告白 (Side 如月夢)
「とうとう文化祭の日が来たね」
「そうだね。てかどうしたの、雫。そんな柄にもない真面目な顔して」
私が湊斗くんを好きだということを自覚するきっかけをくれた、友達の雫。
いつもは真面目とは真逆な言動が目立つ彼女だが、何故か真剣な顔つきでジッと私を見てくるのだ。
何事かと思い彼女の言葉を待ったのだが、雫が言ったことは意味のわからないことだった。
「夢、明日は――勝負の日になるよ」
「勝負の日って……?」
「こ・く・は・く!」
顔を近づけ言ってくる雫に、私は思わず一歩後退りをする。
「私知ってるんだからね、あんたらが両想いだってこと!」
「私も、知ってる……」
「ならなんで告白しないの?!」
湊斗くんが私に好意を寄せているかもしれないということは知っている。だが、私から告白する勇気はなかった。
勘違いだったらどうしよう。
その言葉が頭をよぎるからだ。
「怖いんだもん……」
正直に言う私を前に、雫はため息を吐く。そして人差し指を向け、彼女はっきり言い切った。
「とりあえず、明日は文化祭! 湊斗は明日あなたに告白する! これはあいつらが話してたのを聞いたから絶対だよ!」
「え……盗み聞きしたの……?」
「聞こえてきたの!」
「「プッ」」
私達は今の会話に思わず吹き出す。
笑い合える時間は幸せだ。湊斗くんと話すときは楽しいし笑い合えるけど、どこか緊張が顔を出してくる。
友達だからこその距離感は、好きな人にも負けない大切なものだと、改めて思ってしまう。
そして、文化祭と当日がやってきた。
湊斗くんから「一緒に回ろう」という誘いを受け、2つ返事で彼と約束をした。
集合場所には走ってきてくれたり、恥ずかしくもはしゃいでしまった私に嫌な顔1つせず付き合ってくれたり。
湊斗くんとの楽しく新しい1日が過ぎていった。
♢♢♢
「それで……話したいことって何?」
人のいない、静まり返る教室。月や星々の光が教室内を照らす。
呼び出された私は、彼の言葉を待った。頬を赤く色づかせる、彼の言葉を。
これまで、私は卑怯にもたくさんアピールをしてきた。
伝わらずに失敗しちゃったものもあったけど、自分なりに必死にアピールした。
私が告白できないのなら彼からしてもらおうという、卑怯な考え。
都合がいいかもしれない。告白されないかもしれない。でも、彼はする決心をしてくれたらしい。
なら、私はそれに自分の正直な気持ちを返す。そのつもり。
「初めてここで会ってから、ずっと好きでした。よければ俺と付き合ってください」
真っ直ぐに伸ばされた腕と勇気を出して声に出した言葉を前に、私は熱かった頬は更に温度を上げる。
思わずニヤけそうになるのを、私は必死に耐えた。緩んだ顔を見られたくなかったからだ。
そして、私は声にはせず行動で示す。
静かに、湊斗くんに抱きついたのだ。
「遅いよ……バカ……」
思わず言葉が漏れる。
これは卑怯で理不尽な言葉だ。
告白する勇気がない自分を棚に上げ、今まで告白してこなかった彼を攻めるような言葉なのだから。
しかし、その言葉に隠れた「好き」という
要するにこの言葉は――夢の必死な照れ隠しだったのだ。
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