05 ひと夏の恋

その夏は特別な夏だった。


アーサー・バーガディは友人の屋敷で下働きのマギーを見かけた。軽い気持ちで声をかけた。田舎からでてきたばかりの若い娘を落とすのは簡単だった。

彼女をもらいうけ屋敷につれかえり別宅に住まわせたのは彼女が夏の休暇みたいだったからだ。暑さも倦怠感も涼しさも、彼女はみんな持っていた。

マギーの体はお陽さまの匂いがした。


ただ、休暇は終わりアーサーは日常に戻った。マギーは過去になったが、マギーは妊娠して女の子を生んだ。赤ん坊は彼と同じ目をしていた。彼は赤ん坊をキャサリンと名付けた。



マギーは産後回復することなく亡くなった。アーサーは自分の子供のなかでキャサリンだけが自分の目を引き継いだことを運命チャンスと考えた。


とりあえず、アーサーは悲劇の男の演技を始めた。思いがけなく愛した身分違いの若い女、立場が邪魔して不幸な境遇においてしまったが、その忘れ形見を大切に育てる

父親ってところで・・・・


キャサリンは優秀だった。領地を守る妻として理想的に育った。


嫁ぎ先も、お誂えものだった。アーサーも仲間も波風が立つのを待った。


アーサーがキャサリンの嫁ぎ先として選んだのはバンドリン侯爵だった。

現当主は次男として生まれ次男として育ったため領主としての教育をうけていなかった。

期待の長男は落馬で死んでしまった。


そしてその時、家をでて好き勝手していた次男が戻ってきてしまった。そう、戻ってきてしまった、なのだ。


戻ってこなければ親戚から優秀な養子を迎えられたのだが・・・・・


そしてこの次男を支えるようキャサリンが選ばれて結婚したのだ。キャサリンはすぐに領地からの収入を2割増やした。


キャサリンがエリザベートを生んだ時、四公爵は祝杯をあげた。

エリザベートは王太子妃に内定した。まだ二歳だった。


あくまで内定であったが他の候補は存在せず、王太子妃教育は彼女だけがうけた。


その翌年キャサリンが亡くなると侯爵はすぐに子連れの女性と結婚した。


この時点で公爵は侯爵の家と疎遠になった。



そして皇太子がシャーロットと婚約した時に計画が動き始めた。四人の公爵はこの事態に巡り会えたのを大いに喜び合った。



バーガディ公爵はエリザベートの服装を整えるために久しぶりにドレスメーカーを家に呼んだ。今回の助手は新顔だった。


「こんなお嬢様どこから?」とキャラウェイ夫人が言うと

「見つけたんだ」と悪戯っぽく答えた。


公爵はわざとエリザベートの素性を口にしなかった。


実際エリザベートを知る人は少ない、母親のお茶会について行ったこともなく、学校にも行っていない。侯爵夫妻の子供はシャーロットひとりだと世間は思っていた。


マクバーディ公爵が、あたらしい楽しみを見つけたといううわさはこの時から、もっと言うとこの時の助手から広まった。


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