日に日に増していく気持ち

 あれから特に何事も……あったけど、シューアーが見える所までこれた。

 そして私はフィオにお姫様抱っこをされている。

 うん。私が疲れたから、とかではない。単純に私はゴブリンがトラウマなんですよ……マップがあるんだから出会うわけないじゃん! そう思ってた少し前の私をぶん殴りたい。


 何があったかと言うとね、ゴブリンが現れたんだよ。突然。魔力溜まりって場所から、突然湧いて出てくることがあるらしいんだけど、見事にそれにやられたよ。おかげでフィオに私がゴブリンに負けた女ってバレたよ! 頭撫でてくれたけどさ! 恥ずか死ぬわ。

 まぁ、ともかく、ゴブリンが現れて腰が抜けちゃったんだよね。トラウマになってるみたい。

 ただ、まだ私がお金を持ってないってことはバレてない! 私の最後の砦は守られている! ……時間の問題だと思うけどさ。一気にバレるよりはいいよね……


「ユアさん、遠い目をしてますが大丈夫ですか?」

「あっ、うん。大丈夫だよ。やっと着いたね」

「そうですね」

「それでなんだけど、フィオ? もう大丈夫だからさ、下ろして欲しいなって」

「あ、ゴブリン」


 そう言われ、反射的にフィオに抱きついてしまう。


「嘘」


 私は顔に熱が昇っていくのが分かったので、フィオの肩のところらへんに顔を埋めるが、余計に恥ずかしくなってきた。


「ユア、下ろす」

「……ちょっと待って」

「じゃあ、このまま行く」

「ちょ、お、下りるから!」


 フィオに下ろされた瞬間に頭を撫でられる。

 おかしい。いつもは私が撫でる側だったのに。


「ほんとに何かが居ても、守る」

「――ッ、ありがと……」


 私は無事……恥ずかしいのと、嬉しいのとで、よく分からない感情になりながらも下ろしてもらうことに成功した。

 やばい、どうしよう。もう私完全にフィオの事好きになっちゃったんだけど。いや、元から嫌いとかではなく、むしろ好きだったんだけど、なんだかんだ言い、私は言い訳していた。フィオに答えはまだいいって言われた時は、覚悟がなかったけど、今はある。むしろ、フィオと恋人になりたいって欲が日に日に増していってる。勿論ルーファが嫌いになったとかはない。ルーファと同じぐらいにフィオの事が大好きになったってだけ。


 そんなことを考えているうちに、門番さんに微笑ましそうに見られながら、街に入った。

 

「デネーデと違って活気があるね」

「そうですね、早く宿を取らないと野宿になってしまいそうです」

「ん」


 ……どうにかしてフィオと二人きりになりたい。なんか恋人の前で、恋人になって欲しいって恋人じゃない人に言うのは、なんかやだ。いや、その恋人が私以外にも恋人作っていいですよ、って言ってるんだから、別にいいんだけどさ、なんかやだ。そもそもルーファに告白? したのだって二人きりだったんだから、フィオとも二人きりじゃないと不公平だしね。うん。

 それで、どうやって二人きりになろうか……ルーファにこっそり言おうとしても、フィオは耳がいいから聞こえちゃうよね。やっぱり、びっくりさせたいし、バレずに言いたい。


「聞いてきましたよ、宿の場所」


 私がどうやってフィオと二人きりになるか考えてる内に、ルーファが宿の場所を聞いてきてたみたい。考えてる内にフィオと二人きりになれてたじゃん。まぁ、気づいてても流石に今は言わないけどさ、雰囲気も何もありやしないよ。私がルーファに好きだって伝えた時に雰囲気があったかと聞かれれば、まぁ、うん、って感じだけど。

 

 私がフィオと二人きりになることを考えながら歩いているうちに、宿に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る