異世界なんだなって

 昨日は酷い目……って訳じゃないけど、とにかく一日を無駄に……有意義な一日でしたよ。はい。

 

 そ、そんなことはいいんだよ! とにかく今日は適当に街を見て回って、何も無かったら明後日にでも次の街に向かおう的な話をルーファとフィオに呂律が回ってたかは分からないけど、昨日の眠る直前に一応話したので、今日は昨日みたいなことにはならないはず。

 てか、私はもう強固な意志でベッドから脱出してるんだから、そんなことには流石にならないはず。(フラグではないよ?)

 ちなみにルーファとフィオに昨日みたいに足を絡められてたから、わざわざワープポイントを設置して、ワープで脱出した。


 そんなことを考えていると、ルーファが目を覚ました。

 直ぐにいつもはいる私がベッドに居ないのに気が付き、私を探すように顔を動かしているが、別に私は隠れてるわけじゃないので、すぐに見つかった。

 私を見つけると、ルーファは安心した顔になったので、思わずにやけてしまう。だってしょうがないじゃん。好きな人……じゃなくて、好きなエルフが私のことを心配してくれてるんだし、嬉しくないわけが無い。


「おはようございます、ユアさん」

「おはよう、ルーファ」


 ルーファはベッドから起き上がると、服を着る。

 うん、私も起きて直ぐに服を着たよ。


 そして私とルーファの挨拶にフィオの耳がピクリと動き、フィオも目を覚ます。


「フィオもおはよう」

「おはようございます、フィオさん」

「ん、おはよ」


 フィオも起き、服を着たので、私たちは朝食を食べに行くために、部屋を出、階段を降りる。

 宿の人にルーファが朝食を頼み、私たちはテーブルに着く。

 私たち以外にも食べてる人がいるけど、朝だからなのか、少ない。うるさくなくていいね。……別にうるさいのが嫌いって訳じゃないけど、朝からは流石に嫌だ。


「今更だけど、朝食って何が出てくるの?」


 昨日は食べられなかった……むしろ食べられる側だったと言うか……ともかく、食べられなかったので、朝食に何が出てくるかを少なくとも私は知らなかった。


「大体パンとスープですけど、私も聞いてませんでしたね」

「知らない」


 ……とんでもないゲテモノが出てきたらどうしよう。

 あ、今更だけど周りを見れば分かる……こともないね。話をするために座っているのか、私たちと同じで朝食が来るのを待っているのかは分からないが、少なくともテーブルに料理は置いてなかった。

 まぁ、置いてあったとしたら、匂いで目を引くよね。

 



「お待たせしました〜」


 そう言って虹色の焼いた魚が乗ったお皿がテーブルに置かれていく。

 ……え? まさかのゲテモノが出てきたんだけど? 嘘でしょ。キラキラしてて目が眩しいし、こんなの絶対美味しいわけもない。


「虹色魚」

「宿でこんな高価な物が出るなんて、珍しいですね」


 ……ん? 聞き間違いかな? 高価? しかもなんか二人とも喜んでない? いやいや、確かにここは異世界で、私の常識が通じないのは分かるよ? でも、これを食べるのはないでしょ。ウニとかタコとか、最初に食べた人はすごいって言うけど、これももしかしてそんな感じだったりする? 美味しいのかな。


「ユアさん? どうしましたか?」

「えっ、いや……ど、どうやって食べるの? これ……」


 そうだよ、中身は流石に虹色じゃないはず。中身が普通なら食べられるよ。……多分。


「骨がないので、そのまま食べられますよ」

「ユア、食べたことない?」


 フィオがそう聞いてくるが、食べたことあるわけが無い。なんなら存在すら知らない。なので、正直に伝える。


「う、うん。食べたことないし、初めて見る……かな」

「高級食材ですしね」

「ん」


 そうじゃない! いや、高級なのかもだけど、そうじゃないんだよ! くっ、もう覚悟を決めるしかないのか……ほんとにどうしても無理なら、言えばいいしね。うん。挑戦するのは大事だよ。死にはしない。死にはしないはずだ。この世界では高級食材らしいし。


「ルーファ? 悪いんだけど、食べさせてくれない?」

「もちろんいいですよ!」

「ずるい」

「交代交代でお願い」

「分かった」


 食べる覚悟は決めたけど、自分で食べる覚悟は決められなかったので、二人に食べさせてもらうことにした。

 もちろん私は目を瞑るよ。

 そう、私が今から食べるのはただの魚。ただの魚だ、断じて虹色なんかじゃない。


 口を開き、いつ来るかと待っていると、とうとう口の中に入ってきた。

 私は覚悟を決めて、咀嚼する。


 ……不味くない? いや、美味しい。見た目さえ気にしなかったら100点満点の美味しさだ。

 

 それから私は二人に協力してもらい、食べきった。

 美味しくはあった。美味しくはあったけど、もう食べたくは無いかな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る