第18話 疑心

 「雨降ってる!部活やるんかなー? 」


「やるって顧問言ってたぞー! 」


「まじか!あ、園田今日バイトねーの?暇じゃんいいなー! 」


「ふっふっふっ!いいでしょー?部活がんばってね〜! 」


 授業が終わり、クラスメイトが部活に行ったり、帰ったりしているなか、私は帰る支度をしながら、窓を眺めていた。


「なに黄昏てんの? 」


振り返ると、佳澄ちゃんがいて、私を待っているようだった。


「…もう梅雨時だなぁって」


気がつくと、6月になっていて、あれから一か月経ったことに気づいて驚く。ここ連日雨だ。


「確かに。やだな〜髪まとまんないもん。しかもジメジメしてて不快」


凄く嫌そうな顔をしていう。確かに、梅雨時は悩みが多い。


「あはは。でもいつも髪綺麗じゃん。あ、今日バイトないんだぁ。どっかいく?それともここで居残りしてく? 」


「ここにいよ〜。一応今日お菓子持ってきたから、下の自販機でジュース買って喋り倒そ」


「おお〜いいねぇ!賛成! 」



「最近なんか違うね。変わったっていうか。なんかあった? 」


お菓子の袋をいろいろ開けて、少しずつ食べながら、佳澄ちゃんが言った。


いちごオレを一口飲んでから、うーん、と考えるふりをする。


いや、何もないわけではないのだが。


「なんだろーね。環境の変化?あ!結構お兄さん家快適だよ〜。めちゃ広いし。綺麗だし。3食昼寝付き。衣食住がなんの心配もなくできるのは幸せだよ〜」


「へぇー。お金持ちなんだ。まあ、独身って金あるからねー。いいねぇ、それでいて顔もいいって。…狙っちゃったら? 」


「え!?あっはっは。いやいや、多分あっちは私のことなんて眼中にないよぉ」


不意をつかれたので焦る。なんとかなったが、たまに勘の鋭い時があるので焦らされる。


「ん?てことは澪依華は満更でもないと? 」


「へ!?いや、そういうわけではないんだけど。でもそうだったとしても、口が裂けてもそんなこと言えないよ」


ってのはこの前までの話。先日、本人に暴露してしまった為、もう悔いも何もない。向こうがどう思っているかは知らないが。


「あ、なんだか恋バナ路線にいっちゃったけど、そういうことではなく」


「ん?なに? 」


「…なんだか、考え事してること多くなったなーって思って」


う…。否定できない。今後どうすればいいのか分からず、何ができるのかとか、もしこの前みたいなことがあったら、秀に迷惑かけない為に、どうするのか、とか考えていた。勿論、それで成績が落ちるなんてことはあり得ないけども。


「そうかなぁ。あー…将来、どうしよっかなって思って」


…嘘は、ついていない…はず。


「あー、それは私も考えなきゃだな」


「進路関係の話多くなったじゃん?そろそろ考えなきゃだよねぇ。何になろうかなぁ」


「澪依華ならなんでもなれそうじゃない?そのままモデルさんになるのもありだし」


「いやぁ、茨の道だよ。もっと綺麗な子はたくさんいるもの」


読モの仕事をしていると、常々思う。とても厳しい道だから、自分には向いてない。


「そうかな〜?ま、選択肢が多すぎるのも考えようだね」


羨ましいよ、とからかってくる。


「あはは。そんなことはないんだけどね。でも、あー…なんでもないや」


否定しながらも、佳澄ちゃんと喋っていると、つい本当のことを喋ってしまいそうになる。…怪しまれたな。


「?…やっぱ、うーん。さっきの話、戻って悪いけどさ、なんか、隠してない? 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る