不幸の檻

みあ

お伽話とすべてのはじまり

第1話 序開

眠い?——ううん。まだねむくない。——そう、じゃあ、昔話…聞かせてあげるね。—むかしばなし?ももたろう?しんでれら?かちかちやま?——ううん。ふふっ違うよ、昔むかーしね、、、





家に帰りただいまっと言っても返事がない。寝ているのだと思い、部屋へ入ってみる。すると、宙に浮いた足ともう上がることはないであろう首と、その首から繋がっているコードが目に映る。3分くらいその場で固まったまま頭が働かず、その後5分くらいかけて、ゆっくり考えてやっと、これが自分の母親であり、そして彼女がすでに死んでいるということが理解できた。足元に、遺書と思われる封筒があったこと以外は、恐ろしいほどいつも通りの風景だった。

 

 通帳の残高は結構残っている。普通に働いて得たものではないだろう。——通報して駆けつけた警察によると、自殺だろうということだった。まあそうだろう。なんの疑問も持たなかった。腕に何本もできた傷は止めても、怒っても泣いても、増える一方だったから。どうしたら以前の、あの男が付き纏うようになる前のような生活に戻れたのか。母が笑っているのを見れることが幸せだと思っていたのに。




 暗い部屋の中で時計を見ると、0時41分を指していた。どうせ寝てもあの時の光景しか出てこないのだから。服は制服のままだった。春とはいえ夜は寒いので、服装を隠すためにも少し長めの上着を着る。外は街灯しかついていなかった。確実に未成年が補導される時間だ。少し歩くと小さな公園がある。そこで時間を潰そうと思い、ふらふら入る。先客がいた。若い男…年は20代半ばといったところか。


 「こんばんは、お兄さん。隣、いいかな?」


彼は私を睨むように見た後、ため息をついて口を開いた。

 

「高校生が出歩いていい時間じゃないと思うけど。何してるの?警察に突き出していい? 」


——高校生はバレるかぁ真面目そうだなぁこのお兄さん。


「何で高校生だってわかったの?…でもさぁ、警察に突き出してもいいけど、困るのは私だけじゃないんじゃない?ね、人殺しのお兄さん」

 

割と鼻がきく、ということがこんなに役に立つとは思わなかった。


「…ふぅ、君の、余裕そうに構えて実は色々気にしているような感じが、大人じゃないなって思った。そうすると背丈的に高校生かなって。…あと別に俺を警察に突き出しても捕まらないかな。でも、人殺しってのは正解だよ。やっぱ臭うもんか。気をつけよ」


——人殺しなのに捕まんないんだ。変なの。お金持ちかな。どっかの御曹司だったりして。少女漫画じゃないんだからそうホイホイ出てきてたまるか。まあ、しかしこちらとしては好都合だ。


「ねぇねぇ、お兄さん、お願いがあるんだけど。聞いてくれない? 」


「何?こんな会って間もない男に頼むようなことなの? 」


  逆に、そうでないと頼めない。今の私にとっては、究極の願い事。


 「うん!ねぇ、私を殺してくれない? 」

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