第8話 ギターとの出逢い

 これは誰しもそうだと思うが、やはり中学生と高校生の差というのはかなり大きいだろう。

 高校生になると、大人への意識、みたいなものが急上昇するのだ。(今ではもう中学生からそうなのかもしれないが)

 異性への意識も格段に上昇する。

 それはつまり、カッコつけたくなるのだ。(ここで性の事は敢えて言うまい)


 僕は高校生になると、今まで大好きだったゲームをやる時間がかなり減った。

 なぜかはよくわからないが。

 ただ、思いっきり文化系少年だった僕にも、もっと、別の何かを求める気持ちが漠然とあった気がする。

 だがそれでも、高校生最初の一年間は特に何も変わらず、ぼんやり過ぎていった。 


 二年生になると、僕にとって非常に重要な、大きな出逢いがあった。

 それは、音楽とギターである。


 僕は高校二年生の春、ギター(エレキ)を始めた。

 きっかけは、というと、これが特になく、なんとなく始めたのだ。


 普通ギターを始める時というのは、それ以前に音楽を好きになっていて、それで誰かに憧れたりして始めたり、すでにやっている友達の影響で始めたり、友達と「ちとバンドでもやってみねえ?」的なノリで始めたり、とにかくそのようなきっかけがあって始めるものだろうが、僕の場合は、そういったきっかけが何もなく始めた。

 強いて言うなら、暇だったからか。


 しかも、僕は人一倍音楽には疎い人間で、最近流行っているアーティストや曲すらも全く知らなかった。

 自分の中の音楽といえば、ゲーム音楽とアニメソングとプロレスの入場曲だけだった。

 そんな輪をかけて音楽下手の僕が、ふと「ギターでもやってみようかな」と思い、いきなりギターを始めたのである。


 ある日、僕は御茶ノ水に出向いた。

 御茶ノ水には楽器屋さんがたくさんある、という情報を父から得たのだ。

 その情報通り、通りに沿ってたくさんの楽器屋が軒を連ねていた。

 僕は早速その中の一軒に、ビビリながらも入ってみた。

 すると、店内中ズラリとギターが並んでいて、ただ圧倒された。

 緊張しながら店内をうろつき、様々のギターをおどおど眺めた。

 そんな縮こまった僕に、店員がツカツカ近寄ってきて、まるでキャッチの如くペラペラ話しかけてくる。

 僕は、その日は見学のつもりで来ていて買う気はなかったので、話しかけられてもただ申し訳なさそうにしていたが、次第にノせられて、あれよあれよと、気がついたら、買ってしまっていた。


 果たして地方から上京したての清純無垢な少女はこんな感じでAV女優になってしまうのか!?とは思わなかったが、フェンダージャパンのストラトで値段は三万ぐらいだったが、まあまあしっかりしたものだったように思う。

 帰り道、「ぶ、ぶつけたりして、こ、壊さないように気をつけないと!」と激しく思い、まるで危険な爆発物を運ぶかのように、異常なほど慎重にギターを抱えて家路へと向かった。


 家に帰るとすぐにギターをケースから取り出し、なんとなくポロンと弦を弾いてみた。

 そしてギターと一緒に買ってきた「やさしいロックギター」なる教則本を開き、やんわりと練習を始めた。

 こうしてギターを弾き始めた僕は、翌日からは「ロックのお勉強」を開始した。

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