仕方ないことなんだ......

「一人部屋空いてます?」


 ルーファがそう聞く。


「はい、空いていますよ」

「それじゃあ一部屋お願いします」

「一部屋ですか?」


 受付の人が私を見ながらそう言ってくる。

 

「はい」

「こちらが鍵になります、お風呂はご自由にお使いください」

「それじゃあユアさん行きましょうか」

「え?」


 私はルーファに腕を引かれ部屋に入る。


「どうしましたか?」

「え、ここ一人部屋だよね?」

「はい、そうですよ?」

「なんで私も一緒に......」

「さっきユアさん私にお金を使わせるのを申し訳なさそうにしていたので、それに一人部屋でも私達なら二人でベッドは使えますよ」


 そ、それが狙いか! どうしよう、確かに私はお金を持ってないし、だからと言ってルーファに使わせるのも気が引ける。

 後で返すつもりではあるが、それでも気が引ける。


「わ、分かったよ......」


 仕方ない、仕方ないことなんだ。

 私にそっちの趣味はない。


「それじゃあユアさんお風呂入りましょうか」


 お風呂? そういえばさっきそんなこと言ってたような......この世界お風呂とかあるんだ。

 まぁ魔法がある世界なんだからそれぐらい出来るか。

 私はまたルーファに引っ張られお風呂場まで来る。

 お風呂にはお湯が入っていた。

 今から沸かすわけじゃないんだ。不思議。

 私が不思議がってると横にいたルーファに服を脱がされ始める。


「きゃっ」


 いきなりの事だったから変な声が出た。

 恥ずかしい......。


「な、なんで脱がそうとするの!」

「服を脱がないとお風呂には入れませんよ?」

「それは分かってるから、なんで私の服をルーファが脱がせようとしてるのって話!」

「つい」

「ついじゃない。私は後で入るから先に入っていいよ。そもそもルーファのお金で取った宿だし」

「大丈夫ですよ。一緒に入りましょう」

「入らないよ」

「なんでですか? 女の子同士ですよ? 確かに私はユアさんが好きですがユアさんはまだ私のこと好きじゃないんですよね? だったらいいじゃないですか」


 確かに女の子同士だけど......それにまだってなによまだって。

 でも確かに私はルーファのこと別にそういう目で見てないし......でもルーファは私の事......いや、だけどそれは掟で......。


「ほら一緒に入りましょう」

「わ、わかったから、待って、自分で脱ぐから」

「はい!」

「さ、先に入ってて」

「ユアさんもちゃんと来ますか?」

「行くから」


 ルーファは先に入っていく。

 私は少しづつ服を脱ぐ。

 体にタオルを巻く。


「ユアさん、スタイルいいです!」

「お世辞はいいから」


 恥ずかしい、女の子同士なんだからこんなに恥ずかしがる必要ないのに。

 それになんでルーファはタオル巻いてないのよ。


「ーーユアさん?」

「え? 何?」

「だから、タオル取らないと体洗えませんよ?」

「そ、そうだね」


 私はそう言われタオルを取る。

 体が熱い。

 

「ユアさん、入りましょう」

「う、うん」


 体を洗い終えたので湯船に浸かる。

 沈黙の時間が流れる。

 そんな沈黙をルーファは破る。


「ユアさんの方に行っていいですか?」

「......狭いよ」

「大丈夫です」


 そう言ってルーファは私の方に来る。

 いいとは一言も言ってないんだけど。

 ルーファの体が私の体に触れる。

 


「大丈夫ですか? 顔赤いですよ?」

「......ちょっとのぼせてきたかも。私上がるね」

「私も上がります」


 私は服を着て部屋に戻る。

 ルーファはまだ体を拭いている。

 ルーファが私のこと好きなんて言うから変に意識しちゃう。

 それにルーファは私のこと好きって言っておきながら全然動揺してないし。いや、村の掟だってことは分かってるんだけどね。

 私は自分の頬を叩く。

 よし、これで大丈夫。


「ユアさん大丈夫ですか?」

「うん、もう大丈夫だよ」

「夕食が出るので食べに行きましょう」

「夕食も出るの?」

「はい」


 ルーファについて行く。

 夕食が目の前に並べられる。

 お米は流石に出なかった。

 でも肉とかキノコとかスープとか美味しかった。


「美味しかったですか?」

「うん、美味しかったよ」

「そうですか」


 嬉しそうに喋るルーファ。

 私は眠たくなってきたので寝ようと思ったけどベッドが一台しかないのを思い出した。

 どうしようかと迷っているとルーファが私の心を読んだように腕をベッドの所まで引っ張り連れていかれる。


「それじゃあ寝ましょう」

「ほ、ほんとに一緒に寝るの?」

「いやですか?」

「いや、ではないけど」

「でしたら大丈夫です」


 ベッドに入ると明かりが消される。

 どういう仕組みになってるんだろう。

 そう考えてるとルーファが私に足を絡めてくる。


「ちょ、ルーファ?!」

「ユアさんに私を好きになって貰いたいので誘惑しようと思いまして、いつでも押し倒してくれて構いませんよ?」

「そ、そんなことしないから。そもそも今もうベッドだし」

「そうですか......残念ですが少しづつでいいので好きになって貰いますよ」

「......」

「ユアさん、おやすみなさい」

「おやすみ。出来れば足を絡めるのを辞めてくれると助かるんだけど」

「ユアさんのすべすべの足気持ちいいです」

「......はぁ」


 基礎ステータスを底上げしてあるはずなので抵抗しようと思えば出来るのかもしれないけど辞めておく。

 私もルーファの足が気持ちいいとかそういうのではない。

 ただ、なんとなく、だ。

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