第2話
年末年始は、結局誰とも話さずに時間だけが過ぎてしまった。隣の優奈の家から、彼女が出てくるのを何度も見たけれども、話しかけても無視された。あけましておめでとうメールは未だに既読スルーされたままだった。
南大和にも電話してみたが、着信拒否されていた。
唯に連絡しようと思ったけれど、唯の連絡先を知らないことに気づいた。唯は優奈が連れてきたんだよな。未だに連絡先すら交換してなかった。前から可愛いなと何度となくチラ見してはいたんだけどな。カラオケボックスで初めて見た時、胸がときめいたのを未だに覚えている。その娘がその日のうちに俺に裸を見せてくれるなんて思ってもいなかった。よく考えたら唯と話したのは、あの日が初めてだった。
身体は素直だよな。俺はあの日のことを思い出して、唯を想像の中で何度も犯した。和姦だけでなく、いろんなシチュエーションで。俺って最低だよな。それにしても……。
「連絡先くらい交換しとくべきだったよな」
休み中に唯の家に何度か行ってみたけども、数十分待って出てくる気配もなかったので、家に帰ってきた。流石にインターフォンを押して話すには敷居が高すぎる。話す理由もなかった。
「俺って、ぼっちじゃん」
こんなことが起こるなら、裸が見たいなんて言わなければ良かったかな。でも、あの時、唯の裸を見てときめいたのは事実だった。もう一度お願いしたら、見せてくれるだろうか。
「お前って、早川さんと寝たの?」
「はあ?」
休みが明けて学校に行ったら、あまり話したこともないやつから開口一番言われた。
「何のことだ?」
「みんな噂になってるぜ。知らない奴ほとんどいないんじゃね」
誰が流したのだろうかSNSを通じて、とんでもない噂が拡散されていた。
「寝てねえよ」
どこの誰が流したんだろう。俺は唯の方に視線を向けた。膝上15センチのミニスカートから見える素足、ちょうど肩までで切られた髪、丸く大きな瞳、童顔の顔は相変わらずだった。
「お前と早川さんがホテルに入って行ったとSNSで流れているぜ」
それは俺の知らないLINEアカウントだった。話が話を生み出してみんな伝え聞きになっていた。偶然ホテルの二人を見かけて流したのか、それとも……。
優奈が教室に入ってくるのが見えた。俺は意を決して優奈の前に立った。
「お前か?」
「はあ、何のこと」
「これ」
俺はさっきのやつのスマホを持って優奈にLINEの内容を見せた。
「知らないわよ、そもそもこれにわたし入ってる?」
慌ていて、確認するのを忘れていた。LINEのメンバーには優奈の名前はなかった。
「ごめん、入って、ないな」
「なら、わたしが犯人じゃないでしょ」
「そうだな」
俺が元の席に戻ろうと思ってふと気づく。優奈が普通に話してくれていた。
「あのさ、あのことはごめん」
「わたしには関係ないわよ。うざいから話しかけないで」
「ああ」
会話終了。やはり嫌われてるのは間違いないらしい。席に戻って唯の方を向いたが、彼女はいつもと同じように見えた。もともと積極的に話す方ではないのだ。
「なあお前、早川と寝たのか」
今日一日で何度答えればいいんだよ、と思い面倒くさそうに視線を男の方に向ける。
切れ長の瞳にスマートな顔立ち、優しそうな口元、間違いなくクラス一のイケメン広井進がそこにいた。
「お前まで言うのかよ」
「違うのか」
「(寝て)はいないよ」
「なんだ、その微妙な答えは」
そこで、クラスの男女の大半が俺の話に注目しているのに気づいた。この学校に来て初めての経験だった。
「ちょっと昼休みに話さないか。今は人が多すぎる」
「わかった。じゃあ、屋上に昼休みに」
ここで先生が来たため、会話は一時的に切られる。興味の視線は授業中も何度も感じたが。注目を集めているのは、唯の可愛らしさだろう。大人しい性格のため、みんな距離を取っているが、狙っている男が相当多いことを聞いていた。
昼休みのチャイムが鳴った。俺は焼きそばパンとコーヒー牛乳を買って、屋上に急いだ。扉を開けるとそこにはまだ誰もいなかった。こんな寒い日に屋上で話す人間なんて本当にいないと思う。数分経って進が屋上のドアを開けた。
「思ったよりも寒いな」
「ここくらいしかゆっくり喋れないしな」
「まあ、そうだよな」
俺は焼きそばパン、進は菓子パンを食べた。
「で、どうなんだ」
進が興味のある視線を向けてくる。こんな視線で進に見られたのは初めてだった。
「裸は見たけど、何にもしてない」
「はあ、お前はアホか」
「うるせえな。王様ゲームで勝ったからだよ」
目の前の進は頭を抱えて、俺を見た。
「まあ、いいわ。そう思ってたらいい」
「どう言う意味だよ」
「いや、言葉通りの意味だよ」
「訳がわからないぜ」
「まあ、分からなくていいんだ。それより、俺も唯を狙ってはダメかな」
「何で俺に聞くんだよ」
「一度は話を通しておかないとと思ってな」
「さっきも言っただろ。唯はルールで脱いだだけで、それ以上でもそれ以下でもないって」
「そうか。それにしてもあの娘がな。硬いイメージだったんだけどな」
視線をもう一度こちらに向けた。切れ長の視線は真剣さを感じられた。
「もし、俺に取られても恨むなよ」
「分かってるよ。そんなこと」
進はそれだけ言うと寒いからと教室に戻って行った。俺は胸が痛くなるのを感じた。
「気のせい、気のせい」
そう言いながら俺も教室に戻った。
――――
鈍感なのか鋭いのか分からないですね。
レビュー、いいね、星あれば創作意欲に繋がりますので、よろしくお願いします。
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