第87話 買い物と帰宅

 夜帰ってから、妹にうだうだ言われて。

 少し困ったが、納得してもらった。


 朝から、父親も妹も休んで、買い物に行くと言ったが、さすがに母さんに怒られ、しぶしぶ出かけて行った。平日だからね。


 10時頃までゆっくりとして、出かける。

 買いたいものは、服とか布団。

 調味料。後は家電品、くらいか?


 来たのは、大きめのショッピングセンター。

 待ち合わせていた入り口で、落ちあい中へと入る。


 不足している調味料などを買いあさり、隠れてどんどん収納する。

 本や、園芸専門店で種や苗? 苗はマジックバックに収納をしてみた。


 あまり大きくない鞄に、どんどん物が入るのを、お母さんたちが不思議そうに見ていた。

 服は香織が、みんなのサイズを把握していたので任せた。


 どんどん収納する。

 これは、村へ帰ると。大騒ぎになりそうな気がする。

 そのことを香織に相談すると、あり得るとなった。


 いろいろな店を回り、服や生地を160cm以上を目安に買いあさって行く。

 小物や雑貨も仕入れ、箱で買った。


 途中で、生体認証ICキャッシュカードを設定して、その後。

 神地さんに連絡して、上限をネットバンク上で設定し、引き上げてもらった。


 今度、メーカや問屋さんと、直接取引の契約でもできれば良いが、量が少ないし無理か。宿題としておこう。



 数時間後。フードコートで、4人ともぐったりしていた。


「こんな、非常識な買い物をしたの初めて」

 母さんがそう言うと、皆が頷く。


「サイズを見て、全部くださいだもの。店員さんもびっくりよ」

 香織。お前も言っていたじゃないか。

「カタログを貰ったから、今度からは大丈夫」

「そう言う問題かしら?」

「近日中に、何とかします」

 そう返事をするが、どうするかな?


「帰ってから、皆が遠慮をするようなら、通貨も考えないとだめかな?」

 香織にそう聞くが。

「どうかしら? 皆、仕事着と普段着。後ホームウェアがあれば、足りているしね。特殊な物は、縫ってもらっているし」

 言っていてふと何かを思いつく。


「多分仕事着は、いつもの魔物素材の方が丈夫よね」

「それもそうか。帰って、反応を見て考えようか」

「それでいいと思う。じゃあ最後に。ショートケーキ買って帰ろう」

「昨日食っただろう」

「昨日は、昨日なの」


「夕方には家に来てね。迎えが来るから」

「はーい」

 そう言って、別々に帰る。



 帰る途中。

 あの交差点での別れだ。


 俺も香織も気にしていなかったが、渡り始めた香織親子に向かい。


 信号無視の車が、突っ込んでくる。

 本当の事故か、あいつのいたずらか。


 次の瞬間。

 俺は、香織達と、車の間へと移動して割り込み。

 車を受け止める。


「ぐしゃ」

 そんな派手な音がして、車の後輪が跳ね上がり。

 前輪から煙が上がる。


 まだアクセルを放していないのか、キャイキャイとタイヤがむなしく回っている。

 人が、高速で迫った車を受け止める。

 周囲の人間は、俺もその後ろにいる香織達親子も、跳ね飛ばされる光景をきっと想像しただろう。

 だが実際は、迫ってくる大質量を、完全に物理法則を無視して、受け止める。

 その異様な光景を、人々は見ている。


「誰か、エンジンを切ってくれ」

 そう言いながら、フロントを少し浮かせる。

 前輪が凄い勢いで回り始めるが、エンジンからガシャガラガラと音がして、空転が止まった。


 近頃の車でも、オーバーレブをするんだな。

 周りでは、別の音がカシャカシャと聞こえるが、気にせず。

 車のドアを開けてセレクターのレンジをPへと切り替え。

 ボタンを押して、エンジンOFFにする。


 皆が遠巻に見る中。

 母さんに、警察と救急車を呼んでもらう。


 先に警察が来て、事情聴取が始まるが。

「被害者はどこだ? 車があの状態なら、怪我が……」

 そう言いながら、周りを見るが、周りに動きが無い。


「目撃者は?」

 そう聞くと、幾人かが手をあげ。

 対向車線側で信号待ちをしていた車の運転手も。

「ドライブレコーダーに映っています」

 そう言ってやって来た。


「被害者は?」

 警官がそう聞くと? やはりみんなが、首をひねる。


「なんだ一体? 車があの状態なら……」

 車のフロントは、受け止めたときの衝撃で、ぐっしゃりと潰れている。


「すいません。突っ込んできた車を、受け止めたのなら俺です」

 そう言うと、警官の動きが止まる。

「はっ? 受け止めた」

 周りの皆が、うんうんと頷く。


「ですので、救急車が必要なのは、運転手さんです。意識が無いようなので」

「君は、大丈夫なのか?」

「ちょっと特殊なので。ここへ、連絡していただけますか?」

「これは?」

「連絡をお願いします」

 そう言って、対策室の名刺を渡す。



 その後、問題なく処理は終わり。

 目撃者多数ながら、自動車の単独事故となったようだ。

 運転手は高齢で、心筋梗塞だったが、自動体外式除細動器(AED)で命はとりとめた。


 あの事故の時。

 ネットに上がった動画や写真は、不思議なことに速やかに消えて行った。


 当然時間を取られたので、お母さんを家まで送って行き、そのまま香織もつれて帰って来た。

「今日は驚いたね。嬉しかったけれど、あんな無茶して。本当に体は大丈夫なの?」

 香織にそう聞かれ。

「ああ実は。体の前に、空間的障壁を展開してね」

 そう嘘をついた。完全に生身で受け止めたが、大した衝撃もなく。受け止められた。


 向こうに最適化をすると、こっちでは超人なんだな。初めて知ったよ。



 その夜。帰る間際に、香織は家族に電話をして今から帰ると伝えると、お父さんとお母さんから命の恩人だと。よろしく頼むと伝えておいてくれと言われたようだ。


 家の家族には、思い切り叱られた。

 特に母さんは、今、目の前に居た俺が。

 気が付けば、車を持ち上げていて。

 びっくりしたと言っていた。

 あの交差点は、なるべく通らないようにするとも言ってくれた。



「さあ、家へ帰ろう」

 そう言うと、私も行くと、妹に駄々をこねられた。


「今回来て、色々問題点が分かったから。また来る」

 そう言って、なだめ。納得してもらった。


 神地さんは、来て早々。

「大活躍だったね」

 ニヤニヤしながら、そう言って、動画を見せられた。

 突っ込んでくる車の前に、突然人が現れ。

 車がぶつかり。車の後ろ側が、50cm位跳ね上がっていた。


「すごいね。保存しておこうか?」

 そう言われたが。

「必要ないです」

 そう言って、消してもらった。

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