナちゃんが異能に目覚めて、うっかり宿題を食べてしまった。それを見て妹が気絶、その際物音が聞こえたので、何事かと隣の部屋にいた僕が駆け付けたってシナリオにするんだ。

 

 ようは、クイナちゃんが異能【影分身】で作った僕の影分身を喰い殺したという事実を消すってことだ。


 だって僕が異能を持ってるってバレると何かと行動に制限が付きそうなんでな。

 それは嫌だって訳だ。


 で、クイナちゃんはありがたいことにそれを承諾。


 失禁してる妹を適当に良さがな場所に安置という名前の放置をしつつ、お母さんが帰ってきたら、事情を説明して異能管理局の人を呼んでもらってって感じで終わりました。


 異能管理局の人は優しそうな好青年って感じの人と少し色っぽい金髪のお姉ちゃんだった。

 もしも戦ったら勝てるかなって思って見たが、感覚的に優しそうな好青年の人はおそらく僕一人で簡単に殺せそうだったけど、少し色っぽい金髪のお姉ちゃんの方は、影分身を10体出して数による飽和攻撃をしかけるとかせんといけないかもなって思う程度には強そうだった。

 いやまあ、あくまでそう思うだけで、実際に戦えば割と俺一人でも余裕で勝てるかもだけど、それでも金髪のお姉ちゃんからはそれ相応の力?のような圧力?のようなものを感じだって話だ。

 流石に影分身だして10体飽和攻撃すれば勝てるやろう。


 何というか、異能管理局の一職員さんでここまで強いとは、いやはやいやはや、まだまだ、最強には程遠いですな。


 あ、それと異能管理局の人からことのあらましをその場で軽く説明したら、それでオッケーで、特に何処かに連れてかれるとかはなかったわ。

 良かった良かった。流石に僕が異能者ってことはバレないわな。


 以上

 終わり


 蛇足・クイナちゃんの闇喰を見て、闇ってカッコイイって思ったんで明日は闇魔法の特訓でもしようと思います。

 

  

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 補足説明

 異能管理局

 100人に一人というかなりの割合で現れる異能者を管理する為に作られた組織。

 異能が発現した場合は異能管理局の人が来て、その異能に対しての情報を集めるとともに、異能が暴走しないように、もしくは、異能によって生活に被害が出ないようにと様々な支援をしてくれる組織。

 そして、警察では対処が出来ない異能犯に対する対処も行う組織である。

 全国に100以上の支部がある。運営元は日本国であり、立派な国営である。

 その為、異能管理局の職員は公務員という立場になる。

 給料は中々に良い。

 一応正義の組織です。


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 因みに勘の良い読書の皆様ならお気遣いかもしれませんが、クイナちゃんはヒロイン候補となります。

 2歳年の離れた後輩、妹系、ヒロイン。有りですね。

 クイナちゃんはもう既に主人公に惚れてます。

 クイナちゃんからしてみれば異能が暴走して訳も分からなくなって、つい喰い殺してしまった相手が実は生きて、いとも簡単に自分の異能の暴走をあっという間に抑えてくれて、自分に親身になってくれて慰めてくれて。抱きしめてくれたんですよ。

それは惚れますよ。


 次回は少し外伝を書いて見ようかなって思ってます。


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