転生者、魔導具に乗る

中村優作

プロローグ

日曜日。


それは休みの日…人々が身体と心を休め、また明日から始まる学校や仕事に備える大事な日である。


そんな日の朝、一人の少年が自転車をいで走っていた。


彼の名は榊原さかきばら裕斗ゆうと。今年高校2年生になったばかりのどこにでもいるような普通の少年だ。


彼の顔色は明るかった。


なぜなら今日は……好きなロボット雑誌の最新刊の発売日だったからだ。


「楽しみだなぁ~」


裕斗は期待に胸をおどらせながら近くの本屋へとペダルを漕いだ。


10分程して目的の本屋へとたどり着き、駐輪場に自転車を止めてから店内へと裕斗は入っていった。


「え~と…あ、あった!」


目的の雑誌は残り数冊だったが、あるにはあった。


「良かった――、まだあって」


裕斗はホッと一安心して一冊取り、レジへと向かった。

無事に雑誌を購入し、マイバックに入れる。


「さぁ~て、早く読も~」


確か宿題があった気がしたがそんなのは後だ。読んでからやる。どうせ何時いつやっても同じだ。


などとやるべきことを後回しにする計画を立てながら裕斗は本屋の入口へと向かった。


そのときだった。


外。


一台のトラックが本屋の入口に突っ込んできた。


「――え?」


裕斗は何もできなかった。何もできず、トラックにそのまま突き飛ばされた。


店内に人々の悲鳴が響く。


だが、裕斗はそれをうるさいと思わなかった。


そんな余裕…無かったから。


――痛…い…。いや、痛いですむ次元じゃ、ない…。僕…死ぬ、のか?そんなの…イヤ、だ…。


裕斗は起き上がろうとする。が、力が入らない。それどころか次第に体から力が抜けていく。


やがて視界もかすみ、意識も薄れ…プツッと彼の意識は完全に途絶えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る