思うことなど
朝河 修治
第1話 関守石
札幌の中島公園を散策した。持つべきものは友である。コロナ渦中であるが、レストランなどで楽しそうにビールなど飲んでいる観光客がいる。
鴨などのんびりとしていて、マスクもしないで気楽で良い。夢や思いが高く、夢や高みを目指して、どうもおかれている幸せから離れて生きている感触が多い。理想が高すぎると、現実と乖離して、幸せから遠ざかってしまう。小説家志望であった私は人と違う道を望んだので随分苦しい思いをしたが、苦しんでみるのもなかなか、味わいがあっていいものだ。木々新緑が秋の黄金色に染まって、茜さしている。蜻蛉が膝頭に留まって、ベンチにずっと腰を掛けて、秋の夕空を眺めていた。太陽の光が眩しく心地佳い日であった。
友とラーメンを食べて、安楽であった。なにも焦る必要は無い。札幌にいて彼と出会えて幸福だった。彼もまた歴史好きで西郷隆盛のように優しい男だ。
豊平館へ入って明治天皇の御座や三条実美の書など見て回った。お互いマイペースで歩いて回った。
八窓庵という徳川家康臣下の小堀遠州の茶室がある。
関守石という、ここからさきはご遠慮くださいという、石の事を初めて知った。
秋は静かな陽射しを照らして、札幌を照らしている。思えば、病気で札幌から離れられなかった。まだ、札幌へいるの?と訊かれても、答えようが無い。気が付いたら、この街でずっと暮らしていたのでした。
札幌から離れられない人、経済的事情その他、病気が原因など家族の話、都会に行く必要がなきにせよ、個人のことに踏み込まないで欲しい。
本当はいろんなことで札幌から離れられなかったのだけど、他人には、敢えて、関守石という、ここから私の人生にはご遠慮ください、というものを間に置いてみたいと思うものだ。
池のボートを漕ぐ人の中にもそれぞれの人生がある。
秋の夕空が眩しいく雲の谷間に綾なして、しきりに掌まわす様に蠢いている。まるで人々の心のように、思い思い抱く胸中をその心に従ってゆく宛もなく歩きだしそうな夕焼けのそらである。
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