知らぬが仏

第6話 札幌デジャヴ

　8時間の長旅は終わり私たちは札幌に到着した。

　札幌に着いた婆さんは辺りの景色が別物に感じたのかキョロキョロしている。

　ここに居たのがどのくらい前なのかはわからないが、時の移り変わりでかなり様変わりしている事だろう。

「まったくわからないわ…」

　婆さんは見慣れない景色に困惑してるのか半ば諦めている。

「地名とか住所で記憶にあるものはないか？」

　私は婆さんの記憶にある地名か住所を人に尋ねてみる事にした。

　現地の人間なら地名や住所を言えば知ってる人間は居る筈だ。

　そこへ行けば何かしらの手掛かりが見つかるかも知れない。

「月寒…つきさむと言ったかしら…そこで暮らしていたわ」

「わかった」

　私は道行く人間に「月寒」という地名は無いかと尋ねた。

　意外にもそれは簡単に見つかった。札幌の人間なら誰もが知ってる地名の様だ。

　しかし月寒と言ってもかなり広いらしい。後は現地に行って婆さんの記憶を辿るより無かった。

「そこへ行ってみよう」

　私たちは月寒に向かう事にした。

　婆さんがそこに行きたがっている理由は定かではない。

　過去に暮らしていたその地にはどんな思い入れがあるのだろうか？

　今、婆さんは侘しく過ぎていく寂しい日々を送っている。

　途切れ途切れの記憶の中で良い思い出が溢れている場所なら願いを叶えてやりたい。

　そこが婆さんの心を満たしてくれる思い出の場所であって欲しいと強く願った。