胸を触られたので押し倒した

慣れない身体でどうにか桃組に辿り着いた。教室に入ると後ろから勢いよく誰かに抱きつかれた。


『わあっ!?』


驚いて思わず声が出た。なんと胸を揉まれている。王女の大きい胸を。今は自分の胸だ。男の時には経験しない感触だ。大切なものを失った気がする。どうにかなっちゃう。


『あっ…や、やめて///』


僕が感じながら頬を染めて振り返ると今の僕…レアハ王女と同じくらいの背丈の黒髪長髪の女の子が僕の胸を鷲掴わしづかみにしてニコニコ怪しげな笑みを浮かべて挨拶してきた。


『レアハおはよー!今日も大きいおっぱいだね!』


僕は泣きそうになりながら彼女を精一杯睨にらみつける。


『そんな顔しても怖くないよ?王女の顔怖くないもん。それにいつものスキンシップでしょ!』


なんなのこの女!女子って距離感おかしいの?毎日こんなことしてるのか?年下の女子にセクハラされて恥ずかしい気持ちと怒りがこみ上げてきた。それに一体レアハ王女とどういう関係なんだ?わからないことだらけだ。


『ちょっと!いつまで胸をつかむの!いい加減離して!』


そろそろおっぱいから手をどけてもらうため振りほどこうとしたが、バランスを崩してその女子生徒と一緒に床に倒れてしまう。その女生徒が下にいて、僕は上に乗り、その子の胸を自分の大きな胸で押し倒していた。おっぱいとおっぱいが重なる感覚。男で生きていたら、ありえない状況だ。何かに目覚めそう。


『レアハっ…///』

『ごめん!』


僕は急いで身体を離して後退した。男が女子生徒を押し倒すなんて犯罪行為だ。いや、でも今僕は女だし、最初に手を出してきたのはあっちだから罪にならないか。


『レアハに胸を触られた…』


その黒髪の女の子は泣きそうだった。


『ご、ごめんね!痛いところはない?』

『大丈夫…ちょっと驚いただけ。』

『よかった。えっと…倒れた衝撃で名前忘れちゃった。』


咄嗟に名前を聞き出すために忘れたフリをした。その子は涙を拭って言った。


『信じられない。貴女の友人のライナよ。』


友人に名前を忘れられてショックなのか床にペタンと座りながら唖然と怒り出した。


『ごめんライナちゃん。』

『なんでちゃん付けなの!?』


しくじった。レアハはこの子を呼び捨てで呼んでいたのか。


『ライナ…』

『そう!』


いつも通りの呼び方をしたら機嫌が良くなった。そうしているとクラス担任と思われる女性が入ってきたので周りの人は急いで席に着いていた。僕は床に座っているライナ手を差し伸べた。


『立てる?』

『うん。』

『席に着く前に一ついいかな?』

『何かしら?』

『僕の席どこだっけ?』


その一言でライナの表情は凍りついた。


『レアハ今、僕って言った?』


しまった。僕は今レアハ王女の身体なんだ。女の子で、しかも王女なのに。国民の規範となる女性だから言動も慎まなければならない。自分の胸を手できゅっと抑える。


『レーアーハー?今僕って言ったよね?』

『えっと…』


周りの生徒もささやく。

『今、王女僕って言ったね。』

『僕っ娘になったの?』

『女子なのに僕って言う人いるのね。』


焦って言葉を選び出す。


『実はさっき少し頭を打ったみたいで…言葉が変わっちゃったみたい。』

『そうだったの?私のせいだね。ごめん。』

『だ、大丈夫よ。』

『席は窓際の一番奥よ。無理しないでね。』

『う、うん。』


席を教えてもらい恥らないながら座った。女子しかいないこの学園生活、気をつけて過ごそう。しかもスカートだから座る前に押さえて脚を閉じないといけない。なんだかこの世界から消えたい気分。走行しているうちに朝の会が終わった。


『次の授業は体育だ。』

『終わった…』


僕は机に突っ伏してそう呟いた。

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